紅色の染料や食用油をとるために栽培されるベニバナは、 古代エジプト時代から染料として利用されていたようです。 日本でも、『万葉集』にすでに 「末摘花」としてその名が見られます。 この頃に橙色の花をつけはじめ、 日が経つにつれ花の色は濃い紅に変わります。 一面のベニバナ畑は夏の風物詩ともいえるでしょう。
── たしかに「菖蒲(しょうぶ)」と
「燕子花(かきつばた)」は
見分けがわかりませんね。


京おとこ わかんないですね。
── 全然わかりません。
「いずれあやめか燕子花」っていうんだから、
昔の人もわからなかったんですよ。
京おとこ ははは(笑)。
これ真顔で言われたことのある人は
そうはいないでしょうね。
── 「立てば芍薬 座れば牡丹
 歩く姿は百合の花」とか。
京おとこ あれって、原典はどこから
来ているんですかね。
これあずま女さんなら
知ってそうだなあ。
あすま女 「いずれあやめか燕子花」は
『太平記』でございますね。
詳細はどうだったかしら。
── 調べましょう。ええと、
源頼政がヌエ退治で褒美として
「菖蒲前(あやめのまえ)」を賜るにあたって、
同じような美女2人の中から選ぼうとするのだけれど、
どちらも美しくて困った、
というようなことらしいです。
京おとこ なるほど!
── 「立てば芍薬 座れば牡丹
 歩く姿は百合の花」は
江戸時代の滑稽本洒落本の中に出てくるようですね。
ただはっきりとした由来はわからないと。
流行言葉かもしれないですね。
そういえばフランスでは芍薬と牡丹は
同じ「pivoine」という花だと
かわかみじゅんこさんの『パリパリ伝説』に
書いてありました。
そこで調べてみましたが
菖蒲と燕子花も同じ「Iris」でした。
京おとこ うん。やっぱりわからないですよね。
── はい。ということで、花よりだんご。
食欲にまいりましょう。
「鮎」ですよ!


京おとこ この季節はねえ!
── 鮎、友釣り!
鮎はうまいですよねえ。
西瓜のような香り。
苔を食べているからですね。
京おとこ 鮎の骨抜きができるようになると
一人前の感じがありますよね。
むずかしいですけど。
── そんなことないです。天然物は大丈夫ですよ。
京おとこ たしかに天然物はほぐれやすいですよね。
── 養殖物は抜きにくくて
天然物はすっと抜ける。
だから、うまく抜けなかったら
そのせいにすればいいんですよ。
「これは養殖だな!」って。
京おとこ あはは。
魚のせいだと。
── 「うちで食べてたのは
 天然やから」(笑)。
京おとこ なんでそこは関西弁(笑)。
── あはは。おいしいですよね、鮎!
「唐揚げ、なれずし、飴煮、
 酢の物」全部おいしい。
もちろん塩焼きも。
京おとこ やっぱり塩焼きの
イメージがありますね。
「蓼酢」で。
── うちは父が友釣りをやるので
シーズンは鮎だらけで
もう塩焼きなんかしてられなくて
ほとんど唐揚げでした。
京おとこ へえー。
京おとこ 友釣りの仕掛けの方になる
鮎っていうのも
食べられるものなんですか。
── 食べちゃいますね。
父に訊いてみたところ、
仕掛けの鮎は養殖で、
けっこう丈夫なんだそうです。
さんざん仕事したあとに食べられちゃうんだから
なかなか、こういう趣味というものは‥‥。
あすま女 なかなか、ね。
京おとこ すいません。
なんとなく気になって。
友釣りしたことないものですから。
── ぼくもないんですよ。
友釣りっていうのは
縄張り意識が強い天然の鮎に向けて
よそものの鮎を近づかせると
「コノヤロコノヤロ」って
攻撃してくるんです。
急所の腹をめがけて、背中でアタック。
仕掛けの鮎には、しっぽの先に針をつけてあるので、
そこに、引っかかっちゃうんですね。
ひじょうに難しく、
おもしろい釣りだそうです。
京おとこ シンプルな竿だけですよね。
リールとかついてないんですよね。
── 竿は木や竹、
最近はカーボンロッドなんかもあるそうですが
「リールをつけるのは邪道でい!」
と父は言ってました。
京おとこ 京都は鴨川でよくやっている人、
いますよ、友釣り。
── そうですよね!
京おとこ この時期だと
鴨川で鮎釣りしている人がいると
梅雨だ、夏だっていう気分になります。
── なるほど。風情がありますね。
鴨川って、あんな都会を流れていても
鮎が泳ぐくらいきれいだからすごいですよねえ。
そういえば鴨川沿いにリッツ・カールトンが
来年できるそうですよ。
京おとこ そうそう。元「ホテルフジタ京都」。
ぼく、生まれたところが
あそこのすぐ近くなんですよ。
だから馴染みがあるんですけど、
うちの親父の同級生のお父さんが相場師で、
株で儲けて鴨川沿いに
広大な庭のある個人邸宅を建てたんです。
とにかく庭が立派で!
その邸宅を藤田観光が買い取って
「ホテルフジタ京都」にしたんですね。
── なんとまあ!
すばらしい立地ですよね。
京おとこ そうです。
それをリッツ・カールトンが
取り込むのはさすがと思いました。
鴨川沿いの東側の風景もいいですし。
眺めがいいと思いますよ。
── 泊まってみたーい!
でも高いんだろうなー。
京おとこ 歩いて飲みに行ったりも
できますしね。
河原町二条ですね。
あすま女 川床がまさに夜。
── つい先日、京都に行って来たんですけど、
同行者が「かわどこ、かわどこ」って言ってたら
「ゆかです」って(笑)。
いやはや申し訳ない。
京おとこ 「ゆかどっさかい~」とかね(笑)。
あすま女 貴船の方に出るのも?
京おとこ ゆかですね。
── 貴船は虫が多いですよね。
京おとこ そう。
あすま女 やっぱりそうなんだ。
写真だと、さも爽やかそうなのに。
── 風情をかもすにも、ガマンと努力が要りますね。
京おとこ 木屋町通沿い出ての鴨川の床も、
先斗町の床も、やっぱり蚊が多いですよ。
あすま女 水辺ですものね。
── 暑いですしね、夏。
京おとこ 暑いです。
── おとなの遊びはたいへんですね。
目に涼しいんですけどね。
さて、「マンゴー」です。
あすま女 またいまどき~!
── 知らないかったですよ、
マンゴーなんて、ちっちゃい頃は!
京おとこ なかったですよね。
マンゴーは本当にこの何年かで
のしましたよね。
あすま女 今となっては南国なら
いつでもあるんじゃないかと。
── 宮崎産なんか高いですよぉ。
1万円とかしますよ。
あすま女 高いですね!
京おとこ 沖縄県の仕事で
沖縄の豊見城(とみしろ)の
マンゴー生産者のところへ行ったら
「もともと宮崎じゃなくて
 うちの方が早かったんだ」と。
沖縄の方が早かったのに宮崎にお株を奪われ、
今では価格差がついちゃって、
宮崎の方が高級になったって
嘆いてらっしゃいましたよ。
あすま女 ほぉー。
── あれを宮崎名産として有名にした
その手腕はたいしたものですが、
沖縄の人はそんなふうに思ってるんだ。
あすま女 でも、同じ1万円でも
桐箱に入ったのメロンとマンゴーを見ると
やっぱりメロンの方がなんとなく
ありがたく見えます(笑)。
── 案外食べるところ少ないし。
種でっかいし。
けっこう食べるの大変です。
あすま女 服に飛ぶとシミがすごいし!
── マンゴーは、ウルシオールに似た
マンゴールというかぶれの原因となる
物質が入っているので
漆系にかぶれれる人は注意が必要です。
くちびるが腫れちゃうんじゃないの。
あすま女 ほおほお。
── でもマンゴープリンは好きです。
京おとこ ああ!
── これはまた大人になってから初めていただき、
たいへん感動いたしましたが、
今時の子は最初っから知ってるんでしょうね。
あすま女 昔なかったものね。
── 杏仁豆腐はちっちゃい時からあったんですけど。
でも多分ニセ杏仁ですけどね。
あすま女 そうそう。
アーモンドエッセンスで(笑)。
── 本当の杏仁豆腐はもっとおいしいと
大人になって知りました。
「ほぼ日」の近所に香港の「糖朝」の支店があって
けっこういい値段するんですよ。
本場では本当に安いのに‥‥。
さて、季節の草木は「接骨木(にわとこ)」です。
意外なものが!
あすま女 接骨木、見たことあるかなあ。


── 童話とかで聞いたことがあるけど?
十字架の木が接骨木だそうですね。
ユダが首を吊った木も(笑)。
あすま女 あらら。
── 西洋は不吉な木だそうです。
あすま女 ほおー。
京おとこ でも花言葉は「同情」「熱意」って、
別のベクトル向いている感じがしますね。
── 日本では正月飾りなどに使用されるから、
日本ではいいものですね。
あすま女 これがまた『飲食事典』に出てるんです。
「果実は焼酎に漬け」たり、
「浸し物、和え物」にしたり。
── 接骨木の、実。知らなかった!
ところでなぜこの名前かというと
「枝や幹を煎じて水飴状になったものを
 骨折の治療の際の湿布薬に
 用いたためとされている」そうですよ」。
京おとこ 添え木とかにも使えそうですよね(笑)。
怪我した時の。丈夫そう。
あすま女 十字架にできるくらいですからね。
── ずいぶんキリスト教社会と
中国、日本とでは
扱いの違う木なんですね。
これが赤い実をつけるのが今頃なんですね。
さ、季節のたのしみは、
「夏越の祓(なごしのはらえ)」でございます。
「大祓」ですね。
大晦日に対応するわけだから
6月の末日のことを「六月晦日」という。
あすま女 茅の輪をくぐりますね。
京おとこ 「茅の輪くぐり」ね。
── 京都は北野天満宮が有名?
京おとこ 北野天満宮‥‥。
わりとどこでもありますよ。
東京の神社でもね。
── 大阪では住吉祭、
東京では台東区の鳥越神社が有名だそうです。
というかこの時期にやるお祭りは全部、
夏越の祓なんだそうです。
京おとこ あと、6月末日というと
「水無月」食べません?
── そんなみやびた習慣、なかったです!
京おとこ ええ? 京都だけですか。
あすま女 あ! 和菓子ですね、三角の。
あれは京都だけですよ。
京おとこ でへえ?
あすま女 東京には水無月はないですもん。
京おとこ あ、そうなんですか。
それは初めて知った。
あすま女 大人になるまで知らなかったです。
京おとこ あ、そうですか。
あすま女 なんでしたっけ、
三角形のウイロウの上に小豆でしたっけ。
京おとこ そうです。
あすま女 パンの「ロシア」みたいな感じ?
── それは、「シベリア」では。
あすま女 シベリア! ロシアじゃないわ(笑)。
京おとこ 全国でやってるものだと思っていました。
── もう京都の方はそういうんだから。
京おとこ あはははは! そーうですかぁ。
あと、6月30日に
お風呂入りませんでした?
── 風呂は毎日入りますよ!!
あすま女 (笑)やっぱり特別に清めるんですか。
── 何風呂なんですか。
京おとこ 水無月食べて、何かやった気がするんです。
あすま女 そうでしたか。昔の人は忙しいよね。
半年毎にお清めしてなきゃいけない。
── やっぱりほら、いまとちがって、
死んじゃうから‥‥。
いろんな意味でお清めが
大事だったんでしょうね。
あすま女 半年生きのびて、ありがとう、っていう感謝を。
── あ、調べたら風呂もありました。
「無垢塩草という3cmほどの海藻を
 和紙で巻いたものをお風呂に入れる」。
あすま女 なんだそれ!?
── 神社でくれるみたいですよ、それを。
草を和紙で巻いたものをいただけるので
それを入れる。おまじないですね。
ということで、ありがとうございました。
次回は「半夏生(はんげ しょうず)」。
7月1日にお会いしましょう。
2013-06-26-WED
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