日本には72もの季節があるって、ご存じでした?春夏秋冬が「四季」。立春や夏至、秋分に大寒などが「二十四節気」。ここまでは日常的に使われるのですけれど、さらにこまかく分けたものを「七十二候」って言うんです。365÷72‥‥ということはつまり、季節ってだいたい5日にいちどめぐってくるんだ!そんなこまやかな日本の季節感を、いっしょに味わうコンテンツ。ナビゲーターは「あずま女に京おとこ」のコンビです。
十月二十五日(火)更新 奈良県版「くらしのこよみ」、「奈良こよみ」が出来ました。
京おとこ

七十二候にそって季節の俳句や行事、
旬の食べ物をお薦めするアプリ「くらしのこよみ」は、
2010年の立冬にリリース以来おかげさまで
累計約40万ダウンロードとなりました。
おおよそ5日に一回変わりゆく
日本の繊細な季節の移り変わりを
たくさんの方々に楽しんでいただいているようです。
開発当初から手がけたかった英語版は、
昨年末に「72 Seasons」として実現することができました。

もうひとつ試みたかったのが、地方版の開発でした。
日本列島は意外と南北に長く、
それがゆえにひとくくりに日本としても
季節感が違うものです。
今日も半袖一枚でこれを読んでいる人も
いらっしゃるでしょうし、
バス停でコートの襟を立てながら
スクロールしている方もいらっしゃるでしょう。
「くらしのこよみ」をそれぞれの地方に合わせた
旬の魅力を伝えるコンテンツに出来ないか。
そんな想いが、
奈良県の観光のお仕事をいただいてかなうことになりました。

「くらしのこよみ」地方版のトップバッターが奈良。
わたくし京おとことしましては、
ややこしいうれしさを感じています。
わたくしの父は、
昭和7年生まれの一生京都から動かない京おとこでした。
幼い頃からどこかに旅行にでかけても、
「よそ行ってお寺や神社に行ってもしゃあない。
 京都のほうがええもんがある」、
わたくしが大学を卒業して東京に就職することになった時、
「東京に行くんは都落ちや」と、
この謙虚さのかけらもない京都中華思想がつくづく嫌でした。
その父、奈良についてはいつも一言でしたね。
「奈良、あそこは古過ぎる」と。
この京都への偏向ぶり、
京都愛の居直りざまに憎悪すら感じておりました。
わたくしはと言えば、
東京で「京都出身っていいですね」とか言われた日には、
「あんな蒸し暑く底冷えする土地も悪ければ、
人はもっと悪いですよ。
歴史にあぐらをかいた虚業の街です」というようなことを
活き活き答えていました。
しかし、馬齢を重ねて齢47を数え、
京都に住んでいた時間を東京生活が越え、
病床に就いた父の見舞いに京都を頻繁に訪れるようになり、
4年前にあの世へと見送って、
「まあ、京都もええとこあるかな」
とようやく思える大人になってきました。

そんなわたくしが、
おそらく二十数年ぶりに奈良の地を踏む出張をし、
鹿の糞を踏み、
しみじみ感じました。
「やっぱり奈良はいい!」
京都と和解するムードのここ数年ですが、
正直あの京の都どすえな「はんなり」や「みやび」が
少々胃もたれするんですよ。
これ見よがしで。
「東京の人、騙されないで!」と
京都駅の新幹線ホームの片隅で叫びたくなるんです。
ちょうど一年前、
奈良県庁に伺うついでに桜井駅まで足を伸ばし、
「山の辺の道」をてくてく歩いてみました。
小林秀雄の筆による石碑が建つ、日本最古の道です。

三輪山をご神体とする日本最古の神社である
大神神社(おおみわじんじゃ)が厳かに存在するかと思えば、

無人の青果販売所が突然現れたり、

この時季は道なりに柿の実がたわわに実っていて、

さらに歩を進めると、
伊勢神宮の内宮の前に天照大神が祭られていたという、
元伊勢の檜原神社に行き当たります。

かと思えば、ぬっと池が出てきたり。

山の辺の道を外れ、
纏向駅まで向かう道にもコスモスが咲き誇る。

と、これが昨年10月に2時間ちょっと歩いた風景でした。

確かに奈良は古い。
長い歴史に培われたおおらかさがある。
気取りや衒いが無い。
素朴なんです。
まっすぐのびやかな桃源郷ですね。
京都山科から移って志賀直哉が奈良市に居を構えたというのは
とても納得できます。
和辻哲郎と土門拳の「古寺巡礼」を生んだ奈良です。

という奈良の魅力を日本語、英語でご紹介する
「奈良こよみ」とはどんなアプリなのか。
その魅力解説は東おんなさんにおまかせしたいと思います。

ちょうど今年は春日大社の
20年に一度にあたる式年遷宮が行われ、
いまは正倉院展もはじまっています。
そうだ、奈良行こう。
それはそれとして、
まずは「奈良こよみ」無料ダウンロードはいかがでしょう。

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2016-10-25-TUE
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