── 去るんですね、燕って。
来るんですもんね。
去りますよね。
さびしいですね。


昔、家に燕が巣を
作ったりしてました。
軒下に?
ありました、ありました。
燕って見なくなりましたね。
── 都心では滅多に。
燕が巣を作ると
「家が栄える」そうですよ。
そういえば、うち、部屋の中に燕が
巣を作ったことがありました。
── えっ! 部屋に?!
栄えましたか。
うーん?
燕の巣を食べるのって中国でしたっけ。
西太后が毎日のように食べたという‥‥。
そうですね、巣をスープや
デザートにするんですよね。
── 崖に巣を作るアナツバメ類の何種類かが
唾液で巣を作るのを、食材にするんですよね。
ゼリー状のねたんぱく質。
ふかひれ、あわびと並ぶ高級食材ですよね。
といっても、季節とは関係がないですね。
この季節のくだものは、「梨」ですよ。


無花果、桃、葡萄と来て、
いよいよ梨ですね!
「二十世紀梨」でした、うちは。
── 二十世紀ってあんまり甘くない
シャリシャリしたのでしたっけ。
そうですね、うちも、
やっぱり二十世紀でした。
「二十一世紀梨」って
鳥取ですよね。
鳥取が梨の名産地になったのは
いつからでしょう。
── 『飲食事典』で探しましょう。
ふむふむ‥‥延長年間、
923年にもう栽培記録があります。
平安初期に支那から伝来したであろう、と。
鳥取は‥‥あった!
「明治以降、会津若松の発祥と言われるが、
 名声を博したのは岡山で、次いで鳥取。」
そう記述があります。
やっぱり岡山ってすごいですね。
── くだもの王国ですね。
「鳥取産は優良だが酸味が多いけど、
 岡山産は優れている」というふうに
京大の博士が言っております。
この本が著された頃は、鳥取は
あんまり評価されてないですね。
じゃ、最近になって
巻き返したと言うことなんですね。
鳥取ってやっぱり梨に
力を入れてるんだと思いますよ。
そうやってアップグレードさせて
いったんじゃないかな。
実は‥‥あんまり好きじゃないんです。
きらいじゃないですけど。
あの、ぼんやりした味が苦手って人、
案外、いますよね。
西洋なしは好きなんですけど、
日本の梨は水っけが多くて。
── ちょっと古くなると
ぼけた感じになるのが
すごく苦手だという人もいますね。
くだものって熟しておいしくなるのに
そうじゃないないタイプ。
でも「幸水」は
ちょっと味が違いますよね。
ちょっと味が濃いですよね。
── 梨って韓国料理に
よく使われてませんか。
ユッケ、梨ですよね。
いまはユッケが食べられないですけど。
韓国の人、梨好きなんでしょうか。
名門の「梨花女子大学」とか。
梨の花もきれいですし。
京都にも
「梨木(なしのき)神社」ってあるんですよ。
‥‥韓国とは関係がなくって
地名が由来なんですけどね。
そうそう、「梨尻柿頭」って知ってます?
このことば、わたしは初めてで。
── なししりかきあたま?
知らなかったです。
梨はお尻がおいしくて
柿は頭がおいしいってことなんですって。
── 覚えておくといいですね。
切り分けるときはお尻をもらおう。
ところで「ありの実」って梨でしたっけ。
梨が「無し」に通じるので
「有りの実」と呼ばれたんですよね。
なんとなく冷遇されているような。
── 「なしのつぶて」も、梨?
もともとは「無し」だったのが
「梨」と書かれるようになったようです。
── なんだか気の毒‥‥。
ありがとうございました!
次回は「雷乃収声(かみなり すなわち
こえを おさむ)」です。
9月22日にお会いしましょう。
2012-09-17-MON



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