── | 「草木萌動」。 もうこれは読んで字のごとしですね。 |
「萌」えてますものね。 |
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── | 新しい命がいっせいに芽生える季節 ということでございますね。 そんななか、「蛤」! 多くの貝の旬は春ですからね。 |
これもまたお雛様っぽくって。 |
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あ、確かに! 雛祭りっぽいですね。 桃、菜の花、蛤。 |
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── | 蛤はおいしいですねえ。 |
おいしいですねえー。 三重県の桑名! 立派ですよね。碁石にするようなやつね! |
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はいはい、ありますよね。 |
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── | 「貝合わせ」とか、 そんな雅なお遊びはしたことが ございませんけれども。 あれは、トランプの神経衰弱のようなものですね。 |
あれ、嫁入り道具なんですよね、 お公家さんの。 |
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── | 調べました。 「蛤は、同一個体のもの以外は 絶対に二枚の貝が合わないという個性があるので 夫婦が仲がいいという象徴」である、と。 |
なるほどね! ほうほう。 他と合わん、と。 |
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── | ですから婚礼に用いられたわけですね。 |
そういえば婚礼に 蛤のお吸い物を出すようにと発案したのは 質素倹約の徳川吉宗だったと聞きました。 |
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── | 調べてみましょう。『飲食事典』に‥‥ ありましたありました。 ざっくり言いますね。 貝合わせは幼少女の玩具にしたのは 平安朝時代からで源氏物語にも載っているそうです。 さらに一歩、結婚式の献立に 蛤の吸い物を不可欠と定めたのは 江戸時代、享保以降、 将軍八代吉宗自信の発意だと 『名君享保録』に記されている、と。 全国的に分布して生産が豊富だから、 貧富の差別なく共し得るのと 陰暦の十月はいわゆる神無月で 出雲に集まった諸神の間に 縁結びが評議されるという古伝説から 今も陽暦の十一月は婚礼月としての 遺風を存し、 あたかも時雨蛤の季節でもあるから いかにも名君らしい合理的な 善巧方便と言われている、とあります。 つまりそんなに当時は バカ高い食材じゃなくて、 全国的に分布して生産が豊富だったんですね。 いまは高級食材なのに! |
蛤って、格が高い貝な気がしますものね。 |
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貝で一番エライ感じがしますよね。 |
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── | 銚子に遊びに行ったら 大浅蜊っていうのがあって、 おいしいんですけど おなじおいしいでも、 蛤とはまったく違うんです。 蛤は「ものすごく」おいしいと思います。 |
京都はね、 元旦にも蛤のお吸い物をいただきます。 |
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── | また、なーんでこう京都は。 三が日に尾頭付きをにらむ、って おっしゃってたじゃないですか。 |
あ、そうそうそう(笑)。 |
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── | 蛤も? |
そうなんです。 だから京都の人には蛤って 正月のイメージがあるんですよ。 京都の人と飲むとき、 蛤のお吸い物の味が出てくると なんだか盛り上がります。 |
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めでたい記憶が呼び起こされるんですね。 |
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── | 寿いだ感じが。 |
食感もいいですしね、 独特の出汁というか、 エキスがいいですよね。 |
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── | そうそう、すごくおいしいパスタがございまして。 蛤の蛤たるおいしさを台無しにするほどの美味です。 蛤と浅蜊と蜆をいっぺんに蒸してソースにします。 |
へえー! |
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ほおー! |
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── | にんにく、とうがらし、オリーブオイル、 そしてそれら3種の貝。 これでパスタを和えますと 大変おいしいんですが、 何が何やら! |
3種類の二枚貝をいっぺんに。 そりゃ、すごい! |
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── | おいしいですよ。しかもできれば むき身にすると食べやすいです。 と、グルメ自慢はさておき、 旬の野菜は「山独活(やまうど)」です。 独活、おいしいですよね。 酢味噌和え! |
うん。大好きです、酢味噌和え。 |
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── | 「独活の大木」とも言いますが。 |
よく言いますよね。 |
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── | 「役に立たず、 図体ばかり大きな男のこと」。 |
独活って役に立たないんですかね? |
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でも食べますからねえ。 |
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食べますよねえ。 |
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── | あ、「生長しすぎた独活は食用に適さず」。 |
ああー! そういうことですか。 |
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── | 竹とは大違いだと。竹は建材になるけれど、 生長しすぎる独活は何にもならないんだそうです。 |
なるほど。 |
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── | 「地上部分が20センチを越えると 山菜としての価値はなくなってしまう」。 じゃ、相当柔らかい時に、 地面の中にいる時に サクッと掘り出さないといけない。 それも春らしいですね。 |
独活も大人になってからですよね、 おいしいと思ったのは。 |
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あの苦みがね! |
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こどもで好きな食べ物が 独活とか言ったら、 どうかしてますもんね(笑)。 |
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かなりすごいですよ。 |
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食べ方として、ほんとに‥‥、 |
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だいたい酒の肴。 |
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酒の肴ですよねえ! |
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── | 弊社で若い女子が 「独活を食べたことがない」 と言っておどろきました。 |
あら、では年長のものの義務として 居酒屋にお連れしましょうよ。 |
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── | ぜひそういたしましょう。 さて次回は「蟄虫啓戸 (すごもり むし とを ひらく)」 3月5日にお会いしましょう! |
2013-02-28-THU |