第7回野球と病気に感謝して。
- 金沢
- パニック障害を告白したときに、
「いつでも家に帰ってこい」って
言ってくださったご両親の存在も、
小谷野さんにとって
すごく大きいんだろうなと思うんですけど。
- 小谷野
- 二軍の寮の部屋からも出れなかったとき、
迎えに来てくれたのは
本当に大きかったですね。
- 金沢
- 寮では全然寝られなくても、
実家に帰ったら寝られるようになったって
おっしゃってましたよね。
- 小谷野
- そうですね。
寮では、まぁ、寝られなかったですもんね。
そういうとき、ありました?
- 金沢
- あります、あります。
- 小谷野
- ねぇ。
2、3日全然寝られないとか、ありますよね。
で、病院で睡眠薬みたいなのをもらって飲んで、
1日以上寝たりとかって、ありますもんね。
- 金沢
- はい。
よくないんですけど、
「全然効かないじゃん」って思って、
つぎの薬を早めに飲んで、
あとで眠くて動けなくなったりとか、ありましたね。
- 小谷野
- 「これ以上飲んだらダメって言われた量、
飲んだろうかな」と思うくらい、神経がね。
- 金沢
- そういうとき、家族に電話したりすると、
やっぱりちょっと落ち着いたりして。
家族の力って、大きいんだなって思います。
- 小谷野
- 本当にそうですね。
親とか家族の存在は大きいです。
だから、結婚したらいいよ、本当に。
- 一同
- (笑)
- 金沢
- 家族といえば、今はお子さんもいらして。
- 小谷野
- 3人います。
- 金沢
- 家族が増えて、心境って変わられましたか?
- 小谷野
- 全然変わりますよ。最高っす。
- 園田
- (笑)
- 金沢
- 奥様とは、何か病気のことは話します?
- 小谷野
- 直接何か話すことはないけど、
言葉は選んでくれてるのかもしれない。
試合前に絶対連絡するんですけど、
LINEで「楽しんできてね」って送ってくれるんです。
- 金沢
- 「がんばってね」ではなく。
- 小谷野
- 「がんばってね」じゃないですね。
「自分らしく楽しんできてね」とか、
そういう言葉しか言われない。
「そういう言葉のほうがうれしい」っていうことを、
ぼくがそういう人間だってことを、
わかってくれてるんだと思います。
- 金沢
- 小谷野さんにとっては、
「楽しんできてね」って言葉が、
一番うれしいんですね。
- 小谷野
- はい。
スタメンで出ようが、出まいが。
「楽しんでくるね」って言えるんで。
- 金沢
- ベンチにいても楽しいんですか?
- 小谷野
- もちろん!
一番近くで、一番好きな野球が見れる(笑)。
最高ですよ。最高の仲間の中で、
こうやって野球やってるわけだから。
- 金沢
- ああ、なるほど(笑)。
でも、本当に楽しまれているんだなあと思いました。
- 小谷野
- ほんと楽しんでます。はい。
- 金沢
- あの、言い方悪いかもしれないですけど、
パニック障害になったから、
そこまで楽しめているのかな、とも思って。
- 小谷野
- うん、そうですね。
パニック障害っていうものになれてなかったら、
こんなに野球も続けられてないと思うし。
- 金沢
- たとえば、小谷野選手は
何度も怪我を乗り越えてきたと思うんですけど、
パニック障害と向き合って培われた、
心の強さが助けになったりもしたんでしょうか?
- 小谷野
- 怪我もパニック障害も一緒だと思うんですよね。
「ひとつそういうのあってくれたほうが、
成長できるでしょ」って、今思えるんで、
「いくらでも来い」って思うようにしてます。
- 園田
- はぁー‥‥。
- 金沢
- すごいです‥‥。
なんか、自分が弱っちいなと思います(笑)。
- 小谷野
- いや、こういうふうにね、
強気な発言とか、バンバンしていると、
そういうふうな人間になっていくんですよ。
- 金沢
- 自分に言い聞かせるってことですか。
- 小谷野
- ポジティブな言葉しか
言わないようにしてるんです。
もう前に進むことしかしないです。
- 金沢
- ちょっとお話聞いただけで、
今、引っ張られて、前向きになってます(笑)。
- 小谷野
- そうですか(笑)。
- 金沢
- あ‥‥約束のお時間が、
だいぶ過ぎてしまいましたが、
まだお話を続けても大丈夫ですか?
- 小谷野
- 大丈夫です。
全然、大丈夫です。
話しましょう。
- 金沢
- 試合の入場曲が、ONE OK ROCKですよね。
選手の方って、
音楽で自分を鼓舞したりすると思うんですが、
気分に影響することってありますか?
- 小谷野
- 気持ちがノッていきやすい曲は
ふだんでも聴いたりしますよ。
まぁ、ワンオクの曲は英語だから、
理解できているか自信ないけど(笑)。
- 一同
- (笑)
- 金沢
- っていうのは、
僕もパニック障害になった時に、
音楽に勇気づけられたことがあったので、
小谷野さんも同じようなことがあるのかな、
と思いまして。
- 小谷野
- あ、でも、そういう曲、好きですよ。
やっぱり音楽に勇気づけられることは大きいですね。
今の登場曲はワンオクの
『American Girls』ですけど、
打席に入るときに気持ちが高まります。
歌詞の意味はわかってないかもしれませんが(笑)。
- 金沢
- でも、曲がかっこいいから(笑)。
- 小谷野
- そうですね。
家で『American Girls』が流れてくると、
子どもが僕の名前のアナウンスの真似をするんです。
入場曲っていつでも自由に変えられるんですけど、
それを見た時に
「これは変えられないな」って思いましたね。
せっかく覚えてくれたから。
もうずっと、ワンオクで行こうかなと思ってます。
- 園田
- お子さんが覚えてくれるのは嬉しいですね。
- 小谷野
- そうですね。
ワンオクの人にサインくらいもらえるくらい、
引退まで流したいなと思ってます。
- 一同
- (笑)
- 金沢
- ちょっと気が早いですけど、
現役から引退したあと、病気とは、
どのように向き合っていこうと思っていますか?
- 小谷野
- かつての僕みたいに、
電車とか飛行機に乗れないっていう人、
今、小さい子もそういう例が多いと聞くから、
そういう子たちとの出会いを
もっと増やしていきたいなって思いますね。
- 金沢
- 支援活動をしたいともおっしゃってましたよね。
- 小谷野
- 引退後、どんな仕事に就くかもわからないですけどね。
でも、この病気のおかげで、
応援してくださったりとか
知ってくださったりした方がたくさんいて。
「この病気になってよかったな」って、
本当に思っているんで、
野球と病気に感謝しながら生活していきたい。
そう思います。
- 金沢
- 僕も、パニック障害にかかったことで、
今日こうして小谷野選手とお会いできたと思うと、
今の自分も悪くないなって、本当に思います。
これからも小谷野選手の姿や言葉に
勇気づけられる人がきっとたくさんいると思います。
いろいろな話をしてくださって、
ありがとうございました。
- 園田
- 今日はお時間をいただき、ありがとうございました。
- 小谷野
- ありがとうございました。
お酒があったら、
もっといろいろ話せたんだけどね(笑)。
- 一同
- (笑)
(最後までお読みいただき、ありがとうございました。)
2018年7月18日(水)