お米が好き♡と に か く 好 き。
うれしくて、かわいいお米。
──
おふたりのお米話がおもしろくて、
「ちいさな田んぼキット」について聞くのを、
スッカリ忘れていました。
小池
ははは。だめじゃないですか。
柏木
私たちも、つい調子に乗ってしまって。
──
おふたりとも、
昨年、育ててくださったわけですけど、
小池さんは、水やりを忘れて、
いったん
稲全体を「真っ白」にしてましたよね。
小池
ひどい目に遭いました。
──
ひどい目に遭ったのは、稲のほうでは‥‥。
小池
あれは、すいませんでした。本当に。

でも、あの状態から復活したんです。
収穫もできて、奇跡かと思いました。
──
難しかったことは、ありましたか?
小池
米粒をスズメに食べられちゃったこと、
あとはやっぱり「水やり」ですね。

栽培ケースって面積に限りがあるから、
ちょっと油断していると、
いつしか、水がなくなっちゃっていて。
──
はい。水については、油断禁物ですね。
小池
うちは、ビルの屋上で育てていたので、
遮るものが何もなかったので、余計に。

でも、全体的な感想としては、
種を植えたらすぐにかわいい芽が出るし、
みるみる大きくなるしで、
育てていて、すごく楽しかったです。
──
そう言っていただけると、うれしいです。
柏木さんは、いかがでしたか。
柏木
私の部屋は、マンションの1階なんです。

それまで「日当たりの悪さ」を、
あんまり意識したことなかったんですが、
自分のお米を育ててみて、
「あ、うちって日当たり悪かったのか!」
ということに、気づかされました。
──
柏木さんとこの稲くんは、
生育が‥‥ちょっと遅めでしたものね。
柏木
同時期に育てていた友人の稲と比べて、
ヒョロっとしていました。

その友人の部屋はマンションの5階で、
とっても日当たりがいいんです。
──
やはり、太陽の光って大事なんですね。
水と同じくらい。
柏木
それまでは「私、米農家だったし!」
みたいなことを、
どこかで思っていたんですけど‥‥。
──
でも、収穫はできたんですよね?
柏木
そうですね‥‥それは、それなりには。

でも、やはり他の人にくらべると、
分げつ(稲の株が増えていくこと)は、
控えめだったと思います。
──
あらためて、太陽って、すごいことです。
小池
いやあ、それは本当に、そう思いますよ。

だって、太陽の光ひとつで、
かたや真っ白、かたやヒョロヒョロって。
柏木
私は、あの「ちいさな田んぼ」のなかで、
自然を感じられたことが、よかったです。

太陽の光が足りなければ痩せっぽちだし、
猛烈なゲリラ豪雨のときに
ベランダに出しっぱなしにしていたら、
稲が雨で倒れてしまったり、
あの、ほんのちいさなケースのなかでも、
自然は、きちんと「脅威」で。
──
きちんと稲の花も咲けば、
きちんと虫もスズメも寄ってくるという。
小池
ちっちゃな自然そのもの、ですよね。
柏木
本業のライター仕事が忙しくて、
でも田んぼの面倒も見なきゃってとき、
兼業農家さんの気持ちが、
何となく、わかるような気もしました。

お米農家だったころは専業でしたから、
田んぼの稲を中心に
生活を組み立てていたんですけど、
「ああ取材の準備、でも田植えしなきゃ、
 ああ締め切りだ、でも田植えしなきゃ」
みたいな‥‥。
──
この「ちいさな田んぼ」のおかげで、
本物の田んぼの大変さとか、
自然のすごみとかが、
あらためて実感できる気がしますね。
柏木
自然のすばらしさが、わかると思う。
だって、本物の田んぼや畑では、
保水力もちがえば、
土の肥え方もちがうじゃないですか。

本物の田んぼで稲を育てていたときは、
草とりこそ大変でしたけど、
田植えを終えたら、
「あとは、自分たちでがんばってね!」
みたいな感じでも平気でしたが、
ちいさな田んぼの場合は、
放任主義だと、うまくいかなそうです。
ハラハラ感がちがう‥‥といいますか。
──
水については、まさにそうですね。
小池
キットに雑草の種も入れたりとか(笑)。
──
あー、なるほど(笑)。
わざわざ、じゃまするキャラクターを。
柏木
草とりまで体験できるセット(笑)。
──
草をとるために種を植える‥‥深い。

では最後に、あらためて、なんですが、
自宅で稲を育ててみた感想を、
一言ずつ、いただけませんでしょうか。
小池
お米って、こうやってできるんだって、
成長段階ごとに、
目で見て知れるのが、いいと思います。

稲に咲く花なんて、
たぶん実際の田んぼで見ようと思ったら
すごく大変なことだけど、
ちいさな田んぼをベランダで育ててたら、
きっと、見られますよね。
──
そうですね。毎朝、水をやりますから。
柏木
私は、米への愛着がぐっと増しました。

そして、いちばんキュンっとしたのは、
ちっちゃい芽が出たときです。
──
あ、わかる! すごい嬉しいですよね。

秋の収穫って、
明らかにクライマックス感ありますが、
春の出芽も、
それとおなじくらい、嬉しいですよね。
柏木
あと、おもしろいなーと思ったのは、
ちっちゃいうちは
「うちの苗、苗」って言ってたのに、
いつのまにか、
「うちの稲がさ」って呼んでたこと。
小池
あー。
柏木
そのことに、自分で気づいて、
何だかおもしろいなあって思いました。

「あれ、私、いつから稲って
 呼びはじめてたのかなあ?」って。
小池
苗は、いつから稲になるのか。
柏木
「一人前」感?
──
ああ、その感覚、わかります。

種の時代からお世話をしてますから、
子どもみたいに思ってるわけで、
そうなると、本当は、
ちゃんとした定義もあるはずですが、
「苗じゃなくて稲と呼ぶ瞬間」
というのは、
ちいさな田んぼキットの場合は、
人それぞれでいいような気がします。
柏木
「立派になったねえ、君」の瞬間に、
「稲!」と。
小池
自分が育てたお米なんだと思ったら、
どうしたって愛着、感じますもんね。
──
本当に、そうですね。

だから、たとえ、収穫して炊いて、
そんなにおいしくなくても、
うれしくて、
かわいいお米だっていうことは‥‥。
柏木
はい、間違いないと思います!
<おわります>
2017-05-08-MON