理解力と人格。いま「一緒にはたらきたい人」とは?

ほぼ日と関係の深いおふたりが、
「人を採用するときに大切なこと」について
たまたま同時期に、別々の場所で話されました。
ひとりは、人材紹介会社、
KIZUNAパートナーズの河野晴樹さん。
もうひとりが、レオス・キャピタルワークスで
ファンドマネージャーとして働く藤野英人さん。
河野さんは「理解力」をはたらく人の
もっとも重要なポイントとして挙げ、
藤野さんははたらく人の機能ではなくて
「人格」こそが大切だと言いました。
人材紹介と投資運用という
異なるお仕事をされているおふたりですが、
大切にしていることはなんだか似ているようです。
糸井重里と3人で「はたらくこと」について
たっぷりと語りました。
全7回にわたっておとどけします。

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とじる

第5回川の向こうにいるオヤジたちに憧れた。

藤野
すべての会社がエネルギーがあって
カラフルなわけではないので、
カラフルではない世界というのもあります。
糸井
そうなんですね。
藤野
カラフルな世界って
誰もが認めるものではなくて‥‥
カラフルではない世界からみると
気持ち悪いんですよ。
河野
暑苦しい?
糸井
ヌメヌメしてる?
藤野
暑苦しいし、湿り気もあるし(笑)
糸井
どっちもなんですね(笑)
もっとスマートにやろうよって、
カラフルではない世界の人たちは
思うのかもしれませんね。
藤野
私がカラフルではない世界にいた時代、
というのがありまして。
糸井
ほお。
藤野
河野さんと同じ、社会人になりたてのころは、
プロファイリングできることがよいと
思っていました。
河野
僕と同じで、
カテゴリーで人をみていたんですね。
藤野
そうですね。

社会一般的に認められるような
進学校に入って、いい大学を出て、
金融業界ナンバーワンの資産運用会社に入社して。
今思うと、性格的に嫌なやつだったんですよ。
河野
藤野さんも仲間だ(笑)!
藤野
個性とかって判断が難しいじゃないですか。
なので入社したてのころは、
プロファイリングできないものには、
見向きもしていませんでした。
それよりも大学名とか会社名とか
カテゴリーで人をみる人間で。
糸井
会いたくないなぁ(笑)
藤野
でも、たまたま最初に配属された部署が
中小企業の株を取り扱う部署だったんです。
どこの会社の株を運用するか検討するために、
中小企業の経営者であるオヤジたちに毎日会っていて。

そのオヤジたちは、
どんどん大きくなっていこうと野望を持った、
得体の知れない人たちばかりだったんです。
糸井
生き物っぽい人たちが
たくさん出てきたんですね。
藤野
たとえばマツモトキヨシが上場してきたとき、
なんだこの名前はって。
今は普通に固有名詞になりましたが
当時はイトイシゲサトみたいな、
自分の名前をカタカナにしただけの
変な会社が出てきたと思いました。
「ふざけているのか?」と(笑)
糸井
当時ならそう思うかもしれませんね(笑)
藤野
私は元々検事になる予定で法学部を出て、
自分に理解できないものは逮捕してやろう、みたいに
思っていたんですよ。
糸井
はい(笑)
藤野
法学部卒で経済を知らない私にとって、
マツモトキヨシをはじめ中小企業のオヤジたちは
理解できない、なまぐさい人ばかりで。

でも彼らはツバを飛ばしながら、
1時間半くらい熱く話し続けるんですよ。
自分の半生やビジョン、ミッションをワーワーと。
3年間、毎日毎日会って話し続けました。
糸井
3年間、毎日はすごい時間ですね。
藤野
それで若かったこともあってか、
そこで嫌な自分が修正されたんですよね。

最初はオヤジたちと私の間には大きな川が流れていて、
どちらかというとオヤジたちに違和感を感じて
逮捕したいような対象だったんですよ。
でも、だんだん、
オヤジたちが持っている出っ張っているところや
にじみ出ているところが気になってきて。
河野
ああ、僕もわかります。
藤野
最初は「気持ち悪いなあ」と思っていたのに、
最後には「どうすれば、あちら側に行けるのかな」と
憧れに変わったんです。
糸井
ほお。それはおもしろいですね。
藤野
そういう意味で、
私は中小企業のオヤジたちに育てられたと思います。

2年くらいでお金を貯めて、
司法試験の勉強をするつもりだったのに
忘れてしまっていたことに、
引っ越しで大量の司法試験対策本が
出てきたときに気がついて。
糸井
相当、オヤジたちがおもしろかったんですね。
藤野
おもしろすぎました。
しかもその時に会っていたおもしろいオヤジたちは、
やっぱり頭角を表してくるんです。
会社がめきめきと大きくなって、株価もあがって。

そこで、人を評価する上で大事なことは
人格なのではないか、ということに
少しずつ気が付いたのかもしれません。
糸井
川の向こうでしゃべっていたオヤジたちに
憧れを持ち始めた、というのは
もう、大転換ですね。
藤野
大転換でしたね。
河野
きっと、とてもワクワクしたんでしょうね。
糸井
なんだろう。
その生き物っぽさが説得力を生むのかな。
どんな理屈や機能を並べるよりも、
1回ずつ勝負に勝ち抜く力があるというか。
藤野
そういう人のほうがおもしろいですよね。
糸井
生き物っぽくなるためには、
自分だけの欲望や1人で生きている感覚が、
もう少し他人とつながった瞬間になるのかな。
河野
自分軸が少しずつ他人に向くんですかね。
糸井
あの、ゴハンをご馳走した相手が
美味しそうに食べているとうれしいじゃないですか?
河野
うれしいですね。
糸井
つまり、喜びって実は向こう側にある。
向こう側が自分に反射して、
自分がもっと広がったり深くなったり。
その構造の中で、おふたりは人をみていますね。
藤野
ああ。
河野
そうですね。
糸井
人の個をみるときに、
「心」という言葉をいれて接しながら
仕事をしている、というのがいいですね。

(つづきます)

2017-06-03-SAT

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プロフィール

河野晴樹

1962年生まれ。
慶應義塾大学卒業後、株式会社リクルートに入社。
若手からエグゼクティブまで幅広く
人材紹介事業の運営を推進してきた。
一方新卒学生の採用面接をはじめ、
数多くの人事をこなしてきた「人材オタク」。
2005年、人材紹介事業をおこなう
KIZUNAパートナーズ株式会社の
代表取締役社長に就任。
主としてエグゼクティブの人材紹介を手がけている。
ほぼ日の就職論特集の際に、
「面接試験の本当の対策」に登場いただいた。

藤野英人

1966年富山県生まれ。
早稲田大学卒業後、国内外の資産運用会社で
日本株のファンドマネージャーとして活躍。
2003年にレオス・キャピタルワークス株式会社を創業。
代表取締役社長・最高運用責任者(CIO)として、
成長する日本株に投資する「ひふみ投信」を運用し、
高い成績を上げ続けている。
明治大学商学部の講師も長年務めている。
現在、日経電子版の「NIKKEI STYLE」にて
コラムを連載中。
ほぼ日には「どうして投資をするんだろう?」
「恋と投資の話」で登場いただいた。
著書として『投資家が「お金」よりも大切にしていること』、
『ヤンキーの虎』など多数。
最新の著作に『投資レジェンドが教えるヤバい会社』がある。