明るくて、負けずぎらい。  クルム伊達公子さんの、 ふつうは無理な道のり。

ワンチャンスで流れが変わる。

糸井 テニスから離れてから、
成長したというと変ですけど、
いろんな影響があったみたいんですね。
伊達 そうですね。テニスを離れてから、
いろんなことがうまくかみ合って
自分の興味の幅がすごく広がりました。
糸井 人として、とてもいい期間だったというか。
伊達 はい。この4年は、やっぱり濃いです。
糸井 そんな感じがするなぁ。
伊達 まさか自分の人生の中で
こんな日々がまたくるとは、
ほんとに思ってなかったので。うん。
糸井 また、いまの経験が、ずっとあとになって
子どもたちにテニスを
教えたりするようになってからも、
すごくいい影響を与えるような気がするんですよ。
だから、休んでた期間は、
いまテニスをやるのにとってもいいし、
いまテニスをやっていることが
ずっとあとでテニスを教えるときに
すごく効果があるっていう。
伊達 ええ。
糸井 テニスだけ強くなるよりも豊かなことがあるよ、
って、子どもたちに言えるじゃないですか。
で、そういうテニススクールがあったら
入れたい、入りたいっていう人は、
いっぱいいると思うんですよね。
伊達 そうかもしれないですね。
糸井 つくづく、無駄な時間ってないですねぇ。
伊達 そうですね。
糸井 あらためて、すごい時間を
過ごしてらっしゃいますね。
伊達 まぁ、今年は42歳になりますし、
回復力が追いつかないようなときは、
心が折れそうになって、
せめてあと5歳若ければ‥‥みたいなことを
しょっちゅう思ったりもするんですけど、
まぁ、それを言ってもはじまらないし、
とにかく、目の前にあることに
チャレンジし続けるしかないので。
そういう意味でいえば、
心が折れそうになることを含めて、
この4年間はほんとに充実してたと思います。
糸井 心が折れそうなときが、何度もあるんですか。
伊達 ありますね、やっぱり。
糸井 何度も。
伊達 もう、日々、ありますね。
糸井 でも立ち上がるんですよね。
伊達 そうですね(笑)。
テニスの世界って、
立ち止まってるわけにはいかない世界なんですよ。
もう、毎週、毎週、試合なので。
心が折れそうになっても
つぎに向かうしかないんですよね。
糸井 ああ、そうか、そうか。
伊達 あと、この先、もう1回、
こういう人生を経験してみたいって願ったとしても
できるようなことではないと思うので、
ここまでやってきた以上は、
できるところまでいってみよう
っていう思いでいますね。
糸井 はーーー。
明るいなぁ。明るい人ですねぇ。
伊達 (笑)
糸井 だけど、頭の中がテニスだけで
ぎゅうぎゅう詰めかというと、
そうじゃないですよね。
伊達 はい、そのへんは年齢なのか、経験なのか、
オン・オフの切替はけっこう早いです。
糸井 あの、今日は、ぼくの興味の赴くままに、
いろんなことがうかがえてとてもよかったです。
たぶん、若い人も、歳をとってる人も、
伊達さんのことばを読んで
ずいぶん勇気づけられると思うんですけど、
なにか、読んでいる人に、ありますか。
伊達 うーん、なんだろう。
あの、わたし自身も、
30代の後半に大きな挑戦をしたわけですけど、
なんかこう、もう30だし、とか40だし、
っていうことで、躊躇してしまう人が
たくさんいらっしゃると思うんですね。
ひょっとしたら、挑戦する前のわたしも
そうだったんじゃないかなと思うんです。
実際、テニスに再挑戦しようと決めたときは、
すごく悩みましたし、いろんなことが不安でした。
そんなとき、マイクが勇気をくれて、
新しい一歩を踏み出すことができた。
それによって、いろんなことが
大きく変わったっていう実感がありますし、
いまもそれを経験している途中なんです。
やっぱり、いくつになっても、
夢を持つことは素敵なことだし、
たとえそれを実現できなくても、
新しい一歩を踏み出すこと自体が
すてきなんだっていうことを、なんかこう、
男性女性、年齢問わず、実感してくれる人が、
もっともっと、世の中に増えてほしいなと。
糸井 踏み出したか、踏み出さないか。
それだけで変わるんですもんね。
伊達 そう思います。
糸井 今年、ぼくら、「BEGINNING」っていう、
キャンペーンをやってるんです。
「はじまりを、はじめよう。」って。
やっぱり、はじめなきゃ、はじまらないから。
伊達 うん、そうですよね。
糸井 そのTシャツがあるから、
今度、伊達さんに送るね。
伊達 はい、ぜひ。
糸井 いや、今日は、ありがとうございました。
伊達 ありがとうございました。
糸井 もう一回言うけど、
やっぱり明るいよ、伊達さんは。
伊達 そうですか(笑)。
糸井 おんなじことでも、
もっと暗くも言える話だもん。
「‥‥まぁ、主人がやれって言ってくれたんで」
みたいな。
伊達 ははははは。
糸井 「毎日、心が折れます‥‥」とかさ。
伊達 はははははは!
糸井 ぜんぶ、暗くも言えるもん。
それをやっぱりね、弾むように言うもんね。
それはなんかね、秘密ですね。
栄養になるんですよ、きっと。
伊達 うーん、そうなのかなぁ(笑)。
糸井 明るい人のところに栄養が来るんですよ。
伊達 いまは若い人に囲まれてるので、
そういうのもあるのかもしれませんね。
みんなからパワーをもらって。
糸井 おじさんみたいなこと言ってる。
伊達 ははははは。
見てると、うらやましいんですけどね。
やっぱり、若いっていうのは、
すごいことなんだなって思います。
糸井 若い人たちを見てるだけでうれしい
っていうのは、ありますよね。
ぼくはもっと年上ですから、
若い人が、若さゆえに
間違ったりしてるだけでもうれしいですよ。
「ああ、いい間違い方してるな」って。
伊達 (笑)
糸井 でも、そういう、いろんな人が
性別、年齢、国籍、ぜんぶ超えて、
ぐしゃぐしゃになってる場所が、
伊達さんには、やっぱり似合うわ。
伊達 うん、そうかもしれないです。
糸井 ありがとうございました。
またどっかに行くんですよね?
伊達 はい。
今度帰ってくるのは、夏前ぐらいか、
夏以降になるんですが。
今日は、ほんとうにありがとうございました。
糸井 ありがとうございました。
握手。
伊達 ありがとうございます!
  (クルム伊達公子さんと糸井重里の話は
 今回で終わりです。
 最後までお読みいただき、
 ありがとうございました!)




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2012-06-27-WED