── | 「水沢腹堅」ですって。 「沢の水に厚く氷が張っている」 という。いかにも、寒そうです。 |
ほお。 |
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そういえば、 氷って張らないですね、最近。 東京では。 |
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── | ああー、氷張らなくなりました。 水溜まりがないですもんね、昨今。 水はけがよくって。 |
霜柱もないですね。 |
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── | ないですね、土の上を歩くことがないから。 |
と同時に、気温が あったかくなってきてるんですかね。 |
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── | それは実感としてありますよね。 といいつつ、今年はけっこう寒いですね。 ということでこの季節は「本鮪」。 |
鮪! |
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お正月には初セリの鮪がありますものね。 |
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── | 確かにそうです。 鮪って旬が冬なんですね。 いつでも食べるから、 なんだかわかんなくなってます。 鮪は、中世から江戸前期までは 卑しい魚として食べなかったとか。 |
脂の強い下賤な魚といわれていたんです。 |
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── | それでもいっぱい獲れたんで 19世紀前半に、保存のために 醤油漬けの「づけ」が寿司種になったのが ブームになったきっかけだと。 当時は「とろ」とか脂っこいから 嫌いだったんですよね。 それは「ねぎま」にして鍋にしちゃえと。 |
ああ、ねぎま鍋ね。 |
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── | 今とは全然ちがいますねえ。 |
今とは、ええ。 |
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── | でもやっぱり、赤身がおいしい! |
鮪本来の味は赤身ですよね。 |
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ちょっと鉄っぽい味がね(笑)。 |
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とろはもう、 もはや牛肉に通じる何かですね。 |
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── | そうですね。 この間、ある人に聞いたらですね、 食物連鎖って小さいものから大きなほうへ どんどんいくじゃないですか。 大きなものには、それだけ溜まっているものがあるから あまり大きなものを食べないほうがいいぞって 言われちゃったんですけど、 そんなことを言われても、食べたい。 |
鮪といえば、いっとき 鮪漁のテレビ番組って やたら見ましたよね。 大間の鮪獲りとか。 |
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── | お正月に渡哲也とかが出て来て 「鮪!」っていう2時間番組もあれば。 |
そっち系もあれば、 地元系もあったじゃないですか。 青森の鮪漁とか。 やっぱり、、好きなんでしょうね。 |
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日本人は好きになったっていうか。 |
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── | 「なった」んですね。 ということはDNAだとは言えない。 |
そうそうそうそう(笑)。 |
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── | 鮪に関しては、歴史が浅いので、 東西での違いというのは そういう意味では ないかもしれないですね。 |
ないかも。 |
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── | さて、「公魚(わかさぎ)」です。 |
公魚かあ。 |
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── | 公魚は湖に張った氷に穴を開けて‥‥。 |
いわゆる「公魚釣り」ですよね。 長野とか群馬とか。 |
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── | 日本アルプスの周りの湖では 凍ればやるでしょうね。 北海道などでも。 おいしい魚ですよね。 |
おいしい。 唐揚げうまい! |
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南蛮漬けとかね。 |
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あ、いいですね。 |
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── | そして野菜は「芽キャベツ」だと。 ‥‥芽キャベツ? この季節なんですね。 |
見た目がかわいいっていうところが、 ちょっと得してますよね。 |
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ちょっと苦みがあるのにね。 こどもの頃、 あんまり得意じゃなかったです。 大人の味ですよ、これも。 |
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「キャベツの3倍のビタミンC」 だそうです。 その詰まり方がすごいですね(笑)。 |
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── | 原産は、ベルギー。 日本には明治時代に来てるんですね。 |
へえー。 |
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── | 最近は、蒸し野菜が流行るようになって、 よく食べるようになった気が しないでもないですね。 |
しかしこう見ると 『くらしのこよみ』も 和っぽいことをいいながら ずいぶん洋物が入ってますね。 |
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現代の暮らしは、 和だけじゃ足りないですから。 |
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── | ですが、「季節のたのしみ」は 「だるま市」。 これ‥‥元祖ゆるキャラみたいなこと? |
だるまさんがですか(笑)?! |
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あははは! |
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── | だってかわいくないですか? だって、もともとは、達磨大師ですよね。 比べてはなんですが、 イエス像でこんなふうにかわいいものは 見たことがないのです。 |
あちらは、ストイックな表現ですよね。 |
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── | こう、かわいくしちゃうっていうのは‥‥。 |
達磨大師の本来の絵って見たことあります? |
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── | ありますよ。 すごく怖いですよ。 眉毛も髭も胸毛ももじゃもじゃですよ。 |
怖いですよね! いかつい顔して座禅組んで。 |
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── | 眉毛ボーンですよ。 |
そう! あの大師さまが、だるまに変わる。 |
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── | 日本人は、むかしから、 キャラ化するのが好きなのかもしれないですよ。 天狗なんかもけっこうね。 |
天狗もプリティになってますね。 河童とか妖怪みたいなのも、 かわいくなっちゃってますよね。 |
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── | ああいう神様に近い 精霊のような存在は、 「畏れ」を感じていたはずなのに。 本当に見える人は限られているような、 特別なものですよね。 |
だるま市は高崎ですね。 なぜ群馬がだるま? |
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── | 「天明の飢饉の折、達磨寺の住職が 人々を救うためにだるまを作って 売らせたのが始まり」だそうです。 必死さはちがうかもしれませんが、 ゆるキャラで町おこし、につながる 思いきったビジネスのアイデアを感じます。 大師本人も、よもや後年異国の地で 自分がこんなふうにキャラ化されているとは 思いもよらなかったことでしょう。 |
こんなに真ん丸に‥‥。 |
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── | あっ!「達磨大師は壁に向かって 九年の座禅を行ったときに 手足が腐ってしまったという伝説がある」。 |
こわいです。 |
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── | 「ここから手足のない置物が作られた」という説も。 もとはちょっと怖いものがありますね。 |
シリアスなものが! |
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それが、なぜだか、かわいくなってますね。 |
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── | かわいくなっちゃいましたね。 不思議ですね。 |
私たち日本人の感覚が怖い(笑)。 |
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── | 「という説も」ということですけれどね。 |
日本人ってそういうつらい話とかを ユーモアに転換するところがあるんですよ。 |
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── | じつは、一回ちゃんと 買いに行こうと思っている だるまがあるんですよ。 山梨の、甲斐張子かな、 「親子だるま」っていうのが あって、すごくかわいいんです。 |
カンガルーっぽいだるまですよね。 |
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── | そう! 父子なんですよ、しかも。 ヒゲ生えてるから。 でもこどももヒゲがあるんですよ。 |
あらあ~。 (画像を検索して) あ、かわいい~~! 衣装が白いとこもいいですね。 |
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── | ぜひ山梨に買いに行きたいと 思いつつも、なかなかチャンスがなく。 |
しかし、ほんとうに達磨さんも こんなことになるとはね‥‥。 |
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── | さて次回は「雞始乳 (にわとり はじめて とやに つく)」です。 1月30日にお会いしましょう! |
2013-01-25-FRI |