黒柳さんが話した、 黒柳さんのこと。こんな話は、二度と聞けないと思って。


第12回 トップ賞がほしい。
糸井 「徹子の部屋」は、放映
7000回でしたっけ?
黒柳 そうですね、8500に近づいてます。
糸井 ぼくのデータは古いですね(笑)。
よく考えると、その分量って、
ちょっと笑っちゃうくらいですね。
黒柳 いちばんすごいことは、やっぱり
8500枚の洋服を着たということです。
糸井 そうだ。そうですね。
黒柳 毎回変えてるから。
8000回までは自分の洋服で
やってたんですけども。
一同 (驚)
黒柳 あの番組は、スタイリストさんがいないんです。
だいたい、昔はスタイリストってシステムが
なかったですから、
しかも、ゲストが何を着てくるかまでは
想像できないでしょ?
糸井 うん、うん。
黒柳 わたしは、ゲストを考えて
自分の服装を決めるようにしています。
「あの方は黒っぽいものに違いないから、
 わたしも黒いもの着ていったら、
 両方黒いじゃつまんないわね、
 ちょっと花模様にしようかしら」
とかね。相手より派手じゃないけど、
ふたりで写ったとき、
コントラストがいいように。
だから、ゲストとわたしの両方が
水玉になったり、花模様になったことは
一度もないです。8000回やっても。
糸井 8000でねぇ。
黒柳 でも、8000回すぎたあたりから、
頼んで借りてきていただくようにしました。
借りてきていただく人はいるけど、
でも、スタイリストはいません。
借りてきたものと自分の洋服をあわせた中から、
今日の人には何を着ようかと
自分で選ぶようにしています。
糸井 じゃあ、これまでの8000着は?
黒柳 日本の施設で育った子どもたちがいるでしょ。
糸井 はい。
黒柳 日本の施設‥‥というか、日本の国って
とても変わっててね、
施設で中学まで育って
高校に行こうとして試験受けて入れた子、
その子は、そのまんま施設にいられるんです。
だけど、入学試験に落ちちゃったり、
中学出て働こうと思った子は
施設を出なきゃいけないんです。
中学3年で、ですよ。
糸井 そうなんですか。
黒柳 そうすると、中学の3年間が終わったところで
15歳の子どもが
寝るところ、食べるところ、
仕事するところをその日のうちに探せ、
という状況になります。
そんなこと言われたって
なんにも手に職がないんですから、
難しいでしょ。
糸井 はい。
黒柳 だから、もう、
みんなどうしていいかわからなくて
犯罪に手を染めたり
悪いことの手先になっちゃったり
することがあります。
だけど、家があれば、みんな
仕事が見つかるまでそこにいることができます。
家族がないわけだから
日曜日に遊びに来たりするのにも、いいでしょ?
そういう経験をした子どもたちが
「うちがほしい」と言っている、という話を
30年前に聞いたんです。
だったら、わたしのお洋服を
バザーで売ればいいんじゃないかな、
ということになって、そうしたら、
日本橋の高島屋さんが
クリスマスの前後に1週間、
場所を貸してくださるようになったんです。
ほかの子たちが集めてきたものを
お洋服といっしょに売って、
そのお金で、おうちが3軒建ちました。
糸井 すごいですね。
黒柳 ま、そんな大きいうちじゃないんです、
普通のおうちみたいなところですけどね。
だけど、1年で300枚の洋服を出したとしても、
6日間だと1日50枚ですからね、
50人の人が来たらおしまいです。
糸井 そっか。
黒柳 けっこう大変なんですよ。
ですから「世界ふしぎ発見!」で、
トップ賞が出たときは、ほんとにいいんです。
トップ賞も一緒に
バザーに出してたからね(笑)。
だけど、ずっとこの何年間、
トップ賞がもらえないシステムになったの。
でも、先週くらいから
トップ賞をまたもらえることになって、
なんとかトップ賞を稼ぐことができそうです。
糸井 それも仕事なんですね。
黒柳 そうですよ。
それは「青少年と共に歩む会」というんですけど
そこに出すために、
絶対トップ賞をもらおうと思って、
いつも必死です。
糸井 張り合いがありますね。
黒柳 ありますよ。だけどね、
「世界ふしぎ発見!」では、このごろ
三択問題というのがあるんですよ。
あれがダメなんです。
わたしの性格を
ほんっっとに、のみ込んだんです、
担当の人が。
糸井 ははは。
黒柳さんは三択が苦手だと。
黒柳 もぅ〜、あたらない。
どうしちゃったんだろう。
野々村くんだって、あたってるのよ。
野々村くんは
「考えなくていいだけいいです、
 だって、3つある中のどれかだったら
 30%の確率ですよ」
って言うの。
糸井 たしかに。
黒柳 でも、考えても考えても、
回答者の中で、いちばん間違ってるんです。
司会の草野仁さんがね、
「黒柳さん、最初から三択を
 イヤだと思ってるでしょう。
 イヤだと思ってるから、ダメなんです。
 だから、いいなぁ、好きだぁ、って
 思ったらどうですか」
って言うんです。
だから、思ってもみたの、
三択が「好きだぁ」って。
一同 (笑)
黒柳 もしかしたら、わたしは
人が作った3つの答えに
自分をあてはめようということが
嫌なんだろうな、と思うんです。
でも、どうして正しくあたらないのかな。
あれこれ考えて
「考えすぎじゃない?」
と、みんなに言われるんだけど、
考えすぎなんてこと、
世の中にないんですからね。
ほんとに考えたらあたるはずなんだから。
糸井 問題を作る側からすると、
黒柳さんが答えそうなことをまず考えて、
それを×にするように
作ればいいんですよね。
黒柳 そうなの、そうなの!
必ず、わたしが、
これを選ぶだろういうことを、
みんながわかっちゃったのね。
また、それをわたしがね、ご丁寧に
「それ」って言っちゃうの。
糸井 ちゃんとね(笑)。
黒柳 そうしたら、みんなが裏で喜ぶの。
「世界ふしぎ発見!」の問題は、
答えを教えてもらってるんでしょ、って
よく言われるんだけど、とんでもない。
それどころが、スタッフのみんなは、
わたしにあてさせたくなくて、
燃えてやってるわけです。
だって、パーフェクトが出たりすると、
その回の担当ディレクターが
「わわわー」ってみんなに言われるからね。
すごく悔しいわけでしょう。
だから、もう、上手に三択を作って(笑)。
三択が苦手な黒柳さん。どうしてなのか追求しつつ、次回につづきます!

2008-09-17-WED



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