木村拓哉さんと糸井重里は、
かなり以前から、もう、25年くらい前から
おつき合いがあるのです。
じつは創刊当初のほぼ日のオフィスにも
ときどきこっそり遊びに来ていたり。
そんなふたりが、久しぶりに会いました。
木村拓哉さんがMCを務める
ラジオ番組「Flow」のマンスリーゲストに
糸井が呼ばれたのです。
久々に会っても自然体なふたりが
たっぷり話した約2時間。
放送されなかったトークも含めて、
だいたいぜんぶを文字にしました。
- 木村
- ゲストは、この方。
いやー、ぼくもほんとに久しぶりです。
糸井重里さんです。
よろしくお願いします。
- 糸井
- よろしくお願いします。
- 木村
- いつぶりですかね。
- 糸井
- いつぶりなんだろうね。
- 木村
- ぼくもさっき頭の中で、
かるーく計算してたんですけど、
1年ぶり、2年ぶり、3年ぶりっていう‥‥。
- 糸井
- そういう次元じゃない(笑)。
- 木村
- そういう次元じゃないんですよね(笑)。
実際にお会いして話すということが、
15年ぶり、それ以上、ですよね。
- 糸井
- 偶然会うってこともないからね。
むかしだと、テレビ局の廊下だとかで
ばったり会ったりもしたけど、
ぼくがテレビに出なくなったから。
- 木村
- 最近、ほんとにテレビ出ないですよね。
- 糸井
- 出る理由がないから。
- 木村
- ほぼ日をはじめてから出てないですよね。
- 糸井
- そうですね。
でも、ぜんぜん出なくはないんですよ。
出る理由があるときは出ます。
- 木村
- はい。このあいだ、NHKの番組で、
たまたま見たんですよ。
で、「あ、糸井さんだ!」と思って、
その印象がすごくあったせいか、
この番組のマンスリーのゲストを考えるとき、
「あれ? 糸井さん呼んでないじゃん」って思って、
それで速攻連絡させてもらったんですけど。
- 糸井
- 恐縮でございます。
- 木村
- いやいやいや。
ほんとに来ていただいて、ありがとうございます。
で、びっくりしたんですけど、
今回、ゲストとしてお招きするということで、
あらためて糸井さんのプロフィールに
ふっと目を落としたときに、
「1948年生まれ」っていうのに目が止まり。
- 糸井
- うん。
- 木村
- で、糸井さんの誕生日って11月で、
ぼくと3日違いですよね。
ぼくが11月13日で‥‥。
- 糸井
- 11月10日です。
- 木村
- そう、それはすごい憶えてて、
なんだけど、1948年生まれということは、
え、待てよ、っていう。
ぼくの中では若いイメージで
固まってたんですけど‥‥。
- 糸井
- 今年、71歳。
たしか木村くんのお父さんと
同い年なんじゃなかったっけ?
「親父と同い年ですよー」とか
話したような気がする。
- 木村
- そういう話を、
表参道でさせていただいたのは、
すごく憶えてるんですよ。
- 糸井
- よーく会ってたよね(笑)。
- 木村
- よく会ってたというか、
たぶん、俺が行ってた(笑)。
- 糸井
- 一緒に釣りに行ったりね。
- 木村
- 釣りは、ぼくがちょっと
無理矢理糸井さんのことを連れ出して。
- 糸井
- うん。木村くんはぼくにとって
釣りの先輩ですからね。
- 木村
- 当時、糸井さんに訊かれたんですよ。
「木村くん、すごく釣りが好きらしいけど、
何がおもしろいの?」って。で、
「いや、説明は難しいですね。
一回来てもらっていいですか?」って言って、
糸井さんを無理矢理連れ出してやらせた、
っていうのが実際のところでしたね。
- 糸井
- はははは。
でも、俺はよろこんでやってたんだよ。
歳取ったら釣りやろうっていうのは、
こころには決めてたから。
- 木村
- あ、ほんとですか。
- 糸井
- あのとき、たぶんぼくが、
40半ばぐらいだったと思うけど。
- 木村
- いまのじぶんぐらいっすね。
- 糸井
- そうか、そんな歳だ。
それで、19、20ぐらいの男の子が、
すっごく夢中になって釣りしてる。
なんか、それがものすごく
おもしろそうに思えたのよ。
たしか、木村くんが、
コルベットかなんか乗ってて。
- 木村
- 乗ってましたねー(笑)。
- 糸井
- 竿がぎりぎり入れられないんで、
窓開けてちょっとだけ竿の先を出して
箱根とか行ってた。
- 木村
- ははははは!
- 糸井
- しかも、直前まで稽古してて、
夜の2時ぐらいに仕事が終わって、
そこから釣りの準備して、
朝出かけるとか聞くと、
そんなに夢中になれるものって、
やっぱり、うらやましいのよ。
- 木村
- ああー。
- 糸井
- だから、いわば、そのコルベットのさ、
助手席に乗せてほしい、みたいな気分で、
俺は「お、やるやる!」って言って、
釣りをはじめた。「いまだ!」と思ったの。
- 木村
- で、わりと、なんだろう、
かるーくやってみる、みたいな形ではなく、
けっこうどっぷり入ってくれましたよね。
- 糸井
- そうだね(笑)。
最終的にはぼくのほうがやったね。
- 木村
- ですよね。
- 糸井
- まぁ、当時の木村くんとぼくでは
忙しさの種類が違うし。
というのも、あれはぼくの仕事が、
ひとつ行き詰まってたときなんですよ。
- 木村
- あ、そうなんですか。
- 糸井
- うん。
木村くんからどう見えたか知らないけど、
自分はこのまま何するんだろう?
っていうところで、行き詰まってた。
なんていうんだろうな、
ちょっと偉そうにしてるおじいさんに
なっちゃうのがイヤで。
- 木村
- 「ちょっと偉そうなおじいちゃん」(笑)。
- 糸井
- なるじゃないですか、よく。
「あー、それはねー」なんつって
- 木村
- (笑)
- 糸井
- それはヤなんで。
だから、ちょうどそういうときに会った
木村くんが、たのしそうで、
しかもめちゃくちゃ負けず嫌いで、
なんに対しても競争してるのが
すごく刺激になったわけ。
- 木村
- はい。
- 糸井
- で、こういう気分でやってみたいな、
って思うんだけど、
当時、もう40半ばだから、
なかなか同じようにはできなくて。
- 木村
- いやいや、そんなことないと思いますよ。
- 糸井
- 同じようにはできないよ、やっぱり。
だって、木村くんと、
夜に街を歩いてたときにさ、
ビルのガラスに向かって
踊りの練習してる若い男の子がいて、
木村くんはそこ立ち止まって、
じーっと怖い顔して見てんだよ。
「え、なに見てんの?」って言ったら、
「どのくらいやれるかと思って」って。
- 木村
- ははははは!
- 糸井
- 木村くんは武道館いっぱいにしてるプロでしょ?
なんで街のにいちゃんが練習してんのを、
ガン飛ばしてんだよ、って。
- 木村
- いやいやいや。
ガン飛ばしてはいないですよ。
街でストリートダンスをしてる子たちの、
なんだろう、そういうスタイルはスタイルで、
やっぱり、ぼくから見たら
すごくかっこよかったんですよ。
- 糸井
- うん、うん。
- 木村
- で、やっぱりそのかっこいいものに対して、
すごくこう、じぶんも敏感になっていたというか。
その、ストリートで、振り付けの先生とか、
ダンスの先生がいるわけでもなく、
じぶんたちだけで、お店がクローズしたあとの
ガラスに向かってみんなでこう踊ってる。
彼らだけでクリエイトしてるっていうのが、
非常にじぶんから見て、かっこよく見えて、
それをしばらく、真剣に見ちゃいましたね。
- 糸井
- で、ぼくはそれを、まぁ、冗談めかして、
「ガン飛ばしてるの?」って言ったけど、
いまのその説明もしてくれたのよ。
「俺にとってあれは見たいものなんだ」って。
ぼくはそれを聞いてやっぱり
「すっげーな」と思ったのよ。
つまり、ありとあらゆるものを、
自分に取り入れたいと思ってる。
まぁ、あの頃、木村くんと一緒にいると、
いっぱいあったよ、そういう例は。
(つづきます!)
2019-09-01-SUN
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN