伊達 |
子どものときは、ただただ、
ボール打ってること自体がたのしかった。
それだけでした。
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糸井 |
たのしいだけ。
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伊達 |
たのしいだけでしたね。
もう、ただひたすら、
ボールと触れ合ってたい。
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糸井 |
ボールと触れ合っている結果として、
試合で相手をやっつけたりするじゃないですか。
そのときの快感っていうのは、
どういう扱いになるんですか。
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伊達 |
試合って、小さいころは、
めったに出られないんですよ。
とくに、はじめたばかりのころは。
だから、最初は打つだけ。
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糸井 |
打つだけ。
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伊達 |
はい。
最初は、大人の人が打ってくれるんです。
親だったり、クラブの大人だったりするんですけど、
打ち合ってると、やっぱり、
失敗の数のほうがぜんぜん多いんですよ。
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糸井 |
うん、うん。
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伊達 |
でも、それが、つながりはじめるんですね。
昨日は5回しかつながらなかったのに
今日は10回つながった!
っていう感覚でしたね。
いちばん最初にのめり込んだのはそこです。
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糸井 |
ラリーがたのしかった。
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伊達 |
そうです。
もう、ハラハラドキドキするんですよ。
ラリーが1回増えてくるごとに。
「5、6、7‥‥!」って。
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糸井 |
あーー。
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伊達 |
何回も何回もやって、
2回とか3回で終わってたラリーが、
一度、10回とかつながると
「やっぱり、10回、いけるんだ!」っていう
はっきりした目標ができて、
とにかく10回つなげたい、ってなって。
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糸井 |
そのときのたのしさっていうのは
もう、ことばにできないくらい。
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伊達 |
はい。もう、ドキドキです(笑)。
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糸井 |
いいなぁ(笑)。
そんな話、伊達さんから聞けてよかった。
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伊達 |
(笑)
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糸井 |
それって、自分ひとりじゃできないですよね。
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伊達 |
そうなんですよ。
相手がミスってもダメ。
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糸井 |
反対側のコートにいるのは敵じゃないんだね。
でも、試合になるとその逆で。
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伊達 |
そうですね。
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糸井 |
早く終わりにするために打つ。
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伊達 |
はい。
いかに、相手がいないところに打って
エースを取るかっていう。
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糸井 |
っていうことは、
相手が打ちやすいように打つ、
っていうのをさんざんやってたから、
逆が見えるのかもしれないですね。
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伊達 |
あ、そうかもしれないですね。
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糸井 |
打ちやすいようにって考えて、
そのポイントに打ってるわけだから、
それをさせない方法も思いつきますよね。
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伊達 |
そうですね。
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糸井 |
あの、うちの子が小さいときにね、
巨人軍のキャンプに遊びに行って、
ちょっとだけ、桑田(真澄)投手に
キャッチボールしてもらったことがあるんです。
そしたら、ものすごく上手にできるんです。
それは、桑田さんがものすごく
捕りやすい球をいい感じで
投げてくれるからなんですよね。
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伊達 |
ああ、そういうことですね。
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糸井 |
もう、急に子どもが
うまくなっちゃったような気がするんです。
その話をいま思い出したんですけど。
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伊達 |
たぶん、同じことだと思うんですけど、
わたしも、キッズテニスやるときは、
すごく神経をつかいます。
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糸井 |
つまり、相手の子どもが
うれしくなっちゃうように。
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伊達 |
そう。
やっぱり、子どもって、達成感を感じたときに、
よろこびがすごく表情に出ますから、
いっしょにやるときは、もう、
できるだけ打ちやすいところに返して。
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糸井 |
それは、試合で打ちにくいところに返すのと
同じだけ神経をつかいますよね。
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伊達 |
いや、それ以上です。
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糸井 |
それ以上ですか。
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伊達 |
小さい子どもが確実に打てるところって
けっこうせまいんですよ。
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糸井 |
ああ、そうか、スイートスポットが小さいんだ。
つまり、相手が打てないところは
すごくたくさんあるんだけど‥‥。
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伊達 |
そうです。
打ちやすい場所は、ちっちゃい。
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糸井 |
そうかー。
っていうことは、子どものころに、
必死になってラリーをつなげるっていうのは、
強くなるためにも、いいわけですね。
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伊達 |
そうですね。大切なことだと思います。
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糸井 |
しかも、「10回まで!」って
必死でやるわけだから。
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伊達 |
もう、うれしいのと、緊張感とが、
ずっと隣り合わせになってるような状況ですから。
ハラハラドキドキするし、
ちょっと怖いし‥‥。
でも、そのときの感覚を、
わたしは嫌いじゃなかったんでしょうね。
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糸井 |
嫌いじゃなかったんでしょうね。 |
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(つづきます) |