剣道と海。木村拓哉がほぼ日の學校で教えるとしたら? 剣道と海。木村拓哉がほぼ日の學校で教えるとしたら?
ある日、木村拓哉さんがご自身の番組、
『木村さ~~ん!』(GYAO!)の収録で、
糸井重里に会うためにほぼ日にやってきました。
30年も前からつきあいのあるふたりですから、
カメラが回ってないときもたのしく話は続きます。

「ほぼ日の學校で教えるとしたら?」という話から、
最新アルバムに糸井が書いた詞のイメージなど、
時間ぎりぎりまで会話は続きました。
糸井重里がゲスト出演した『木村さ~~ん!』はこちら。
第5回 19歳
糸井
ひさしぶりのコンサートだけど、
いまは昔よりもリハに時間をかけて
やれるようになったんじゃないですか?
木村
そうですね。
若いころの、当たって砕けろ系の
やりかたではなくなってきてる感じはします。
コンサートに来てくれる人たちに、
ちゃんとしたものを提供したいっていう
気持ちがどんどん強くなってるかな。
糸井
ああ、そういう変化はよかったね。
木村
うん、よかったです。
糸井
このあいだ、矢野顕子のコンサートに行ったら
とてもよかったんで、楽屋で会って、
「なんか歌うまくなってるよねぇ」って言ったら、
本人も「そうなのよ」って言うから、
「それは、なんで?」って聞いたの。
そしたら、
「調子に乗ってるのかなぁ」って言ったの。
木村
矢野さんが?
糸井
うん。本人が自分で。
それは、なんかすごくよくわかる気がして。
「俺はできるんだ」みたいな
調子に乗るときってあるじゃないですか。
木村
「調子に乗る」って、ことばだけ聞くと、
「あいつ調子に乗ってんな」っていう、
なんかネガティブにとらえられがちですけど、
ほんとうはすげえいい状態なんですよね。
糸井:
そうなんですよ。
だから、本人はものすごくうれしそうに、
「調子に乗ってる」って。
木村
「調子に乗ってる」っていうワードを
言っちゃう矢野さんがすごいですけど。
「調子がいい」じゃないですもんね。
糸井
違う。
木村
「調子に乗ってる」んですもんね。
糸井
持ってる実力以上のものを出せる
っていうのは、調子に乗らないとできないわけで、
やっぱり「調子に乗る」っていうのは、
すごく大事なことだと思う。
というか、調子に乗らずに
なにかできることなんかないよ。
木村
おお。
糸井
木村拓哉見てても、それは感じるよ。
木村
そうですか。
糸井
言ってみれば、木村くんって、
すごく自己肯定力の低い人なんだけど、
でも調子に乗っているシーンというのは
やっぱりいっぱいあるわけで、
それは「いいぞ!」と思うんですよ。
木村
ほんとうですか。
じゃあ乗れるときは、調子に乗らせていただきます。
糸井
調子に乗ったほうがいいと思うよ。
あれをさ、矢野顕子のキャリアになっても
うれしそうに言えるっていうのはさ‥‥。
木村
でも、かわいいですね、矢野さん。
そういうふうにおっしゃるのは。
でも、デビュー2年目です、ぐらいの子が、
「最近、調子に乗らせてもらってて」
とかって言ってたら、俺、
「ちょっと来い」って
言いたくなっちゃうかもしれないなあ(笑)。
糸井
そこは木村くんの運動部の部分(笑)。
剣道部だよ、それ。
木村
ああー。
糸井
俺はそういう子にはどんどん行けって言うし、
木村くんに対してもそう言ってたよ、たぶん。
木村
ああ、そうですね。そんなふうに
言ってくれてたのは覚えてますね。
糸井
木村くんはとにかく自分に対する点数が厳しいんで、
誰かが手伝って取ってあげる必要があるんだよね。
つまり、芸能の世界で、
きみ大丈夫だよって、ちやほやするんじゃなくて、
「ほんとうにすごいよ」っていうのを、
ちゃんと本人の目を見て
言ってあげる必要があるなと思って。
木村
そうなんですよ。言ってくれてたんですよ。
糸井
いや、ほんとうに、すごいよ。
木村
ありがたいことに。
糸井
それは、いまもずっと変わらないかなあ。
ぼくが最初に木村くんを知ったのは、
木村くんが19歳くらいのときだったと思うんだけど。
根本的にあのあたりの年齢の感じは、
ずーっと残ってる。
木村
もう30年経ってますけどね(笑)。
糸井
あのね、ぼくは「魂年齢」と呼んでるんだけど、
その人のべースの年齢って、
ずっと変わらずあると思うんだよ。
それ、俺はたぶん、29歳ぐらいなんだよ。
木村
糸井さんの29歳って、なにをやってたときですか?
糸井
仕事としては、たとえば、
『成りあがり』の取材とかしてるわけ。
永ちゃんのあとついてツアー回ってたり、
あるいは、ひょいと、『TOKIO』っていう歌の
作詞を頼まれたりする直前くらいかな。
木村
沢田研二さんの。
糸井
うん。そのすこしあとにやった仕事が、
いわゆる「俺の仕事」になっていくんだけど、
その直前の仕事をやってた29歳くらいの自分が
ずーっと、「俺」な気がするの。
木村
それが、俺は、19?
糸井
そう。なんか、まだ青臭い部分があるんだけど、
青いって、けっこうすごいことだよ、みたいな。
その部分がいまも残ってる気がする。
木村
まだ、成人してませんね。
糸井
いいねぇ。
木村
はははは。
糸井
いや、それはちょっと、トクだぜ?
木村
トクかなぁ(笑)。
糸井
さっきもちらっと名前が出たけど、
谷川俊太郎さんって、
俺、成人してない気がするんだよね。
木村
あーーー。
糸井
成人してないつもりで生きてるような気がする。
いま谷川さんと木村くんが会ったら
おもしろいよ、きっと。
木村
あ、ヤバいっすね。
糸井
そういう人間っているんだよ、やっぱり。
昔、吉本隆明さんところに行ったの、憶えてる?
木村
はいはい、ばななさんのお父さん。
会ってるんですよ、糸井さんの紹介で。
糸井
吉本隆明と木村拓哉、会ってるんですよ。
そのふたりを会わせたのは、俺、
いいことしたなぁと思ってるんだよね(笑)。
ああいう人を見せといたっていうのはね。
木村
はい。
糸井
だから、あのころ、19歳とか、
二十歳くらいの部分っていうのは、
木村くんのなかで永遠かもしれないよ。
だから、たとえば年上の人と会うとき、
自分の実際の年齢と関係なく、
その年令で会ってたりするでしょ。
木村
ああー、おもしろいですね。
糸井
ああ、そろそろ終わんないと、怒られちゃう。
また会いましょう。
木村
はい。ありがとうございました。
(ふたりの話はこれで終わりです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました)
2022-04-24-SUN