田中泰延+古賀史健+燃え殻+永田泰大+糸井重里「書くについての公開雑談。」
第2回
崩壊学級の学級新聞。
糸井
では、そこらへんで一杯ひっかけてきた
燃え殻さんにリレーしましょう。
燃え殻
すみません、ひっかけて来ました。
会場
(笑)
糸井
本職は、美術さんなんですよね?
燃え殻
はい、美術製作をやっています。

なんで、「ものを書く」なんてことは、
しなくたって、まったくいいんです。
糸井
ですよね。
燃え殻
じつは僕‥‥ハガキ職人だったんです。
糸井
あー、わかる気がする!
燃え殻
ラジオに投稿する、ハガキ職人でした。

ハガキ職人って、恵まれないじゃないですか。
がんばって書いても、めったに読まれないし、
せっかく読まれたって、
キーホルダーが貰えるか貰えないかくらいで。
糸井
ハガキ職人というと、基本は「笑い」ですね?
燃え殻
えぇと、これが、本当に言いづらいんですけど、
マイクを通して言う話でもないんですけど、
辻仁成さんという方が
パーソナリティをやってらっしゃった番組で、
ものすごいキザなことを書くと
これが、けっこう読んでもらえる、という‥‥。
永田
2部だ。「オールナイトニッポン2部」ですね。
火曜日の。
燃え殻
いま、ツイッターでキザなポエムを書いたら、
えらい勢いで叩かれると思うんですが、
あれをやると、
すごい読んでもらえるラジオに送ってました。
会場
(笑)
糸井
燃え殻さんは、その修行をしてきたのか‥‥。
燃え殻
ええ、まったく、お金につながらない。

恥ずかしい投稿内容なので、
クラスの友だちにも絶対に言えなくて。
糸井
そんな「ジキルとハイド」生活を。
燃え殻
ええ、おかしなラジオネームをつけて‥‥
いまも、おかしなペンネームですけど。
会場
(笑)
燃え殻
だから、こんなところに出て、
糸井さんにも会えるってわかってたら、
本当にもっと
ちゃんとしておけばよかったと思って。
田中
ちゃんと(笑)。
燃え殻
読まれた投稿が本とかになるんですけども、
誰もわからないペンネームの、
誰もわからない投稿を本屋で立ち読みして
「俺は、きっとおもしろい」って。
糸井
そう、自分で思っていた。
燃え殻
はい、そんな滝行に打たれてました。
糸井
昔から「書きたかった」衝動があったの?
燃え殻
それは‥‥そうですね、
うちの中学、学級新聞がなかったんです。

学級崩壊したのが早かったので。
会場
(笑)
燃え殻
なので学級新聞つくってました、自分で。
糸井
崩壊した学級に、自作の新聞を。
燃え殻
教室が「北斗の拳」みたいになっていて。
田中
そこまで崩壊してたんだ(笑)。
燃え殻
本当に大変なことになっていまして、
ロッカーというロッカーが
ぜんぶ消火器かなんかで破壊されていて、
自分の持ちものは
自分でギュッと握りしめてないとダメな、
そんな学級の壁に新聞を‥‥毎日。
田中
え、毎日なんや!
燃え殻
毎日、貼ってた。
糸井
それ、誰かが読んでるの?
そんな、崩壊した学級で。
燃え殻
はい、誰も読んでないと思ってました。
なにせ、休み時間とかに、
不良がバーッて破り捨てちゃうんです。

しばらくは「仕方ないな」って感じで
受け入れてたんですけど、
いちど、心が折れて、やめたんですよ。
糸井
うん、うん。
燃え殻
そしたら、
すごくきれいなクラスの女の子が来て。
糸井
‥‥ええ。
燃え殻
「書かないの?」って。
糸井
へぇ!
田中
ほぉ!
糸井
モテてる。
田中
モテはじめてますね、そのころから。
燃え殻
いやいや全然全然、
もう、まったく何もなかったんです。
糸井
そんなにモテるんだったら、
今からでも
学級新聞を書きたいですよね、田中さん?
田中
書きたいです、今すぐに。
永田
でも中学生が学級新聞を毎日って、すごい。
燃え殻
いや、病でしょう? 病なんですよ。

で、そのときの病を引きずっていて‥‥
いま、学級新聞を書いてるつもりなんです。
糸井
どうですか‥‥この話。田中さん。
田中
まったく僕と関係ない世界の話って感じで、
燃え殻さんの、モテ度と言ったら‥‥。
燃え殻
いや、誤解してます。全然モテていません。

なんか、小学校とか中学校のときって、
走るのが速いってだけで、
女子にキャーキャー言われたりしますよね。
糸井
しますね。
燃え殻
あれ、本当になんだよそれ、と思っていて。

何しろ、一生懸命書いてた僕の学級新聞は、
不良に破り捨てられて、
挙句の果てには
キャンプファイアのタネに使われたりとか、
そんなひどい目に遭ってたんです。
会場
(笑)
糸井
まあ、モテようのない取り得ってあるけど。
俺は歯が丈夫なんだよ、とかね。
燃え殻
それ、もうだいぶ後になってからですよね。
糸井
そうそう(笑)、90くらいになったら
「ワシは歯が丈夫だ」でモテるけど(笑)。

‥‥でも、いまみたいなところに
燃え殻さんの、ハガキ職人としての才能が、
顔を出してるのかもしれない(笑)。
<つづきます>
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