七十二候【第五十候 菊花開 きくの はな ひらく】

各地で菊の品評会や菊まつりが開かれる頃です。
旧暦九月九日は重陽(ちょうよう)の節句。
別名「菊の節句」といい、中国ではこの日、
菊の花を浸した菊花酒で不老長寿を祝う習慣がありました。
それが平安時代に日本へ伝わり、
宮中では高貴な人々が菊花酒を飲みながら
歌を詠み花を競う「菊合わせ」を楽しみました。
菊の花に真綿をかぶせて夜露と香りを移しとる
「被綿」(きせわた)という風雅な習わしも知られています。
京おとこ 冬は柑橘類の季節だということですね。
ふうん。
── 冬の柑橘類はいいですよね。
鍋にきゅっとしぼったり。
お肉にもお魚にも合いますね。
京おとこ 「鰰(はたはた)」。
これがまた炙りたくなりますね
── 鰰は日常的に食べませんでしたが
おとなになって、こんなにうまいのかと。
秋田料理で初めて食べました。
京おとこ やあ、そうですよね。
ぼくも大人になってから
居酒屋で初めて食いました。
── ぬるっ、つるっ、ですよね、これもね。
ちっちゃいんですよね。
あんがい食べにくいんですけど。
あずま女 「しょっつる」のもとですよね。
── 魚醤の。
あずま女 発酵させてつくるんですよね。
ローマ人も使った古来の調味料。
── いまもイタリアの調味料には
アッラ・ガルムというのがありますよ。
とってもおいしいです。
そもそもアンチョビがおいしいですから。
あずま女 みんな好きなんですね。
あの魚の。
── アミノ酸の。
京おとこ うま味成分。
── そうだね、しょっつるのもとだ。
あずま女 東南アジアは、一般的に使いますし。
── 「ナンプラー」も「ニョクマム」も。
あずま女 日本人って、ああいう香りを
好まないんじゃないかと思いきや!
── いしり、しょっつる、いかなご醤油。
あ、「鰰寿司」なんていうのもあるんですね。
あずま女 「熟(なれ)鮨」の一種っぽいですね。
── 熟鮨って、うまいのは、異様にうまいですからね。
あずま女 鮎とか鮒とか。
臭くてうまくて。
京おとこ おいしいですよねえ。
ふふふふふ。
あずま女 チーズの臭いのを食べるあの感覚ですね。
京おとこ 京都はけっこう食べましたよ。
あずま女 あ、そうですか!
子どもでも食べるんですか。
京おとこ 食べましたよ。
あずま女 大人な味覚!
── さて、この時期の野菜は
「菠薐草(ほうれんそう)」がありますね。
最近、「寒じめほうれん草」っていう
ちぢみほうれん草が出てきましたね。
あまみが強い。


あずま女 生で食べられる
「サラダほうれん草」とか。
京おとこ へえー。
あずま女 ところで漫画の『ポパイ』に出てくる
ほうれん草の缶詰、
わたし、見たことなくて。
日本に売ってます?
ほうれん草の缶詰って。
── ないですねー。
アメリカ系のああいうコミックが
好きだった小学校の時に
『スヌーピー』の「ルートビア」と
『ポパイ』のほうれん草は
すごいほしくて。
ルートビアはソニプラで見つけたんですよ。
まーずかったんですけどね。
『ポパイ』の缶詰は
ついに明治屋でも見つけられず。
あずま女 これねえ。
どういう状態なんだろうと
思って(笑)。
── くたくたに煮たものでしょうか。
あずま女 おひたしみたいな感じ?
茹ですぎたおひたし。
── ペースト寸前?
あずま女 それじゃ青汁(笑)。
── じゃないかなあ。
ほうれん草のパイとかにするのかな。
あ、ポパイっていうキャラクターは
ほうれん草の缶詰会社の
プロモーションですか、もしかして。
京おとこ ぼくもそうかなと思ったんですけど、
ちがうらしいんですよ。
ああやって、ほうれん草を食べないと
強くなれないって言われて
無理に食べた覚えがありますよ。
── ポパイってそもそも缶詰を
手で潰すくらい力があるのにねえ。
肉ばっかり食ってるウインピーは力がなくて。
へんなの!
‥‥って、それはともかく「海苔」。
そうでした、収穫が冬ですね。
新海苔が出回るのはずっと先ですが。


京おとこ 炙りたいですよ、また
── 昔は炙る海苔でしたよね。
最近は焼き海苔ばっかり売ってるけど。
ちょっと湿った、
あれ、何海苔って言うんだったかな。
「乾海苔(ほしのり)」だ。
あずま女 食べる時に炙るっていうのが
昔の習慣でしたよね。
── よく炙らされてました。
あずま女 やったやった。
失敗してね、焦げ臭くなっちゃり。
── あれはあれでおいしかったですね。
それにしても冬の海で海苔。
年末年始みんな休みの時でも
まいにち海に出かけて行くんだそうですよ。
ほんとにたいへんなお仕事だと思います。
毎日二回ずつ海に出て
様子を見ないといけないから。
あずま女 ううーん、つらいつらい。
── おいしい海苔を作るのは大変なんです。
同じ場所で、隣合った海で
生産者が違うと味が変わるんですよ。
本当に海の農作物ですよ。
さあ、そして年末といえば「お歳暮」。
解説を読みますと。
「歳神様へのお供え」。
「本家に集まって、
 ともに飲食するという行事」
だったんですね。
つまり、クリスマスパーティみたいな
ものだったんですね。
あずま女 しかも、正月準備のものを贈り合う。
── ほんと、クリスマスじゃないですか。
日本のクリスマスってお歳暮なんだ。
あずま女 やっぱりだから、「新巻鮭」って印象なんですよ。
それを捌いてお正月用の「氷頭なます」作ったり
「昆布締め」とか。
京おとこ 西では、そのイメージがないんですよね、
あずま女 鰤(ぶり)ですかね。
寒鰤ですか。
京おとこ うーん、鰤とか贈ったりはしません。
── そもそも今
京おとこさんはお歳暮って出す人ですか。
京おとこ いや、しないですね。
あずま女 わたしは‥‥あ、師匠にはします。
お稽古事の師匠には。
京おとこ あ、お稽古事ねえ。
── 何をなさってるんですか。
あずま女 「謡(うたい)」っていう、能の謡を。
一同 (どよめき)
京おとこ それって、品物を
差し上げるんですか。
あずま女 やっぱり盆暮れは、うん。
── そういうもんですか。
あずま女 逆に職場での習慣がもうなくなりましたでしょ。
昔は、父や祖父くらいまでは
会社の部下からとかね。
あとは昔は大家さんとか。
── 大家さんね。
今は大家さんと会わないこともありますから。
あずま女 一緒に近くに住んでなかったり。
── もう100年後くらいになったら
クリスマスとお歳暮が
一緒になってたりして?
ということで次回は
「閉塞成冬(そら さむく ふゆとなる)」。
12月7日にお会いしましょう。
2012-12-02-SUN
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