ひびのこづえさんと糸井重里による
「ものづくり」をテーマにしたこの対談コンテンツは、
すでに最終回をむかえています。
(未読の方、よろしければぜひ第1回からお読みください) |
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この対談のあとも「ほぼ日ハラマキチーム」は、
引き続きひびのさんとお仕事を続けています。
ある日、その打ち合わせの席で、こんな会話がありました。
「ひびのさん、ハラマキ工場に行ってみませんか?」
「ええ、ぜひ」
「工場の方々もよろこんでくださると思うので」
「ハラマキができる現場を見てみたいです。
職人さんにもお会いして、
素材や技術の可能性を探ってみたいし」 |
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こうしてわれわれ「ほぼ日ハラマキチーム」は、
ひびのさんをお連れして、新潟へ。
長岡市にあるニット工場、 『白倉ニット』にお邪魔したのでした。 |
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というわけで、急に再開しました、
「ひびのこづえさんとものづくりのはなしを。」。 このコンテンツの第3回で話題になった
「新潟のハラマキ工場」を、
番外編として2回にわけてレポートいたします。 |
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▲ご案内いただいた工場2階のお部屋にて。 |
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ひびの |
はじめまして、ひびのです。
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ほぼ日 |
ひびのさん、
このかたが桑原さんです。
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桑原 |
はじめまして。
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▲桑原さんは「ほぼ日ハラマキ」のご担当です。 |
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ひびの |
そうですか、あなたが桑原さん。
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ほぼ日 |
そして、こちらが白倉さんです。
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白倉 |
はじめまして、
『白倉ニット』の白倉です。
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▲白倉さんは『白倉ニット』社長の息子さんです。 |
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ほぼ日 |
よろしくお願いします。
さっそくですが、きょうはどのような順番で
見学させていただけるのでしょう?
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白倉 |
そうですね、あまりお時間もないようですので、
やはりハラマキの工程を
お見せできる範囲でご案内します。
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ひびの |
たのしみです、よろしくお願いします。
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白倉 |
まずはですね、
ほぼ日さんから届いたデザインを、
桑原が、機械を動かすためのデータにします。
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ひびの |
データにする、というのは?
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桑原 |
いわゆる「ドット画」に変換していく作業です。
たとえば‥‥。
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▲専用のソフトでイラストをドット画に。 |
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ほぼ日 |
それはひびのさんの新作、
「アニマルハート」のイラストですね。
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桑原 |
はい。
いただいたデザインは遠目にはきれいですが、
近くで見るとモザイク状になっているんです。
拡大すると‥‥。
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ひびの |
ああー。
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桑原 |
ハラマキは2色の糸で編んでいくので、
モザイクの部分を1ドットずつ、
どちらの色にするか決める必要があります。
原画の良さを保って
それを判断するのが難しいです。
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ひびの |
なるほど。
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桑原 |
あとは、やはりこうしてドットに直していくので、
あまり細かいイラストだと
時間をかけても再現ができなかったり‥‥。
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ほぼ日 |
時間はかかりますか。
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桑原 |
「クレイジーフラワー」だと、
1サイズ修正するのに3日でした。
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ほぼ日 |
1サイズ、3日。
‥‥そうか、
ハラマキのサイズXS、S、Fそれぞれで、
このデータをつくるんですね。
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桑原 |
そうですね。
たとえばひとつの絵をFサイズで表現する場合、
広い面積を使ってドット画にします。
でも同じ絵を子供サイズで表現しようとすると
描ける面積が狭くなってドット数も限られるので、
それ用のデータを別につくる必要があるんです。
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ひびの |
‥‥もう、いやですか?
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一同 |
(笑)
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ひびの |
こんなつらい思いはしたくない?
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桑原 |
あの(笑)、原画を再現できないのが残念で。
もとの絵が細かいと
再現できないのが申し訳ないというか‥‥。
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ほぼ日 |
この工程は、ほんとうにたいへんなんですね。
いつもありがとうございます。
あの‥‥桑原さん‥‥
今後もいろいろな柄をオーダーすると思うんです。
なので‥‥これからもどうぞよろしくお願いします!
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桑原 |
はい(笑)。
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白倉 |
(笑)次の工程に進みましょう。
ここで入力したデータを持って編み機に進みます。
行きましょう。
(全員で移動する)
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ほぼ日 |
‥‥あ、「アニマルハート」が編まれています。
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桑原 |
そうですね、
この編み機でちょうど編んでいるところです。
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ほぼ日 |
さっきのデータがこの編み機に入れられて、
それで編んでいるわけですね。
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桑原 |
はい。
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ひびの |
1枚編むのにどのくらいかかるんですか?
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白倉 |
Sサイズですと、だいたい20分ちょっとですね。
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ひびの |
20分。
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白倉 |
編み機には、編み針がたくさんついていて、
これが上下に動いて編むんです。
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桑原 |
上にあるこの3色の糸で、
「アニマルハート」を編んでいます。
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ほぼ日 |
赤い糸は、ワンポイントのハートマーク用ですね。
なるほど‥‥。
ここでこうして、おおよそ20分かけて、
1枚のハラマキが編まれました。
で、これを縫製する?
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白倉 |
いや、まだまだです。
まず、編まれたものは検品をします。
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ひびの |
検品。
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白倉 |
穴があいていたり、目がこぼれていないか、
人間の目で検品します。
一枚一枚。
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▲見落としがないよう、数人のペアで1枚ずつ見ます。 |
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ほぼ日 |
もし、なにかトラブルを見つけたら?
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白倉 |
編み足します。
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ほぼ日 |
編み足す?
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白倉 |
そこに道具がありますでしょ。
それで編み足して直してしまうんです。
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▲この針は、編み機の中に並んでいる編み針です。 |
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ほぼ日 |
へえーー。
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白倉 |
あ、ちょうどいま、トラブルがあったみたいです。
‥‥それは?
(セーターを手に作業台へ戻ってきた女性に)
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女性 |
ちょっと、穴がね。穴が空いてるの。
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ほぼ日 |
すみません、お仕事中に。
その穴を見せていただいても‥‥
ああー、けっこう大きな穴が。
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女性 |
そうね、ほどけちゃてる。
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ほぼ日 |
これ、直るんですか。
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女性 |
直します。
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ほぼ日 |
どのくらいかけて?
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女性 |
これだとね、5分かかっちゃうかな?
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ほぼ日 |
5分。
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女性 |
ひとめひとめ、
目をつくんなくちゃなんないから時間かかる。
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ほぼ日 |
いや‥‥5分でできることに驚いたんです。
半日仕事くらいかと。
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女性 |
ちょっと、やってみるね。
5分、見てられる?
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ほぼ日 |
せっかくなので‥‥。
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▲超絶技巧のお直しを動画でご覧ください。 |
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ほぼ日 |
すごい、すばらしい!
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一同 |
(拍手)
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ひびの |
穴がなくなりましたね。
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ほぼ日 |
魔法のようです。
失礼ですが‥‥どのくらいこのお仕事を?
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女性 |
ええとね、ずいぶん長く(笑)。
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ほぼ日 |
それは、おおむね?
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女性 |
おおむね、20年くらいかなぁ(笑)。
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ほぼ日 |
そうですか、20年。
いやぁ、ありがとうございました。
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(ハラマキはまだまだ未完成。後編へとつづきます) |