お米が好き♡と に か く 好 き。
新たな品種が出てくる出てくる。
──
ちなみに、柏木さんは、
最近ベトナムに行っていたそうですが‥‥。
柏木
え、何で知ってるんですか!?
──
いや‥‥メールにそう書いてありましたが。
柏木
あ、そうでしたっけ。
──
はい。それも、お米関係のお仕事で?
柏木
ええ‥‥まあ、仕事と言いますか、
ベトナムで
「DS1」という日本のジャポニカ米が、
いっぱいつくられてると聞いて、
ちょっと食べてみたいな‥‥って思って。
小池
それだけで行くんだ、ベトナムまで。
柏木
で、実際に食べてみたところ、
やっぱりアレでした、「炊き方」でした。
──
炊き方?
柏木
まず、日本の大手米卸売会社さんが
現地の会社と組んで、
「東京むすび」というおむすび屋さんを
ホーチミン市内で、やってたんです。

そんなには期待しないで食べたら、
わ、そんなことを言っちゃいけないけど、
でも正直、期待しないで食べたら、
ちゃんと粒がホロホロしていて、
艶もあって、ジワッと旨味も感じられて、
「これ、日本のおむすびと遜色ないな」
って、感じられたんです。
──
へぇー、ベトナムで食べるお米って
やたら色が白くて、乾いてて、
ボソボソしてるイメージしかなかったんで、
それは、ちょっと意外ですね。
柏木
でも、まったく同じお米を
あるチェーンの日本食料理店で食べたら、
もう、びっくりするほど、
旨味も甘みも、感じられなかったんです。

グチャッと軟らかくて、艶もなくて‥‥。
──
つまり、炊き方がちがったんですか?
柏木
そうなんです。

炊飯の良し悪しで、まったく変わっちゃう。
炊飯の重要性が、あらためてわかりました。
小池
米を炊くということで言うと、
白金高輪に「心米」という和食屋があって、
その店の炊飯師さんは、
日本で最も実力のある方のひとりだと
思っています。
──
炊飯師。
柏木
ええ、店主で炊飯職人さんですね。

常時8種類のお米を置いてる料理屋さんで、
メニューには
いろいろな品種がずらりと並んでいて、
先日、そこに小池さんと一緒に行って、
あれ、2人で4種類、食べたんでしたっけ。
小池
食った食った(笑)。
柏木
炊き方の技術で、それぞれの米の特性を、
素直に、ストレートに出しているんです。
──
それは、食べてみたいです。
小池
お米の味のちがいがわからないって人でも、
あの店なら、わかるんじゃないかな。
柏木
店主が、ものすごい米マニアな人なんです。

ふだんは、どちらかというと
寡黙なお人柄みたいなんですけど、
お米の話になるや、
がぜん言葉が溢れ出てくるような感じです。
小池
たぶん、炊き方いかんで
米の味そのものが変わってくるってことが
すごくよくわかると思います。
柏木
あ、そうだ、おいしくないなと思いながら、
ベトナムでパッサパサのお米を食べてたら、
とつぜん、
日本のラーメンライスを思い出したんです。
──
ラーメンライス‥‥というのは、
ラーメンとライスのセットのことですよね。
柏木
そう、それをパッと思い出して
「ブン」という名前の米粉の麺を注文して、
ごはんといっしょに食べてみたら、
これが、なんと、
たちまちお米がおいしく感じられたんです。
──
急に思い出すのが「ラーメンライス」とは。
柏木
そのときに、
「ああ、米って、食べ方でぜんぜん変わる。
 米とは食べ方とセットなんだな!」
という真理をつかみました。
──
ベトナムの定食屋で。
柏木
で、次に、フライドライス、
つまりチャーハンみたいなものを食べたら、
ベトナム米がパラパラしていて、
そっちも、ものすごくおいしかったんです。
──
ええ。
柏木
やっぱりベトナム米をおいしく食べるには、
炒めるか、汁系ぶっかけだな、
という思いを新たにして帰ってきたんです。
小池
絶対、米でできてる‥‥この人‥‥。
──
単なる印象かもしれないのですが、
ぼくたち日本人の「お米の炊き方」って、
すごくていねいな気がするんです。

それって、和食みたいな、
ある種張り詰めた感じの料理に合わせるから、
炊き方も繊細になるんでしょうか。
小池
ええ、そうかもしれませんね。
これほど「炊飯」に技術を投下している国も、
そんなにないと思いますからね。

炊飯器だっていろいろ出てるし、
ものによっては、すごい高かったりしますし。
柏木
一方で、昔ながらの土鍋がいいって言う人も、
たくさん、いらっしゃいますしね。
──
お米の世界って、
新旧のトピックスが入り混じってる感じが、
おもしろいなぁと思います。
小池
伝統の炊飯技術は素晴らしいですし、
新しい品種も、バンバン、出てきてますしね。

時期の近いところだけでも、
山形の「雪若丸」ってお米がデビューするし、
岩手からも「金色の風」というお米が出ます。
──
へえ。
小池
名前は、まだ決まってないみたいですが、
富山や福井からも新品種が出ますし、
東京の百貨店で試験販売した
米どころ新潟の新ブランド「新之助」も、
今年の秋に、本格デビューの予定。
──
話題が多いと、田んぼも活気づきそう。
小池
そうですね。

新しい品種がつぎつぎに出てくるのって、
やっぱり、ワクワクしますよね。
──
お米は「日常品」という話が出ましたが、
日常品だからこそ、
新しい品種をどんどん試してみることも、
わりとお手軽に、できますよね。
小池
福井県って、
コシヒカリを育て上げた県なんですけど、
コシヒカリを大事にしつつ、
彼らも「ポスト・コシヒカリ」を見据えて、
さまざまな挑戦をしています。

そうやって、
たくさんのプレーヤーが競い合っていけば、
お米業界全体が盛り上がるし、
お米それ自体も、
もっともっと、おもしろくなると思います。
<つづきます>
2017-05-07-SUN