七十二候【第七十一候 水沢腹堅 さわみず こおりつめる】
四季【冬 ふゆ】
二十四節気【大寒 だいかん】
西暦【2013年1月25日~1月29日】
沢の水に厚く氷が張っている、そんな風景は、
日本人に一年のうちでいちばん寒い季節にいることを
思い起こさせてくれます。
ニュースで、最低気温の記録が聞かれるのも
この時節が多いようです。
とはいえ、日も少しずつ長くなってきました。
春の足音も遠からず。
あとは暖かくなるのを待つばかりです。
── 二十四節気ではもう「春分」が終わって、
「清明」になるんですね。
「まさに天地万物が清らかな
 明るさに輝いている様」!
そして、七十二候は「玄鳥至」です。
ツバメという字は、
燕(つばくろ)ではなく、
玄人(くろうと)の玄、と書くという。
あずま女 そうなんです。
「くろいとり」なんですね。
黒いからですね。
── あ、玄人の「くろ」って
黒いって意味ですか。
あずま女 はい。「玄武」と同じですね。
「玄鳥至」の対になっているのが
「玄鳥去(つばめ さる)」
九月のあたりですね。
そして「玄鳥至」のあとに
「鴻鴈北(こうがん かえる)」がありますね。
京おとこ 「花よりも団子やありて帰る雁」
と、松永貞徳が句に詠んでいますね。
── なるほど。
燕が来るのと、雁が帰るのはほぼ一緒、と。
あずま女 そういうことでございます。
京おとこ 入れ替え制ですか。
あずま女 はい。
── さあ、そんな季節の旬は
「栄螺(さざえ)」でございま~す!
京おとこ まるで『サザエさん』みたいに言いますね(笑)。
栄螺は先端のところまで取りづらい。
途中で切れちゃうんですよね。
あずま女 わたくし実は苦手なんでございます。
頭痛くなっちゃうの。苦いとこ食べると。
京おとこ あ、食べるのが苦手なのではなく。
おいしいのに。
あずま女 おいしいんだけど、
なぜだか頭が痛くなっちゃう。
なぜですかね?
ま、日本酒が進みすぎているっていう
可能性もありますけど(笑)。
── そっちじゃないですかねえ。
あずま女 でも栄螺ってあんまり季節を
意識したことってなかったなあ。
京おとこ こどもの頃、
栄螺のフタの部分を集めていたのを
思いだしました。


── ふ、ふつう、世代的には、
コーラの裏のランボルギーニのやつとか。
京おとこ ありましたねえ。
スーパーカーのイラストが印刷された王冠。
── そういうのをみんな集めてましたよ。
京おとこさんは、なぜ栄螺を‥‥(笑)。
京おとこ なんか好きだったんですよ。
── 京都では栄螺を?
京おとこ 食べますねえ。
── でも栄螺ってそんなに家で食べるもの?
京おとこ うちはおじいちゃんが酒飲みで
栄螺をよく食ってたんです。
あずま女 おしゃれ!
── それでフタを集めてたんだ。
京おとこ 網に乗せて焼いて、
苦いところがうまいって言ってました。
── 苦いところ、うまいっす。
ぼく、なんでも
パスタにしちゃうんですけど。
あずま女 これも?
京おとこ 栄螺のパスタ。
── 肝を大蒜と一緒にソースにして、
身は刻んで最後にさっと。
あずま女 おお、いいですねえ。
── そして季節の野菜は「蕨」(わらび)ですね。
野菜? 蕨って野菜?
あずま女 山菜ですかね。
自然に生えていますしね。
京おとこ 蕨といえば「蕨餅」でしょう、やっぱり!
── あ、意外。そっち行きますか。
蕨からでんぷんが出るとは驚きですよね。
京おとこ 根なんですよ。
── 根か!
あずま女 たしかに蕨餅は春のイメージですよね。
── 季節ものを扱う和菓子屋は3月いっぱいで
売るのをやめちゃうんじゃないですかね。
でも、よく「蕨」から
デザートを作りましたよね、昔の人。
そもそもあく抜きをしなければいけない
ということも含めて面倒なのに。
あずま女 やっぱり根っこに注目をするというのは
今ほど食糧事情がよろしくなかったからじゃないでしょうか。
凶作のときの農家の非常食だったとも。
── なるほど。
京おとこ いっぽうで醍醐天皇は好物だったそうですし。
古いものなんですね。
── 蕨は餅にしてもいいし、
若芽をおひたしにしてもおいしいし。
ちょっとヌメッとした‥‥。
あずま女 そそそそ。ぬるっ。
── あれ、うまいんだ~。
あずま女 つるりん!
── いいですよね。
そしてこの季節は「新じゃがいも」も出ますね。
皮が薄いから
ちゃっちゃと調理して、
皮ごといただいたりしますよね。
あずま女 そうですね。
丸揚げもおいしいですね。
京おとこ おいしい。
最近、じゃがいもの品種も
いろいろ出てますよね。
── 何十種類です。
覚えきれません。
「キタアカリ」はわかるけど。
京おとこ あ、キタアカリね!
── 最初に食べたとき、本当に感動しました。
京おとこ うちは「インカのめざめ」。
── あれもおいしいですね!
そのふたつがだいぶ来ましたね。
昔は「男爵」と「メークイン」
だけだったのに。
京おとこ そうそうそう!
男爵とメークインだけだった時代が
懐かしいくらいに思えますよね。
── 今はさらに細かい品種が
いっぱいあって、
けっこう全部うまいですよ。
あずま女 あれは日本で開発されているんですかね。
それともペルーから?
── 北海道など、国内の農家のみなさんの努力も
あってのことじゃないでしょうか。
インカのめざめは原種へのリスペクトから
ネーミングされた感じがしますよね。
インカ帝国ですからね。そもそも。
つまり、原産地は南アメリカ。
最初に食用したのはインカ族。
京おとこ で、インカのめざめなんですか。
── じゃないでしょうかねえ。
京おとこ 現代の生産者にも
青木昆陽的な人がいるんでしょうね。
あずま女 うん!
── じゃがいも界はそういうブームなのかも
しれないですよ。
ちなみに「我が国への伝来は慶長三年(1598年)。
ジャワからオランダ人が持ってきた」と、
『飲食事典』にありますね。
あずま女 「ジャガタラ・イモ」から
「じゃがいも」になったんですね。
── ジャガタラ!
じゃがたら! 江戸アケミ!
‥‥って、わかる人すくないですよね。
あずま女 (笑)じゃがいもをたくさん食べたという記録は
あんまり江戸時代の料理本にないような気がします。
そんなに一般化しなかったんですね。
やっぱり「甘藷」の方が。
薩摩芋の方が。
── 「甘藷の方が早く普及し
 以前に渡ったじゃがいもは
 明治に至るまであまり顧みられず」。
甘い方が人気があったんですね。
今はじゃがいもも
すっかり和食に溶け込みました。
うまいですよね。
あずま女 その通りでございます。
おいしいです。
── 「甘藷が適しない北海道で
 その後急速に発達した」と。
京おとこ それで北海道なんですね。
あずま女 ヨーロッパも貧しい時代に
ひとびとを飢饉から救ったのは
じゃがいもだったんですものね。
── そうですよ。
南米との交易があったからこそ。
中南米の歴史の本を読むと、
土地の文化を壊したという点においては
なかなかうなずけないものがありますが、
食文化的には、こうしてじゃがいもが広まったりしたのは
あの時代があったからなんですよね。
あずま女 日本は確か青木昆陽先生が
飢饉を救うために江戸で栽培をいろいろ奨励したんですよ。
── さて、季節のたのしみは‥‥
「十三詣(じゅうさんまいり)」?
これは我々はまったくわからないですね。
パスしますか?
京おとこ それはまずいですよ!
京都の人間にはーっ!!
── ええええー!
スルーしようかと思ったのに。
京おとこ いやいやいや!
必ず行くんですよ、これ。
あずま女 そうなんだ?!
── 「13歳になったこどもがお参りをして
 知恵や福徳を授けてもらう。
 『知恵貰い』ともいわる」と。
「こどもたちは
 和紙に好きな漢字をひとつ書いて
 『お身代わり』として捧げ、
 祈?を受けます」と。
京おとこさんは、何て書いたんですか?
京おとこ 何を書いたかなあ。
── まさか「女」って書いたんじゃないでしょうね。
あずま女 漢字一文字(笑)。
── そういう13歳もいそうですね。
中1ですよ。
ちょっとふざける子もいる。
京おとこ (笑)ぼくはそこまで
受けを狙ったりしない子どもでしたよ。
でも「愛」とか書く子も、いたのかも?
ぼくは確か平和の和と書きました。
自分の名前に和の字があるから。
でも十三詣のポイントは
帰りに嵐山の渡月橋を渡る時なんですよ。
そこはもう、親から周りから
さんざんプレッシャーをかけられるところで、
そこで振り返ると
せっかく授けてもらった知恵が
なくなるといわれているんですよ。
── ひゃあ! たいへん!
あずま女 わざと後ろから声かける人とかいそうですものね。
京おとこ いるんです、いるんです。
なにしろ「いけず」ですから(笑)。
そう。13歳って、タイミングとして
小学校から中学に上がる時なんですよ。
同級生がみんな行くから、
必ず知り合いに会うじゃないですか。
「おーい」とか言われて振り返っちゃうんです。
渡月橋のワナがあるわけですよ。
── のちに大学落ちた時に
あん時振り返ったからだ~!
なんて(笑)。
あずま女 しかもこれ、同じ日ですか、みんな。
4月13日に?
京おとこ そうですね。平日だとどうだったかな‥‥。
あずま女 その日の渡月橋は
13歳のこどもだらけ(笑)。
京おとこ 今年は4月13日が土曜日だから
きっと混雑しますよね。
渡月橋で振り返るこどもが続出する!
── 「ああ、振り返っちゃった!」
あずま女 おもしろい(笑)。
京おとこ これ関西だけのものなんですね。
それを知ってびっくりしました。
── 「関東では茨城県那珂郡東海村を含む北部で」
ちょっとやっているみたいですよ。
あずま女 なんで茨城なんでしょうね?
京おとこ そうかあ。
── 不満そう(笑)。
京おとこ ちょっとイヤな京都人風に言うとですね、
五山の送り火も
地方で展開されているじゃないですか。
── いいじゃないですかあー。
やったってえー。
あずま女 全国にね、ナントカ銀座っていう
商店街があるみたいなものですよ(笑)。
京おとこ どうせなら十三詣も京都だけの方が
よかったなっていう気もします‥‥。
── いけずーっ!
‥‥というところで、今回はこのへんで。
次回は4月10日、
「鴻鴈北(こうがん かえる)」で
お会いしましょう!
2013-04-05-FRI
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