小網代の森5周年記念企画 花さく小網代、花さく三浦! みんなで小網代にハマカンゾウを植えにいこう!

神奈川県三浦半島の先端にある、小網代の森。
一般開放から5周年を迎えた今年、
ほぼ日乗組員と「ほぼ日の学校」受講生、
みんなで小網代の森に集合して、
ハマカンゾウを植えることになりました。
当日はテキスト中継をする予定なのですが、
「そもそも小網代ってなに?」
「ハマカンゾウってどんな花?」
という読者もいらっしゃると思います。
そこで予習復習をかねて、
30年以上保全活動をされてきた岸由二さんに、
小網代の歴史、ハマカンゾウのこと、
いろいろなお話をうかがってきました!

3ハマカンゾウプロジェクト

──そもそもどういうきっかけで、
小網代にハマカンゾウを植えはじめたんですか?

きっかけは、2011年の震災でした。
あのとき三浦半島の相模湾に、
2mぐらいの高潮が10分くらいの間隔で、
2日間押し寄せました。
最初の大きな津波は、
湿原のヤナギテラスまで入ってきました。

──うわぁ、そうでしたか。

もともと小網代湾の浜辺には、
ハマカンゾウという花の群落があったんです。
200株くらいはあったと思います。
そこに津波がきて、
場所そのものがえぐられてしまった。

──全部流されてしまったんですか?

‥‥と思っていたんですが、
そのあとよく探してみたら、
奥のほうに28株だけ残っていたんです。

──28株。

その話をある企業が興味をもってくれて、
工場の空いた敷地をつかって
その28株のハマカンゾウを
増やしてくれることになったんです。
それで2012年からの6年かけて、
最終的には1000株近くに増やしてくれました。

──すごい!

ただ、元のところに戻そうにも、
場所そのものが流されてしまったので、
その1000株を小網代の中の
エノキテラスまわりに植えることにしたんです。

ちょうどエノキテラスのまわりは、
水はけがよすぎて、
湿地にすることができない場所。
そして幸運なことにハマカンゾウは
そういう場所が大好きな草だったんです。

──まさにぴったりだったんですね。

しかもそのエリアは、
アレチウリとかネズミホソムギとか、
セイタカアワダチソウとか、
そういう外来種がどんどん生えるから、
ちょっと困っていたんです。

なので、もしそこをハマカンゾウで
うめつくすことができたら、
そういう外来種も育たなくなります。
つまり、ハマカンゾウで
グランドカバーしちゃえっていうのが、
ぼくのアイデア。

──どのくらいの数を植えたら、
それは実現できそうなんですか?

おそらく2万株ぐらいかな。
いまのペースで行けば、
4、5年で実現すると思います。
去年1000株植えたので、
1株を2株にわけることができれば、
今年は2倍の2000株になります。
毎年その計算でいけば、
来年は4000で、再来年は8000、
その次は1万を超えるんじゃないかな。

しかもハマカンゾウは、
1つの株からたくさんの花をつけます。
今年は最大で1日2500輪が
咲いたという報告がありました。

──うわー、すごい。

エノキテラス周辺は、
遅くても5年後くらいには、
隙間のないハマカンゾウ畑になってるはずです。
しかも、つぼみは食べられるので、
台湾なんかではハマカンゾウで農業を
やってるところもあるんです。
この前、台湾まで実地調査にも行ったんです。

台湾のハマカンゾウ畑

──すごい! 一面、ハマカンゾウですね!

ねぇ、すごいよね。
こんなたのしい企画を
小網代だけでやるのはもったいないから、
今年からは三浦市もいっしょに動いています。

──小網代の外にも
ハマカンゾウを植えているんですか?

そうです。
いま、すでに三浦の小学校には
ハマカンゾウのプランターがありますし、
いろんな施設で花を咲かせています。
来年のオリンピックの時期には、
一斉にオレンジの花を咲かせると思いますよ。

──三浦市全体にオレンジの花が‥‥。
すてきなプロジェクトですね。

もともとぼくは三浦市の振興のために
小網代の森を守りました。
だからみんなにも
「ゴルフ場にしなくて良かったね」
と思ってもらいたいんです。
ホタルやアカテガニと違って、
花は小網代の外にも広げられます。
花の力をつかって小網代を
もっと外にアピールしていきたいんです。

──ちなみに今度お手伝いする「株分け」って、
そんなにかんたんにできるんですか?

かんたん、かんたん。
いまうまってるものをガバっと抜いて、
ナタで割って、また植えなおすだけ。

──その場でどんどん増やせるんですね。

小網代に植えている株で、
これから先どんどん増やしていけます。

最初、小網代という場所は、
アカテガニがヒーローになったことで
守れたような場所です。

──最初はそうでした。

小網代のアカテガニ

アカテガニで守り、
それからトンボやホタルの人気で、
その貴重性を知ってもらえるようになった。

──知名度も上がりました。

小網代のホタル

そして次のステップは、
ハマカンゾウという花の力を借りて、
三浦市に開いていくという計画。
守り、維持し、開く。

──どんどん外にアピールしていく
段階に入ったんですね。

お花の力を借りてね。
そうそう、言葉だけ切り取られると
ちょっと困るんだけど、
ぼくは昔から「お花はお金」だと思ってるんです。

──え?