── | 二十四節気ではもう「春分」が終わって、 「清明」になるんですね。 「まさに天地万物が清らかな 明るさに輝いている様」! そして、七十二候は「玄鳥至」です。 ツバメという字は、 燕(つばくろ)ではなく、 玄人(くろうと)の玄、と書くという。 |
そうなんです。 「くろいとり」なんですね。 黒いからですね。 |
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── | あ、玄人の「くろ」って 黒いって意味ですか。 |
はい。「玄武」と同じですね。 「玄鳥至」の対になっているのが 「玄鳥去(つばめ さる)」。 九月のあたりですね。 そして「玄鳥至」のあとに 「鴻鴈北(こうがん かえる)」がありますね。 |
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「花よりも団子やありて帰る雁」 と、松永貞徳が句に詠んでいますね。 |
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── | なるほど。 燕が来るのと、雁が帰るのはほぼ一緒、と。 |
そういうことでございます。 |
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入れ替え制ですか。 |
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はい。 |
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── | さあ、そんな季節の旬は 「栄螺(さざえ)」でございま~す! |
まるで『サザエさん』みたいに言いますね(笑)。 栄螺は先端のところまで取りづらい。 途中で切れちゃうんですよね。 |
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わたくし実は苦手なんでございます。 頭痛くなっちゃうの。苦いとこ食べると。 |
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あ、食べるのが苦手なのではなく。 おいしいのに。 |
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おいしいんだけど、 なぜだか頭が痛くなっちゃう。 なぜですかね? ま、日本酒が進みすぎているっていう 可能性もありますけど(笑)。 |
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── | そっちじゃないですかねえ。 |
でも栄螺ってあんまり季節を 意識したことってなかったなあ。 |
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こどもの頃、 栄螺のフタの部分を集めていたのを 思いだしました。 |
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── | ふ、ふつう、世代的には、 コーラの裏のランボルギーニのやつとか。 |
ありましたねえ。 スーパーカーのイラストが印刷された王冠。 |
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── | そういうのをみんな集めてましたよ。 京おとこさんは、なぜ栄螺を‥‥(笑)。 |
なんか好きだったんですよ。 |
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── | 京都では栄螺を? |
食べますねえ。 |
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── | でも栄螺ってそんなに家で食べるもの? |
うちはおじいちゃんが酒飲みで 栄螺をよく食ってたんです。 |
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おしゃれ! |
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── | それでフタを集めてたんだ。 |
網に乗せて焼いて、 苦いところがうまいって言ってました。 |
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── | 苦いところ、うまいっす。 ぼく、なんでも パスタにしちゃうんですけど。 |
これも? |
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栄螺のパスタ。 |
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── | 肝を大蒜と一緒にソースにして、 身は刻んで最後にさっと。 |
おお、いいですねえ。 |
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── | そして季節の野菜は「蕨」(わらび)ですね。 野菜? 蕨って野菜? |
山菜ですかね。 自然に生えていますしね。 |
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蕨といえば「蕨餅」でしょう、やっぱり! |
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── | あ、意外。そっち行きますか。 蕨からでんぷんが出るとは驚きですよね。 |
根なんですよ。 |
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── | 根か! |
たしかに蕨餅は春のイメージですよね。 |
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── | 季節ものを扱う和菓子屋は3月いっぱいで 売るのをやめちゃうんじゃないですかね。 でも、よく「蕨」から デザートを作りましたよね、昔の人。 そもそもあく抜きをしなければいけない ということも含めて面倒なのに。 |
やっぱり根っこに注目をするというのは 今ほど食糧事情がよろしくなかったからじゃないでしょうか。 凶作のときの農家の非常食だったとも。 |
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── | なるほど。 |
いっぽうで醍醐天皇は好物だったそうですし。 古いものなんですね。 |
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── | 蕨は餅にしてもいいし、 若芽をおひたしにしてもおいしいし。 ちょっとヌメッとした‥‥。 |
そそそそ。ぬるっ。 |
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── | あれ、うまいんだ~。 |
つるりん! |
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── | いいですよね。 そしてこの季節は「新じゃがいも」も出ますね。 皮が薄いから ちゃっちゃと調理して、 皮ごといただいたりしますよね。 |
そうですね。 丸揚げもおいしいですね。 |
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おいしい。 最近、じゃがいもの品種も いろいろ出てますよね。 |
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── | 何十種類です。 覚えきれません。 「キタアカリ」はわかるけど。 |
あ、キタアカリね! |
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── | 最初に食べたとき、本当に感動しました。 |
うちは「インカのめざめ」。 |
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── | あれもおいしいですね! そのふたつがだいぶ来ましたね。 昔は「男爵」と「メークイン」 だけだったのに。 |
そうそうそう! 男爵とメークインだけだった時代が 懐かしいくらいに思えますよね。 |
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── | 今はさらに細かい品種が いっぱいあって、 けっこう全部うまいですよ。 |
あれは日本で開発されているんですかね。 それともペルーから? |
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── | 北海道など、国内の農家のみなさんの努力も あってのことじゃないでしょうか。 インカのめざめは原種へのリスペクトから ネーミングされた感じがしますよね。 インカ帝国ですからね。そもそも。 つまり、原産地は南アメリカ。 最初に食用したのはインカ族。 |
で、インカのめざめなんですか。 |
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── | じゃないでしょうかねえ。 |
現代の生産者にも 青木昆陽的な人がいるんでしょうね。 |
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うん! |
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── | じゃがいも界はそういうブームなのかも しれないですよ。 ちなみに「我が国への伝来は慶長三年(1598年)。 ジャワからオランダ人が持ってきた」と、 『飲食事典』にありますね。 |
「ジャガタラ・イモ」から 「じゃがいも」になったんですね。 |
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── | ジャガタラ! じゃがたら! 江戸アケミ! ‥‥って、わかる人すくないですよね。 |
(笑)じゃがいもをたくさん食べたという記録は あんまり江戸時代の料理本にないような気がします。 そんなに一般化しなかったんですね。 やっぱり「甘藷」の方が。 薩摩芋の方が。 |
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── | 「甘藷の方が早く普及し 以前に渡ったじゃがいもは 明治に至るまであまり顧みられず」。 甘い方が人気があったんですね。 今はじゃがいもも すっかり和食に溶け込みました。 うまいですよね。 |
その通りでございます。 おいしいです。 |
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── | 「甘藷が適しない北海道で その後急速に発達した」と。 |
それで北海道なんですね。 |
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ヨーロッパも貧しい時代に ひとびとを飢饉から救ったのは じゃがいもだったんですものね。 |
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── | そうですよ。 南米との交易があったからこそ。 中南米の歴史の本を読むと、 土地の文化を壊したという点においては なかなかうなずけないものがありますが、 食文化的には、こうしてじゃがいもが広まったりしたのは あの時代があったからなんですよね。 |
日本は確か青木昆陽先生が 飢饉を救うために江戸で栽培をいろいろ奨励したんですよ。 |
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── | さて、季節のたのしみは‥‥ 「十三詣(じゅうさんまいり)」? これは我々はまったくわからないですね。 パスしますか? |
それはまずいですよ! 京都の人間にはーっ!! |
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── | ええええー! スルーしようかと思ったのに。 |
いやいやいや! 必ず行くんですよ、これ。 |
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そうなんだ?! |
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── | 「13歳になったこどもがお参りをして 知恵や福徳を授けてもらう。 『知恵貰い』ともいわる」と。 「こどもたちは 和紙に好きな漢字をひとつ書いて 『お身代わり』として捧げ、 祈?を受けます」と。 京おとこさんは、何て書いたんですか? |
何を書いたかなあ。 |
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── | まさか「女」って書いたんじゃないでしょうね。 |
漢字一文字(笑)。 |
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── | そういう13歳もいそうですね。 中1ですよ。 ちょっとふざける子もいる。 |
(笑)ぼくはそこまで 受けを狙ったりしない子どもでしたよ。 でも「愛」とか書く子も、いたのかも? ぼくは確か平和の和と書きました。 自分の名前に和の字があるから。 でも十三詣のポイントは 帰りに嵐山の渡月橋を渡る時なんですよ。 そこはもう、親から周りから さんざんプレッシャーをかけられるところで、 そこで振り返ると せっかく授けてもらった知恵が なくなるといわれているんですよ。 |
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── | ひゃあ! たいへん! |
わざと後ろから声かける人とかいそうですものね。 |
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いるんです、いるんです。 なにしろ「いけず」ですから(笑)。 そう。13歳って、タイミングとして 小学校から中学に上がる時なんですよ。 同級生がみんな行くから、 必ず知り合いに会うじゃないですか。 「おーい」とか言われて振り返っちゃうんです。 渡月橋のワナがあるわけですよ。 |
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── | のちに大学落ちた時に あん時振り返ったからだ~! なんて(笑)。 |
しかもこれ、同じ日ですか、みんな。 4月13日に? |
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そうですね。平日だとどうだったかな‥‥。 |
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その日の渡月橋は 13歳のこどもだらけ(笑)。 |
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今年は4月13日が土曜日だから きっと混雑しますよね。 渡月橋で振り返るこどもが続出する! |
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── | 「ああ、振り返っちゃった!」 |
おもしろい(笑)。 |
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これ関西だけのものなんですね。 それを知ってびっくりしました。 |
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── | 「関東では茨城県那珂郡東海村を含む北部で」 ちょっとやっているみたいですよ。 |
なんで茨城なんでしょうね? |
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そうかあ。 |
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── | 不満そう(笑)。 |
ちょっとイヤな京都人風に言うとですね、 五山の送り火も 地方で展開されているじゃないですか。 |
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── | いいじゃないですかあー。 やったってえー。 |
全国にね、ナントカ銀座っていう 商店街があるみたいなものですよ(笑)。 |
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どうせなら十三詣も京都だけの方が よかったなっていう気もします‥‥。 |
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── | いけずーっ! ‥‥というところで、今回はこのへんで。 次回は4月10日、 「鴻鴈北(こうがん かえる)」で お会いしましょう! |
2013-04-05-FRI |