── | 蟋蟀と書いて「きりぎりす」。 「こおろぎ」じゃないんですね。 |
「こおろぎ」と「きりぎりす」って名前がけっこう ごっちゃになってるんですよ。 『万葉集』では鳴く虫をすべて 「蟋蟀」と表していたんです。 |
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── | なるほど、たしかにそんなに細かな分類は 必要じゃなかったでしょうしね。 さてそんな季節の旬は、「魳(かます)」 「青梗菜(ちんげんさい)」「栗」。 青梗菜に旬があったんですね。 ‥‥って、そりゃありますよね。 |
露地ものは秋が旬だそうですね。 中国では3000年の歴史のある野菜ですが、 日本に入ってきたのは‥‥1980年代? |
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そう、最近ですよ。 |
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わりと、ね。 小‥‥中学校くらいかな。 |
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── | 大人になってからですねえ。 青梗菜はいまだに料理のバリエーションが つけにくい野菜です。日常料理人としては。 |
中国のものだっていう意識があったせいか、 おひたしとかじゃなくてクリーム煮とか。 |
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── | あとは、炒めたり。 |
そういうので食べてましたね。 いまでもそうですね。 |
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── | そして「栗」ですね。 縄文人の主食。 |
栗はうまいですよねえ。 |
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おいしいですよねえ。 京都で栗といえば、 丹波栗でしょう、やっぱり。 栗拾いって行きます? |
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行ったことないです。 |
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こわいですよね、栗拾い。 上に人が登って、落としてくれるんですけど。 |
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軍手ですか。 |
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そうそう、軍手です。 でも痛いの! 軍手くらいじゃ。 しかもへたすると、頭の上に落ちてくる。 |
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── | 焼き栗のスタンドって、 京都で初めて見たんですけども。 |
わたしもそうです。 たぶん京都から来てますよ、あれ。 甘すぎないのがいいですよね。 天津甘栗もおいしいですけど、 甘くて手がべたべたになるから。 |
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みんな大好きですよ。 「林万昌堂」の焼き栗とか買ってこられた日には、 兄弟で奪い合ってたいへんなことになります。 最初に数を数えて、家族で分けて食べましたよ。 あれは子どもの頃から贅沢なお菓子でした。 |
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なんで東京に来なかったんでしょうねえ。 |
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子どもの頃でいうと、 マロングラッセも好きでした。 |
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── | あれは贅沢な! 初めて食べたときの感動を覚えています。 衝撃的においしかったですよ。 |
あれはびっくりしましたよ、 子どもの頃。 |
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── | 金色の包みに入って、 へこみのあるケースに 1個ずつ入ってて。 |
そうそうそう!! |
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わりと古い時代に 「モロゾフ」とかの洋菓子屋さんで。 |
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── | こーんなにうまいのか、と。 |
1粒何百円だとかしちゃうじゃないですか。 あれほどお使いもので 量がちょっとになっちゃうものってないですね。 |
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栗ってすごいですよね。 モンブランもですもんね。 |
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── | そうですね! こどもの頃はそんなに好きじゃなかったんですが、 モンブラン発祥のお店といわれる 「アンジェリーナ」のモンブランを食べて、 意識ががらっと変わりました。 あんなにおいしいケーキはそうそうないです。 |
ヨーロッパの栗と日本の栗は ちょっと品種が違うのでしょうね。 モンブランとかぺーストにしたりする栗は。 |
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── | 日本には「栗むし羊羹」があるじゃないですか。 |
「栗きんとん」もありますね。 |
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── | 岐阜の銘菓で、手でつまめる茶巾みたいなタイプと、 おせちに入るねっとりしたタイプがありますよね。 両方「きんとん」って言いますね。 |
京都はまた燃えるんですよ、 おせち料理のきんとんの栗は「金時栗」です。 |
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おいしそう! |
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── | 栗まわりのものでは 小布施の栗落雁もおいしいですよね。 |
おいしい! |
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あ、そや、栗の甘露煮も。 |
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── | うち、甘露煮にしたので 蒸し羊羹作るんです。 |
ああ、そっかそっか。 |
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── | 甘露煮は3日かけるんですよ。 すこーしずつ砂糖を増やしていって。 すっごいたいへんです。 |
手間暇かかってるんですね。 |
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── | だから「とらや」さんなどは その材料費と手間のぶんだと思いますが、 ちゃんとした値段つけてますね。 竹皮包で1本4000円以上するはず。 |
ふはー! |
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── | ところで、栗って生でも食べられるんですか。 |
知りませんでした! |
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── | 『飲食事典』に 「栗の実は渋皮を去って 生のまま食してもよく」って書いてあるんですよ。 ええと‥‥(ネットで調べる)、 なるほど、生食できるみたいです。 韓国ではそんなに不思議じゃないそうです。 こんどやってみます。 |
でも、日本の栗は、栗ご飯もいいですよね。 |
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── | そりゃそうですね。まずはそっちで楽しみましょう。 ありがとうございました。 次回は「霜始降(しも はじめて ふる)」。 10月23日にお会いしましょう。 |
2012-10-18-THU |