ある日、木村拓哉さんがご自身の番組、
『木村さ~~ん!』(GYAO!)の収録で、
糸井重里に会うためにほぼ日にやってきました。
30年も前からつきあいのあるふたりですから、
カメラが回ってないときもたのしく話は続きます。
「ほぼ日の學校で教えるとしたら?」という話から、
最新アルバムに糸井が書いた詞のイメージなど、
時間ぎりぎりまで会話は続きました。
- 糸井
- 木村くんの子どものころの話を聞くと、
その世代にしてはめずらしく、
ぼくらの世代並みに
厳しく育てられた子みたいなんだよね。
- 木村
- あ、はい。非常に。
学校もふつうに体罰とかありましたし。
「歯、食いしばれ!」みたいな感じで。
でっかいコンパスで殴られたり。
- 糸井
- ちょっと時代錯誤だったんだろうねぇ。
木村くんが厳しい環境に
わりと平気で飛び込んでいくのって、
そういう育てられ方のせいかもしれない。
学校もそういう感じだったらしいし、
たぶんお父さんも厳しかったろうし。
- 木村
- うーん‥‥厳しいっていうより、
単純に若かったんじゃないですかね。
- 糸井
- 若くてどうしていいかわかんないから、
厳しくやってたっていうことは
あるかもしれない。
- 木村
- かもしれないですね。
- 糸井
- まあ、でも、木村拓哉という人の
あの無闇ながんばり方っていうのは、
そういうところで一回仕込まれてるな
っていう気はしたよ、やっぱり。
- 木村
- 仕込まれてたのかわからないですけど、
たとえばぼく、子どものころに
剣道をやってたんですけど、
完全にだまされてはじめたんですよ。
ふつう、そういう習い事って、
やりたくてやるじゃないですか。
- 糸井
- やりたくなかったの?
- 木村
- やりたいとかやりたくないとかじゃなく、
まったく知らなかったんですよ。
ふつうだったら、テレビを見て、
憧れてサッカーをはじめるとか、
マンガを見てて憧れてバスケットをはじめるとか、
そういう入り口じゃないですか。
でも、自分は父親に「散歩行くぞ」って言われて、
「はい」つって、スニーカー履いたんですよ。
そしたら、
「なにお前スニーカーなんか履いてんだ、
バカヤロー、下駄履け」って言われて。
それで「え? 下駄?」と思って、
下駄はいてついて行ったら
そこが剣道の道場だったんですよ。
先生から「お待ちしてました」って言われて。
- 糸井
- (笑)
- 木村
- だから、自分の中で思い返して、
「え、俺、聞いてねぇけど」って使ったの
たぶんその瞬間だと思います。
- 糸井
- ははははは。何歳くらいのころ?
- 木村
- まだ小学校入る前。
半ズボンでTシャツで、下駄履いて、
「散歩行くぞ」って言われて、
ついて行ったら、剣道場で先生がいて
「お待ちしてました」っていう。
そこが入り口でした。
完全にだまされてますよね。
- 糸井
- 逃げ出すわけにはいかないもんね、
子どもだからね。
- 木村
- うん。でも、逃げ出すっていう感じには
不思議とならなかったですね。
- 糸井
- あーー、なるほどね。
- 木村
- 要は、日常じゃないものが
目の前に「バン!」って現れたわけです。
体育館みたいなところで
防具つけた人たちが大声出して、
竹刀で打ち合ってるところを見て、
「なんだこれ!」ってなって。
- 糸井
- じゃあ、むしろ燃えたの?
- 木村
- えっとね‥‥そこに通い出して、
3回目か4回目かなんかで、
なんかしんないけどメダル取ったんですよ。
- 糸井
- (笑)
- 木村
- 「お前、いいな」みたいな感じになって、
それでコン! って、自分のなかの
スイッチが入ったのかもしれないですね。
- 糸井
- 褒められるってやっぱりすごいことだね。
それがそのまましばらく続くの?
- 木村
- そうですね。小1のときにだまされて、
なんかメダルもらってスイッチ入って、
そのまま小学校、中学校、
中学校行ったぐらいは、もう、
ド真剣にやってましたね。
- 糸井
- はははは。
- 木村
- なんだろう。
いま思い返すと不思議ですね。
なんなんですかね。
- 糸井
- 向上心?
- 木村
- 向上心ももちろんあったし‥‥。
やっぱ強い人がいるんですよ、目の前に。
先生っていう、強い人が。
- 糸井
- ああ、ああ、なるほどね。
- 木村
- まぁ、もちろん、
先生だから強くて当たり前なんですけど。
間違いなく強い人がいるんですよ、目の前に。
その人と週に一度二度は必ずぶち当たる、
っていうか、毎回ボッコボコにされてたんで。
- 糸井
- つまり、俺にできなくて、
先生にできるものがあるっていう、
その差を見せられるわけだ。
- 木村
- もう尋常じゃない差ですね。
スピードにしても、力にしても、
絶対もう及ばないっていう人が目の前にいて。
- 糸井
- それはおもしろいんだろうね、ゲームとして。
- 木村
- おもしろかったですね、すごく。
(つづきます)
2022-04-21-THU
(C) HOBONICHI