── | 「蟄虫培戸」? どういうこっちゃ。 |
啓蟄の逆なんですよ。 啓蟄は蛙とかが出てきますが、 これは冬ごもりの意味なんです。 |
|
店じまい、ということですね。 |
|
はい、そうです。 |
|
── | もぐっちゃうんですね。 |
ただ、虫っていっても、 この当時は蛇とか蛙とか ああいうものも含んで「虫」と 呼んでいたようなんです。 |
|
── | なるほど。旬のものは 「鯖」「里芋」「青蜜柑」「新米」。 ‥‥いいですねえ。 |
いいですねえ。 鯖! 鯖って京都に行くと 必ず「鯖鮨」買って帰りますよね。 |
|
はい、鯖鮨ですよね。 京都で食べるとおいしいですよね。 |
|
そうなんです。京都がおいしいですよ。 |
|
この間、仙台に行った時に 駅で鯖鮨売ってたんです。 買ってみたんですけど、 ああ、やっぱり京都のは おいしいな、と再認識しました(笑)。 仙台の人にはわるいけど、 京都おいしいな、って。 |
|
おいしいですよぉ。 あれが鮨の先輩格ですよね。 |
|
そうですよね。 その中でも「いづう」のは。 |
|
あ、いづうね! |
|
鯖鮨専門店ですからね。 |
|
── | 祇園四条の。 |
でも、高いですよね。 |
|
なんであんなに高いのかと 思うぐらい高いですよね。 |
|
やっぱりいいのを 使うんじゃないですか。 足が早いから生臭くならないように。 |
|
── | 「『生き腐れ』といわれるほど足が早い」 と書かれていますね。 生きたまま腐っちゃうくらい早い。 |
── | 東京の人は鯖は味噌煮ですか? |
あとは〆(しめ)た鯖が。 |
|
── | 「〆鯖」! |
〆鯖もおいしいですよね。 東京に来て初めて食べて これおいしいな、って思いました。 |
|
鮨といえば、 本当の鮨は時間をかけて 熟(な)れさせてた。 |
|
── | もともとは熟れ鮨ですもんね。 鮒鮨みたいな。 |
そうですよね。 そして江戸時代は押鮨や棒鮨が一般的で、 京都の鯖寿司はそのタイプ。 ところが江戸の人たちは気が早いから 早く食いてえ! ってことで 最初からお酢つけちゃったっていうのが、 握り鮨の始まりらしいですよ。 上方は依然押鮨が主体だったのに。 |
|
── | あと、江戸の鮨は大きかったらしいですよ。 おにぎりくらいあったっそうです。 2個食べればおなかいっぱい。 それも屋台で。 そういうところも江戸っぽいですね。 |
ファストフード。 ところで鯖鮨って、みんな 昆布(こぶ)も一緒に食べますか。 |
|
── | 食べちゃいます。 |
薄ぅい昆布だったらふつうに食べますよね。 でもいづう型の、茶色い分厚い昆布は? ぼくは食べちゃうんです。 |
|
── | あれは外すかな。 食べるかな。食べますね。 |
最初、シートかなと思ったけど 噛みきれました。 |
|
桜餅を葉ごと食べるかどうか、 ぐらいの問題はありますよね。 |
|
── | 桜餅は食べるんですよね。 |
あれ、微妙ですよね。 |
|
── | 友人に柏餅を葉っぱごと食った男がいて びっくりしたけど。 |
ははははは! |
|
それ、すごいです。 強者ですねえ。 |
|
── | 柏餅を食べてるのに バリバリバリって音がするんです。 最後に硬い葉脈を口から出して、 しぃーっしぃーっ、って。 唖然として見てたら 「え、食わないの? おれんち兄弟3人とも、 食べちゃうよ!」って言われて。 食わないよぉ! って。 |
お茶っぱ食べるくらい強者。 鯖鮨の昆布を食べても驚かれないですものね。 いやほんと、鯖、いい魚だなあ。 ああ、食べたくなってきました(笑)。 ただ、汁物は、 あんまり食べたことがないんです。 「船場汁」とか。 |
|
船場汁は大阪ですね。 |
|
── | そして「里芋」も旬ですよ。 |
里芋もおいしいですよね。 |
|
京都名物の「いもぼう」って やっぱりちっこい里芋で やるもんですかね。 |
|
あれは海老芋と棒鱈の炊き合わせですよね。 「いもぼう」って店があります。 岡崎公園の八坂神社の北の方ですけど。 |
|
やっぱり京都の工夫ですよね。 干した鰊を使うっていうのが。 ポルトガル人と同じことやってますね。 |
|
── | 鱈、そうですね。 干して塩漬けにしますね。 里芋は『和漢三才図会』にも掲載されていますね。 |
ちなみに、ただ「芋」っていったら 里芋を指したんですよ。 |
|
あ、そうなんですか! |
|
── | ジャガイモは外来種ですか。 |
あるいは自然薯とか、 サツマイモは甘藷。 ‥‥だそうでござんす。 |
|
── | そして「新米」! 新米の定義って、 「収穫された年の12月31日までに 精白・包装されたもの」 へえー! |
お米の品種多くって最近。 新しい品種、びっくりしましたもん。 もっちもちで。 「ミルキークイーン」とか。 |
|
── | 「ゆめぴりか」という北海道のお米も。 |
山形には「つや姫」がありますね。 |
|
お米ってもっといろんなものが 食べられるようになってもいいのにね。 黒米とか。 |
|
── | でも年をとってくると 白飯がおいしくなってきませんか。 健康には玄米がいいんだけれど、 やっぱり白飯がうまい。 |
そうかも! 米不足の年がありましたよね。 |
|
── | ありました、タイ米を食べてました。 |
あった、あった、タイ米。 |
|
当時、わたしたち、そういうのも 好きだと思ったけど、 当時、中年というか父母とか ある程度の年の人は みんなイヤだイヤだって言ってた! 白い米じゃないとって。 |
|
── | 江戸っ子は白い米食ってたんですよね。 それで脚気が流行っちゃった。 |
日本人はだんだんあの白い もっちりに戻るのかな。 昔の本を読むと、 うるちと餅とさらに何種類か お米を厳密に分けてるんですよ。 植物としてちゃんと分けている。 ただの「米」っていうのは なかったんですよね。 そして炊いたお米は「めし」として別項目。 昔の人ほど、白い餅を 食べられるチャンスが少ないから 相当‥‥逆に意識が。 |
|
── | 高かったんでしょうね。 |
やっぱり通貨のような ものだったから。 年貢ですものね。 米のとれ高で 国の大きさを表しちゃうし、 米で人がいっぱい死んでいるし。 |
|
給料が米っていうのが すごいですよね。 |
|
はっははははは。 |
|
── | ありがとうございました。 次回は「水始涸(みず はじめて かる)」。 10月3日にお会いしましょう。 |
2012-09-28-FRI |