── | たしかに「菖蒲(しょうぶ)」と 「燕子花(かきつばた)」は 見分けがわかりませんね。 |
わかんないですね。 |
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── | 全然わかりません。 「いずれあやめか燕子花」っていうんだから、 昔の人もわからなかったんですよ。 |
ははは(笑)。 これ真顔で言われたことのある人は そうはいないでしょうね。 |
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── | 「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」とか。 |
あれって、原典はどこから 来ているんですかね。 これあずま女さんなら 知ってそうだなあ。 |
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「いずれあやめか燕子花」は 『太平記』でございますね。 詳細はどうだったかしら。 |
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── | 調べましょう。ええと、 源頼政がヌエ退治で褒美として 「菖蒲前(あやめのまえ)」を賜るにあたって、 同じような美女2人の中から選ぼうとするのだけれど、 どちらも美しくて困った、 というようなことらしいです。 |
なるほど! |
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── | 「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」は 江戸時代の滑稽本洒落本の中に出てくるようですね。 ただはっきりとした由来はわからないと。 流行言葉かもしれないですね。 そういえばフランスでは芍薬と牡丹は 同じ「pivoine」という花だと かわかみじゅんこさんの『パリパリ伝説』に 書いてありました。 そこで調べてみましたが 菖蒲と燕子花も同じ「Iris」でした。 |
うん。やっぱりわからないですよね。 |
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── | はい。ということで、花よりだんご。 食欲にまいりましょう。 「鮎」ですよ! |
この季節はねえ! |
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── | 鮎、友釣り! 鮎はうまいですよねえ。 西瓜のような香り。 苔を食べているからですね。 |
鮎の骨抜きができるようになると 一人前の感じがありますよね。 むずかしいですけど。 |
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── | そんなことないです。天然物は大丈夫ですよ。 |
たしかに天然物はほぐれやすいですよね。 |
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── | 養殖物は抜きにくくて 天然物はすっと抜ける。 だから、うまく抜けなかったら そのせいにすればいいんですよ。 「これは養殖だな!」って。 |
あはは。 魚のせいだと。 |
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── | 「うちで食べてたのは 天然やから」(笑)。 |
なんでそこは関西弁(笑)。 |
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── | あはは。おいしいですよね、鮎! 「唐揚げ、なれずし、飴煮、 酢の物」全部おいしい。 もちろん塩焼きも。 |
やっぱり塩焼きの イメージがありますね。 「蓼酢」で。 |
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── | うちは父が友釣りをやるので シーズンは鮎だらけで もう塩焼きなんかしてられなくて ほとんど唐揚げでした。 |
へえー。 |
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友釣りの仕掛けの方になる 鮎っていうのも 食べられるものなんですか。 |
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── | 食べちゃいますね。 父に訊いてみたところ、 仕掛けの鮎は養殖で、 けっこう丈夫なんだそうです。 さんざん仕事したあとに食べられちゃうんだから なかなか、こういう趣味というものは‥‥。 |
なかなか、ね。 |
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すいません。 なんとなく気になって。 友釣りしたことないものですから。 |
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── | ぼくもないんですよ。 友釣りっていうのは 縄張り意識が強い天然の鮎に向けて よそものの鮎を近づかせると 「コノヤロコノヤロ」って 攻撃してくるんです。 急所の腹をめがけて、背中でアタック。 仕掛けの鮎には、しっぽの先に針をつけてあるので、 そこに、引っかかっちゃうんですね。 ひじょうに難しく、 おもしろい釣りだそうです。 |
シンプルな竿だけですよね。 リールとかついてないんですよね。 |
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── | 竿は木や竹、 最近はカーボンロッドなんかもあるそうですが 「リールをつけるのは邪道でい!」 と父は言ってました。 |
京都は鴨川でよくやっている人、 いますよ、友釣り。 |
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── | そうですよね! |
この時期だと 鴨川で鮎釣りしている人がいると 梅雨だ、夏だっていう気分になります。 |
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── | なるほど。風情がありますね。 鴨川って、あんな都会を流れていても 鮎が泳ぐくらいきれいだからすごいですよねえ。 そういえば鴨川沿いにリッツ・カールトンが 来年できるそうですよ。 |
そうそう。元「ホテルフジタ京都」。 ぼく、生まれたところが あそこのすぐ近くなんですよ。 だから馴染みがあるんですけど、 うちの親父の同級生のお父さんが相場師で、 株で儲けて鴨川沿いに 広大な庭のある個人邸宅を建てたんです。 とにかく庭が立派で! その邸宅を藤田観光が買い取って 「ホテルフジタ京都」にしたんですね。 |
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── | なんとまあ! すばらしい立地ですよね。 |
そうです。 それをリッツ・カールトンが 取り込むのはさすがと思いました。 鴨川沿いの東側の風景もいいですし。 眺めがいいと思いますよ。 |
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── | 泊まってみたーい! でも高いんだろうなー。 |
歩いて飲みに行ったりも できますしね。 河原町二条ですね。 |
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川床がまさに夜。 |
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── | つい先日、京都に行って来たんですけど、 同行者が「かわどこ、かわどこ」って言ってたら 「ゆかです」って(笑)。 いやはや申し訳ない。 |
「ゆかどっさかい~」とかね(笑)。 |
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貴船の方に出るのも? |
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ゆかですね。 |
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── | 貴船は虫が多いですよね。 |
そう。 |
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やっぱりそうなんだ。 写真だと、さも爽やかそうなのに。 |
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── | 風情をかもすにも、ガマンと努力が要りますね。 |
木屋町通沿い出ての鴨川の床も、 先斗町の床も、やっぱり蚊が多いですよ。 |
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水辺ですものね。 |
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── | 暑いですしね、夏。 |
暑いです。 |
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── | おとなの遊びはたいへんですね。 目に涼しいんですけどね。 さて、「マンゴー」です。 |
またいまどき~! |
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── | 知らないかったですよ、 マンゴーなんて、ちっちゃい頃は! |
なかったですよね。 マンゴーは本当にこの何年かで のしましたよね。 |
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今となっては南国なら いつでもあるんじゃないかと。 |
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── | 宮崎産なんか高いですよぉ。 1万円とかしますよ。 |
高いですね! |
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沖縄県の仕事で 沖縄の豊見城(とみしろ)の マンゴー生産者のところへ行ったら 「もともと宮崎じゃなくて うちの方が早かったんだ」と。 沖縄の方が早かったのに宮崎にお株を奪われ、 今では価格差がついちゃって、 宮崎の方が高級になったって 嘆いてらっしゃいましたよ。 |
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ほぉー。 |
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── | あれを宮崎名産として有名にした その手腕はたいしたものですが、 沖縄の人はそんなふうに思ってるんだ。 |
でも、同じ1万円でも 桐箱に入ったのメロンとマンゴーを見ると やっぱりメロンの方がなんとなく ありがたく見えます(笑)。 |
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── | 案外食べるところ少ないし。 種でっかいし。 けっこう食べるの大変です。 |
服に飛ぶとシミがすごいし! |
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── | マンゴーは、ウルシオールに似た マンゴールというかぶれの原因となる 物質が入っているので 漆系にかぶれれる人は注意が必要です。 くちびるが腫れちゃうんじゃないの。 |
ほおほお。 |
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── | でもマンゴープリンは好きです。 |
ああ! |
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── | これはまた大人になってから初めていただき、 たいへん感動いたしましたが、 今時の子は最初っから知ってるんでしょうね。 |
昔なかったものね。 |
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── | 杏仁豆腐はちっちゃい時からあったんですけど。 でも多分ニセ杏仁ですけどね。 |
そうそう。 アーモンドエッセンスで(笑)。 |
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── | 本当の杏仁豆腐はもっとおいしいと 大人になって知りました。 「ほぼ日」の近所に香港の「糖朝」の支店があって けっこういい値段するんですよ。 本場では本当に安いのに‥‥。 さて、季節の草木は「接骨木(にわとこ)」です。 意外なものが! |
接骨木、見たことあるかなあ。 |
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── | 童話とかで聞いたことがあるけど? 十字架の木が接骨木だそうですね。 ユダが首を吊った木も(笑)。 |
あらら。 |
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── | 西洋は不吉な木だそうです。 |
ほおー。 |
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でも花言葉は「同情」「熱意」って、 別のベクトル向いている感じがしますね。 |
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── | 日本では正月飾りなどに使用されるから、 日本ではいいものですね。 |
これがまた『飲食事典』に出てるんです。 「果実は焼酎に漬け」たり、 「浸し物、和え物」にしたり。 |
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── | 接骨木の、実。知らなかった! ところでなぜこの名前かというと 「枝や幹を煎じて水飴状になったものを 骨折の治療の際の湿布薬に 用いたためとされている」そうですよ」。 |
添え木とかにも使えそうですよね(笑)。 怪我した時の。丈夫そう。 |
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十字架にできるくらいですからね。 |
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── | ずいぶんキリスト教社会と 中国、日本とでは 扱いの違う木なんですね。 これが赤い実をつけるのが今頃なんですね。 さ、季節のたのしみは、 「夏越の祓(なごしのはらえ)」でございます。 「大祓」ですね。 大晦日に対応するわけだから 6月の末日のことを「六月晦日」という。 |
茅の輪をくぐりますね。 |
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「茅の輪くぐり」ね。 |
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── | 京都は北野天満宮が有名? |
北野天満宮‥‥。 わりとどこでもありますよ。 東京の神社でもね。 |
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── | 大阪では住吉祭、 東京では台東区の鳥越神社が有名だそうです。 というかこの時期にやるお祭りは全部、 夏越の祓なんだそうです。 |
あと、6月末日というと 「水無月」食べません? |
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── | そんなみやびた習慣、なかったです! |
ええ? 京都だけですか。 |
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あ! 和菓子ですね、三角の。 あれは京都だけですよ。 |
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でへえ? |
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東京には水無月はないですもん。 |
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あ、そうなんですか。 それは初めて知った。 |
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大人になるまで知らなかったです。 |
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あ、そうですか。 |
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なんでしたっけ、 三角形のウイロウの上に小豆でしたっけ。 |
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そうです。 |
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パンの「ロシア」みたいな感じ? |
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── | それは、「シベリア」では。 |
シベリア! ロシアじゃないわ(笑)。 |
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全国でやってるものだと思っていました。 |
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── | もう京都の方はそういうんだから。 |
あはははは! そーうですかぁ。 あと、6月30日に お風呂入りませんでした? |
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── | 風呂は毎日入りますよ!! |
(笑)やっぱり特別に清めるんですか。 |
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── | 何風呂なんですか。 |
水無月食べて、何かやった気がするんです。 |
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そうでしたか。昔の人は忙しいよね。 半年毎にお清めしてなきゃいけない。 |
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── | やっぱりほら、いまとちがって、 死んじゃうから‥‥。 いろんな意味でお清めが 大事だったんでしょうね。 |
半年生きのびて、ありがとう、っていう感謝を。 |
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── | あ、調べたら風呂もありました。 「無垢塩草という3cmほどの海藻を 和紙で巻いたものをお風呂に入れる」。 |
なんだそれ!? |
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── | 神社でくれるみたいですよ、それを。 草を和紙で巻いたものをいただけるので それを入れる。おまじないですね。 ということで、ありがとうございました。 次回は「半夏生(はんげ しょうず)」。 7月1日にお会いしましょう。 |
2013-06-26-WED |