ある日、木村拓哉さんがご自身の番組、
『木村さ~~ん!』(GYAO!)の収録で、
糸井重里に会うためにほぼ日にやってきました。
30年も前からつきあいのあるふたりですから、
カメラが回ってないときもたのしく話は続きます。
「ほぼ日の學校で教えるとしたら?」という話から、
最新アルバムに糸井が書いた詞のイメージなど、
時間ぎりぎりまで会話は続きました。
- 糸井
- 木村くんに会うとよく言うんだけど、
いつも変わらないなあと思うのは、
「近所の人」みたいな感覚がいつもあって。
- 木村
- はははは。
- 糸井
- それは、駆け出しのアイドルだったころから、
ぜんぜん変わってない気がする。
まあ、ふつうに考えると、木村拓哉って、
「あの人はすごくなっちゃったね」
って言われる場所にいるんだよ。
その木村くんの普段着の部分がなくならないのは
すごくおもしろいんですよね。
いや、よくキープしてると思うよ。
- 木村
- そうですか。
- 糸井
- ぼくの好きな人にはそういう人が多いんだよ。
どれだけすごい立場になっても、
自分をキープしてる。
それができるかできないかで、
短いピークをつくって倒れちゃうか、
人間として生き残っていくかが
決まっちゃうんだと思う。
- 木村
- ああ、なるほど。
- 糸井
- なんていうかな、
木村くんは犬の散歩をしながら、
犬の糞をふつうに拾うんですよ。
- 木村
- 拾ってますよ、拾ってます(笑)。
- 糸井
- そういうところ(笑)。
まあ、当たり前といえば
当たり前のことなんだけどね。
- 木村
- 当たり前っていうか、なんなんですかね。
なんか、基本、みんなと一緒ですよ、
っていう気持ちはあるかな。
- 糸井
- アイドルではじまったっていうのが、
よかったのかもしれないね。
つまり幻想からはじまって、
だんだん普段着の自分になっていくから。
- 木村
- ああ、そうかもしれないですね。
若いころのほうが抵抗があったかもしれない。
- 糸井
- 楽屋で会うと「顔色悪いんじゃない?」
っていうくらいくたびれ果ててるのに、
ステージがはじまると、もう、
ニッコニコしながら飛び出してきてたから(笑)。
あれ、足がもつれるぐらい、
くたびれてるときもあったわけでしょう。
- 木村
- ありましたね。
- 糸井
- 5回公演とか。
- 木村
- 6回公演っていうのがありました。
- 糸井
- ふつうじゃないよね(笑)。
- 木村
- はい、おかしいですね(笑)。
でも、いま「おかしいですね」って言ったあとに、
こう自然に笑えるじゃないですか。
- 糸井
- うん。
- 木村
- 自然に笑えてたら、
ぜんぶオッケー、ありだなと思います。
- 糸井
- ああー、そのことばは、
「ほぼ日の學校」だったら字幕になるね。
「自然に笑えてたら、
オッケーだと思うんですよ」って。
- 木村
- はははは。でも、ほんとにそう思いますよ。
1日6回公演の朝1回目の公演は
9時45分スタートで、
1日6回コンサートやって、
そのまんま飛び出して新幹線に乗って、
つぎの日、大阪まで移動して
先輩のコンサートのバックで踊って。
そういうのって、当時はたいへんだけど、
回想して、あー、あんなことあったなぁー、
バカだなぁーって言って、
最終的に笑えれば、たぶんなんでもありですね。
- 糸井
- そういうふうにいえるのは、
木村くんの心が強いからかな?
それか、だんだん強くなっていくのかね。
- 木村
- そういう猛者たちといっぱい会ってきた、
というのはあるかもしれないですね。
- 糸井
- ああーー。
- 木村
- 糸井さんもそのひとりだと思うし、
それこそ、さんまさんだったりとか、
そういう猛者っていっぱいいるんすよ。
- 糸井
- ああー、さんまさんね。
この人おかしいんじゃないか、っていう強さね。
- 木村
- そういう猛者いっぱいいるじゃないですか。
そういう人たちとお会いすることができたり、
一緒に作品つくれたり、清志郎さんもそうだったし。
- 糸井
- そういうものに出会ったとき、
木村くんの「憧れ力」ってすごいよね。
- 木村
- ああー。たしかに、憧れますね。
- 糸井
- けっこう自分では先輩の役になってるはずなのに、
いつでも弟になれるよね。
すっ、と下につけるっていう才能がすごいと思う。
- 木村
- 動物なんじゃないですか。
- 糸井
- 動物! 動物か。
- 木村
- 動物だと思います。
- 糸井
- 動物それやるよね。
こーんないかつい土佐犬とかでも、
ちょっと相手が強いなと思うと、
「あ、ついて行きます‥‥」みたいな。
- 木村
- どうもすいませんでした、っていう感じで(笑)。
- 糸井
- 動物かぁ。
- 木村
- 相手のすごいところを認めたりとか、
誰かがかっこいいって思えたりとか、
そこに人としての境ってまったくないんですよ。
そういうふうに思わせてくれたのは、
海だったかもしれない。
- 糸井
- ああー、海。
大きいね、それは。
- 木村
- でかかったですね。
海で、波の上で、かっこいい人はかっこいいし、
すごい人はすごい。
それはめちゃくちゃでかかったです。
剣道のつぎにでかかったかもしれない。
- 糸井
- まったく仕切りのない世界だよね。
- 木村
- ないです。立場もお金も関係ない。
本当に、できるやつが一番かっこいいんですよ。
ふだんなにやってようが。
(つづきます)
2022-04-22-FRI
(C) HOBONICHI