ある日、木村拓哉さんがご自身の番組、
『木村さ~~ん!』(GYAO!)の収録で、
糸井重里に会うためにほぼ日にやってきました。
30年も前からつきあいのあるふたりですから、
カメラが回ってないときもたのしく話は続きます。
「ほぼ日の學校で教えるとしたら?」という話から、
最新アルバムに糸井が書いた詞のイメージなど、
時間ぎりぎりまで会話は続きました。
- 糸井
- たとえば、木村くんが
ほぼ日の學校の授業をやるとしたら、
「木村拓哉をやっていくこと」
について話してもらえたら
おもしろいなあと思ってたんです。
- 木村
- ああー(笑)。
- 糸井
- 「木村拓哉をやっていくっていうのは
簡単なことじゃねぇんだぞ」って
ぼくはいつも勝手に思っているんですよ。
自分では「キムタク」やってきて何十年だから、
よくわからないかもしれないけど。
- 木村
- そうですねぇ。
- 糸井
- たとえば、いま思えば、
あれはいい仕事したな、とかさ、
そういうことは思いませんか。
- 木村
- どうだろう‥‥。どうですかね。
自分でいい仕事をした、
みたいなことは思わないですね。
- 糸井
- でも、我慢していることとか、
ぎりぎりでバランスをとってるところ、
ちゃんと自分で自分を
プロデュースしているところがあるでしょう。
- 木村
- うーん‥‥どうだろう、
いや、でも、半分以上は運ですよ。
ほんとうに運です。
- 糸井
- 「運」。
- 木村
- そうですね。
自分が自分をプロデュースできてるとしたら、
あの、昔、糸井さんが司会をしていた、
『イトイ式』(1995年頃、TBS系列で
深夜に放送していた長時間のトーク番組)
っていう番組があったじゃないですか。
- 糸井
- うん。
- 木村
- ああいうところに自分がお邪魔させていただいて、
糸井さんがいて、渡辺真理さんがいて、
自分がいて、日によっては
谷川俊太郎さんが同じテーブルに座られてて、
「うわ、この人教科書で見たことある人だよ」
って思いながら、あの場に座っていたときなんかは、
それこそセルフプロデュースとして、
なんていうんですかね、へんに嘘をついたり、
知ったかぶりしたりするのはやめようって、
自分の中でルール設定をしていた、
っていうくらいはありますけど。
- 糸井
- ああ、なるほどね。
あと、もっと小さいことでいうとさ、
バラエティ番組とかで
なにかミニゲームをやるっていうときでも、
ふつうにかっこ悪く負けると
「木村拓哉」じゃなくなったりするじゃない?
ああいうのはどうしてるの?
- 木村
- いや、それは、もう、
たとえばアーチェリーで
「あの的を射抜け!」とかになったときは、
単純に高得点を狙うだけです。
- 糸井
- はははは、本気で狙うよね(笑)。
- 木村
- 本気で狙ってます、そういうときは(笑)。
- 糸井
- ぼくはそういうのにちょっと呆れたりして、
笑いながら見てたんだけど。
- 木村
- そうなんですよ(笑)。
糸井さんはね、そういうぼくを
ふつうに笑うし、呆れるんですよね。
そうそうそう。
- 糸井
- 単純に、ぼくが木村くんと
まったく逆の性格だから、
「なにそれ?」って思うんですよ。
- 木村
- そういうことでいうと、
糸井さんがぼくとまったく違うタイプだから、
よく助けてもらってる、
っていうのはあると思います。
昔、仕事とかまったく関係ないのに、
「いまから行っていいですか?」って言ったら、
「ああ、おいでよ」って言ってくれて、
ほんとに、会社とか事務所じゃない、
ふつうに「糸井さんち」みたいなところに、
ピンポーンってお邪魔させてもらったりして。
- 糸井
- そうだったねぇ(笑)。
- 木村
- まあ、当時は自分も若いし、それこそ、
「キムタクをやっていて」、
ちょっと腐りそうなときもあったんですよ。
で、腐りそうになったときに、
よく糸井さんちにお邪魔してて。
そしたら糸井さんに、
「木村くん、RCサクセションって
聞いたことある?」って言われて。
- 糸井
- あー、あのとき。
- 木村
- RCサクセションの
『君が僕を知ってる』っていう歌があるから、
それ聴いてごらんよ、って言ってくれて、
そこからRCとか清志郎さん聴くようになって、
『君が僕を知ってる』を何度も聴いて、
腐りそうになったところを
ぎりぎり耐えることができたり。
- 糸井
- ああ、まさに、そういう学び方が、
「ほぼ日の學校」で
できたらいいなあと思ってるの。
- 木村
- ああー。
- 糸井
- 退屈な授業を卒業証書をもらうために
毎日我慢しながら聞くような場所じゃなくて。
そういう学び方は、まあ、教室に
友だちがいるっていうたのしさはあるけど、
おもしろくないじゃないですか。
- 木村
- たいていの学校はそういう感じですよね。
- 糸井
- そうですよね。
だから、この學校では、なにかに出会って、
あのときからなんか人生変わったな、とか、
あのときに生き延びたな、みたいなことが
実現したらいいなと思ってるんです。
(つづきます)
2022-04-20-WED
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