糸井 |
前に一度お会いしたとき、
お話がすごくおもしろくて。
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伊達 |
はい、わたしもたのしかったです。
糸井さんに、自分の中のいろんなことを
引き出していただいたという印象があります。
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糸井 |
ぼくも、すごく刺激になったんです。
スポーツ選手ならではの思考とか、
身体についての考え方をうかがって、
いろんなものを見る目が変わりました。
自分にも、影響を与えましたね。
四十肩、五十肩の治療にも行きましたし(笑)。
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伊達 |
治りました(笑)?
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糸井 |
右の肩は、すっと治って、
反対側はなかなか治んなくて、
けっきょく整形外科へ行って。
いまはもうまったく治りました。
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伊達 |
ああ、そうですか。
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糸井 |
伊達さんのほうはいま、
お怪我は、してないんですか。
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伊達 |
いまは、大きなところはないですね。
小さいのはいつも抱えてますけど。
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糸井 |
基本的には痛いもんなんですか、いつも。
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伊達 |
どこか痛いです。かならず。
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糸井 |
「かならず」(笑)。
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伊達 |
痛くないときはほんと限られてますね。
でも、痛いところがあるぐらいのほうが
調子よかったりするんですよね。
テニスも調子いいし、体も調子いいし、
なにもかも絶好調、っていうときは、
けっこう結果が出ないことのほうが多いです。
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糸井 |
はー、そうですか。
いや、あの、会った途端に、
怪我の話ですいません。
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伊達 |
いえいえ(笑)。
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糸井 |
そんな話からもうはじめちゃっていいですか。
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伊達 |
大丈夫です、はい。
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糸井 |
おもしろいから、つい。
ぼくは知識がないものですから
ほんとに素人として、
相変わらずお話しさせていただきますけど、
いまのお話、自分の仕事に当てはめると
けっこうわかるんですよ。
つまり、「調子いいな」っていうときに、
調子がいいことは、じつはあんまりない。
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伊達 |
ええ。
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糸井 |
「いまオレは冴えてるぞ」とかって
わざと言ったりするんですけど、
それって、もうすでに答えが出てるときに
後づけで言ってるだけなんですよ。
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伊達 |
あ、なるほど(笑)。
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糸井 |
なんか難問みたいなのがあったとして、
わかった、って思ってから、
「いま俺は冴えてるぞ」って言ってる。
ああでもない、こうでもない、っていうときに
そう言うと、まわりがおおって感じるけど、
本人からすると、じつはとっくに答えが出てる。
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伊達 |
ふふふ。
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糸井 |
そんなにすべてがクリアーに
なってることってないですよ。
調子のよしあしもあるし、
だいたいいつも複数の仕事が進行してますから、
ああすればこうなるし、こうすればああなるし、
いつも、もうちょっとここがなぁ‥‥
って思いながら、いろいろやってると、
なんか、ひょいっと、こう、
飛び石を渡るみたいにできることがあって。
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伊達 |
うん、うん。
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糸井 |
流れじゃないところで、
ぴょん! って乗り越えたりしてるんですよ。
まぁ、そのこと自体にも経験が増えてくるから、
難しいながらも、
「そろそろ、ぴょんと超えるかなぁ」とか
思ったりはしますけどね。 |
伊達 |
ああ、でも、その感覚はけっこう似てますね。
自分の調子がいいとか悪いとかではなく、
いつのまにか超えてるのかもしれないです。
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糸井 |
その意味でいうと、
自分の状態が万全だっていうことなんて、
ほとんどないから。
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伊達 |
そうそう、ないんですよね。
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糸井 |
あの、たとえば、負けたあとに、
選手が「悔いはない」って
胸を張って言う場合があるじゃないですか。
あれは、自分が万全だったからこそ、
言えるわけですか?
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伊達 |
うーん‥‥両方ありますね。
自分が万全で、万全で挑んで、
やることをすべてやっても、勝てなかった。
そのときに、「悔いはない」と思えるときもあるし、
「だからこそ悔いが残る」という場合もあります。
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糸井 |
あー、なるほど。
もっと行けたかもしれないから。
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伊達 |
そうですね。
万全で挑んで負けて納得できるときと、
万全だったからこそ納得いかない、
っていう場合と両方ありますね。
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糸井 |
おもしろい(笑)。
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伊達 |
そもそも、万全で行けるときが
そう多くないんですけど。
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糸井 |
そういうことが、いつぐらいから
わかるようになってくるもんなんですか。
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伊達 |
いつぐらいから‥‥なんだろう‥‥。
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糸井 |
テニスは、子どものときから
ずっとやってたんですよね。 |
伊達 |
はい。
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糸井 |
そのころは、納得できる負けがあるとか、
そういうことは。
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伊達 |
子どものときはそこまで考えてないですね。
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糸井 |
じゃ、どんなことを考えてるんでしょう。
その、子どものころのことから
うかがってもいいですか?
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伊達 |
はい。 |
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(つづきます) |