黒柳さんが話した、 黒柳さんのこと。こんな話は、二度と聞けないと思って。


第9回 敏捷、地味、小出し。
黒柳 あるとき、古式泳法をやってる人に
お会いする機会があったので、
「わたし、こういう水中ヨガのようなことが
 できるんですけど」
と言ってみたんです。そうしたら、
「それは古式泳法にも、昔ありましたが、
 あんまり難しいから、
 その項目はなくなったんです」
と言われました。
糸井 おお! そうなんですか。
黒柳 古式泳法って、立ち泳ぎしながら矢を射ったり、
お習字したりするのが、すごいと思うでしょ?
それより、わたしの水中ヨガのほうが
すごいんですって。
だけど、難しいからと改定されて、
いま、古式泳法のもっとも難しい項目は、
扇子を両足の指のあいだに1個ずつはさんで、
両手に1個ずつ持って、水の中で足を組んで、
一回くるんとまわること。
一同 ‥‥‥。
黒柳 床の上でできることですから、
別にわたしにとっちゃ、
なんでもないことですよ。
水中で足をくるんと、やるだけだから。
一同 (笑)
黒柳 その古式泳法の人がね、
水中ヨガのことをこう言うんです。
「わたしの先生は生涯に一度、
 骨がバラバラのような、痩せた老人が
 それをやるのを見たそうです」
古式泳法の先生が、一生涯に一度ですよ?
「だったら、わたしがやってあげますよ、
 わたしは骨がバラバラじゃないけどね」
って、だけど、
そのくらいできないもんなんですって。
糸井 ‥‥ほんとに、なんなんだろう、それは!
黒柳 ほんと、おかしいでしょ。
だからといって、なんにもならないの。
もしも船が沈んだりしたときには、
つまり、タイタニック号がなんかのときには、
いいかもしれないけど。
糸井 ずーっと、ヨガのポーズをして
浮いて生きてる人が‥‥。
黒柳 でも、人を助けようと思ったら、
重いだろうから、私には、できないでしょう。
だから、そういう目にあいたくないな、
って思います。
糸井 黒柳さん、もしかしたら肺がでかいとか?
黒柳 肺はすごく小さいの。
一同 (笑)
黒柳 恥ずかしいくらいに肺が小さいんです。
「ザ・ベストテン」で、
西城秀樹さんだったと思うんですけど、
肺活量が6000あるということで、
番組に看護師さんが
いらっしゃったことがありました。
そのとき、みんなの肺活量を調べたんですよ。
みんなで順番に肺活量を測定していって、
久米さんが
「黒柳さんお願いします」って言うから、
試してみたら、看護師さんが、
「なんだか機械が壊れちゃったみたい。
 いくらなんでも1000ちょっとってことは、
 ないと思いますから。
 普通の女の人の半分くらいしかないのは、
 ちょっとおかしいと思います」
って。
糸井 ほう。
黒柳 でも、ほかの人が試してみたら、
なんでもなくて、機械は壊れてなかったんです。
要するに、わたしは
女の人の半分くらいしか肺活量がない、
そういうことがわかりました。
なのにどうしてこんなにたくさん
しゃべれるかといえば、これは、
息つぎが上手だからです。
糸井 ははははははは。
観客 (笑&拍手)
黒柳 わたしは、
人がここで息をするだろう、っていうときに、
してないの。
吸ったり吐いたりが自由なの。
一同 (爆笑)
黒柳 ほら、いま、ね?
いま、このときに細かく吸ってるの。だから、
歌も、長くのばすのは得意じゃないんです。
みんなは、
♪あーーーーーーーーー
っていくのに、わたしは、
♪あー‥‥
って、息が切れちゃうから、
不思議だな、発声が悪いのかな、と
思ってたんだけど、フッ(笑)、
もともと肺が、ちっちゃかったんです。
糸井 その‥‥ときどき、自分でおっしゃったことに
自分でフッと笑ってるときは、
もしかして、息つぎですか。
黒柳 そうだと思う。
一同 (笑)
糸井 とにかく、小出しは得意なんですね。
黒柳 わたしの芸は、フッ(笑)、
小出しだわ、地味だわ。
糸井 敏捷だわ。
‥‥いやぁ、骨密度が高いというところから
どこまでも行きましたね。
黒柳 今日って、そういう話じゃ
なかったんでしたっけ。
なんだかきっと、ちがうことだったわね。
糸井 いや、こんなことを
二度と聞けないと思うから‥‥
黒柳さんについて、こんなに
具体的に黒柳さんから聞いたのは、
ぼくは、はじめてです。
黒柳 こういうお話は、そうね、
あんまりしてないですもん。
糸井 黒柳さんも、ぼくもそうですけど、
いつもは人の話ばかり聞いてます。
黒柳さんはたくさんしゃべる人だと
みんな思っているけども、
普段はしゃべる機会って、そんなにないでしょう。
黒柳 みなさんのお話を伺うのが基本ですから、
そんなにしゃべりませんね。
糸井 今日は、なんだか
芸を見せてもらった気がします。
つづきます!

2008-09-11-THU



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