理解力と人格。いま「一緒にはたらきたい人」とは?

ほぼ日と関係の深いおふたりが、
「人を採用するときに大切なこと」について
たまたま同時期に、別々の場所で話されました。
ひとりは、人材紹介会社、
KIZUNAパートナーズの河野晴樹さん。
もうひとりが、レオス・キャピタルワークスで
ファンドマネージャーとして働く藤野英人さん。
河野さんは「理解力」をはたらく人の
もっとも重要なポイントとして挙げ、
藤野さんははたらく人の機能ではなくて
「人格」こそが大切だと言いました。
人材紹介と投資運用という
異なるお仕事をされているおふたりですが、
大切にしていることはなんだか似ているようです。
糸井重里と3人で「はたらくこと」について
たっぷりと語りました。
全7回にわたっておとどけします。

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第2回数値化できるものよりも大切なこと。

糸井
河野さんは「理解力」という言葉を
いつごろ大事だと気づかれたんですか?
河野
20代のときは
全くわかっていなかったと思います。
糸井
つまり、その、
人の価値を機能で判断するような
もっと、嫌なやつだったわけですか?
河野
すごく、嫌なやつでした(笑)
糸井
僕が会いたくないタイプの人
だったかもしれないなぁ(笑)
河野
たぶん、数値化できるものこそ価値だと
考えていたんでしょうね。
数値によって未来を予測して
収益が作用して、多くの人たちが潤って回転して。
それこそがハッピーなんじゃない? と。
糸井
収益が上がるとハッピーがついてくる、と
信じていたんでしょうね。
河野
信じていましたね。
なので、人格よりも機能やカテゴリーで
人をみていたと思います。
糸井
時代的なものもありますか?
河野
バブル全盛期に人材を派遣する会社に入社して、
クライアントも積極的に採用活動をしていた時でした。
なので1人でも人材を紹介できれば喜んでくれる、
単純なサイクルの中で仕事をしてしまって。

クライアントも喜んでくれるし、
転職もサポートできているし、
20代という若さゆえかもしれませんが
目の前で起こっていることさえよければOKだと、
信じてしまったんですよね。
糸井
信じられちゃったんですね。
河野
なので「理解力」や「人格」を
考えたことがなかったんです。
それよりも人をカテゴリーに分けて統計化して。

つまり、群れで人をみていた時代が
40歳くらいまでありました。
糸井
群れですか?
河野
たとえば、SEという職種の中で、
情報系や勘定系など能力をカテゴリー別にして、
「あの人はあのカテゴリーの人」みたいに
群れで人をみていました。

そこでは能力の話は出てきても、
「理解力」や「人格」の話は出てこないんですよ。
糸井
群れで人をみているわけですから、
個々の性格までわからないですよね。
河野
そうなんです。
でも長いことやってきて部下もできた時に、
違和感が生まれまして。
糸井
「違和感」。
河野
年間何万人もの方々に転職の紹介をしていましたが、
すぐに退職されたり会社のことで悩まれたり、
ある一定の確率で、
失敗が起きていることに気がつきまして。
糸井
それはいつごろ気がつかれたんですか?
河野
割と早くから気がついていたけれども
「そういうこともあるか」と、
深く考えてこなかったんです。

でも会社を指揮する立場に立ったときにやっと、
「なんでこんなことが起きるんだ?」と
疑い始めました。
糸井
ひとつひとつの失敗はしょうがないと
思っていたけれど、
そういう単純なことではないかもしれないぞ? と。
河野
そうです。
人が辞めることは当たり前ではないぞ、と。
指揮する立場に立ったことで世の中や会社に対して、
「本当はどうだっけ?」を考えられるようになり
気がついたんですね。
糸井
おお。
「本当はどうだっけ?」と考えることは、
大事なことですもんね。
河野
そうすると群れではなくて、
どんどん個に目が向くようになるんですよね。
糸井
カテゴリーではなく「人格」。
河野
そうです。
個々の「人格」が気になってきました。
また企業の見方も変わってきて、
ソニーならソニー、
キヤノンならキヤノンと群れでみていたのが、
「トップはどんな人だろう?」
「どの人がどんな思いで運営している事業か?」
「この新規事業はどんな意図で起ち上がったのか?」
と組織単位ではなく、
組織を形成している個々の人たちに
目が向くようになって。
糸井
それは大きな変化ですね。
河野
どんどんどんどん、個にいくんですよ。
行動も「会いに行っちゃおう!」と
足取りが軽くなって。
糸井
どんどん、
僕の知っている河野さんに近づいています。
河野
はい(笑)
でもそうすると、
前よりも人材のみえ方が複雑になっていきまして。
問題も雑然としていくので、
僕の中で「こういう人がいいぞ」という
判断基準がわからなくなってきてしまい、
経験を振り返り、みつけた言葉が「理解力」でした。
藤野
あー、なるほど。
河野
たとえるならば、
「ほぼ日に入ったらカッコいいかも」と
群れやかたちでしか会社をみていない人を採用しても、
未来につながらないと思うんですよ。

ほぼ日という会社が好きなだけでなく、
ほぼ日が大切にしていること
そのものが好きな人がいたら、
強みや個性が違っても、
おそらくいい仲間になるはずです。
むしろ違う強みをもっているからこそ、
お互いに啓発されて、魅力的な会社を
一緒につくっていける人になると思います。
糸井
群れよりも個、ですね。
河野
ほぼ日がもっている個の部分を
きちんと考えられる人がいいですね。
糸井
「本当はどうだっけ?」を考えていたら
そんな答えに行き着いたんですね。
河野
群れよりも個を大切にしたことで
僕自身みえることが変わってきたので、
個をきちんとみつけて、考えられる人のほうが
理解力が高いなあと今は感じています。
藤野
私もとてもわかります。
糸井
そうですか。
そうしたら次は藤野さんの話をぜひ。

(つづきます)

2017-05-31-WED

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プロフィール

河野晴樹

1962年生まれ。
慶應義塾大学卒業後、株式会社リクルートに入社。
若手からエグゼクティブまで幅広く
人材紹介事業の運営を推進してきた。
一方新卒学生の採用面接をはじめ、
数多くの人事をこなしてきた「人材オタク」。
2005年、人材紹介事業をおこなう
KIZUNAパートナーズ株式会社の
代表取締役社長に就任。
主としてエグゼクティブの人材紹介を手がけている。
ほぼ日の就職論特集の際に、
「面接試験の本当の対策」に登場いただいた。

藤野英人

1966年富山県生まれ。
早稲田大学卒業後、国内外の資産運用会社で
日本株のファンドマネージャーとして活躍。
2003年にレオス・キャピタルワークス株式会社を創業。
代表取締役社長・最高運用責任者(CIO)として、
成長する日本株に投資する「ひふみ投信」を運用し、
高い成績を上げ続けている。
明治大学商学部の講師も長年務めている。
現在、日経電子版の「NIKKEI STYLE」にて
コラムを連載中。
ほぼ日には「どうして投資をするんだろう?」
「恋と投資の話」で登場いただいた。
著書として『投資家が「お金」よりも大切にしていること』、
『ヤンキーの虎』など多数。
最新の著作に『投資レジェンドが教えるヤバい会社』がある。