黒柳 | あのね、パンダって 指が6つあるんですよ。 |
糸井 | あ、たしか、そうですよね。 |
黒柳 | 6本指というか、手首の近くに 突起した指みたいのがあるんです。 それは、竹をつかむために進化したようです。 |
糸井 | 竹つかみ用かぁ。 |
黒柳 | その手でそうとう長く 竹を食べていたにちがいないのに、 お肉食べてるみたいに、 消化吸収のための腸が短いの。 パンダはいっぱい不思議があります。 うんと赤ちゃんのときはもう、 たらこみたい。 |
糸井 | すごいちっちゃいですよね(笑)。 |
黒柳 | 100グラムです。 あれはね、そのへんに落ちてたら ‥‥フッ(笑)、絶対、だれも拾わない。 パンダの生まれたては、 ピンク色の、なんだかわかんないものなんです。 |
糸井 | 幼虫みたいですよね。 |
黒柳 | え? うーん、 あんまり幼虫っていうふうには言わないわよ。 うっすらと、 たらこに毛が生えたみたいなの。 |
糸井 | それ、幼虫より悪いですよ(笑)。 |
黒柳 | ええ、まぁそれで、 生まれて3週間近くになると、 そのたらこみたいのに ジワーッと模様が出てくるんです。 墨で湿したみたいに、 目のまわりや手や足に色がついてくる。 それはそれは、かわいいわけ。 |
糸井 | 「あなたパンダだったのね!」と。 |
黒柳 | そうそう。 「たらこに毛が生えたのじゃないのね!」 ってね。 パンダの白黒の模様が なんであんなことになっちゃってるのか、 動物学的には、 まだ解明されていないんですって。 |
糸井 | はぁああ、そうか、 オスもメスも黒い模様ですもんね。 |
黒柳 | パンダはオスかメスかが そうとうわかんないのよ。 ライオンみたいなトサカはないし。 |
糸井 | トサカ‥‥ |
黒柳 | たてがみだ、たてがみ。 |
糸井 | トサカだと、 ボッシュートになりますね。 「黒柳さん、ボッシュートです」 |
黒柳 | ちょっと、忘れないうちに、 話が戻りますけどもね。 |
糸井 | はい(笑)。 |
黒柳 | 「世界ふしぎ発見!」の 解答の話なんですけどね。 |
糸井 | そっちですか(笑)、はい、はい。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | 昔、エジプトのナイル川の近くに、 川の水が豊富だったときに、 木が生えてて、 その木は日本でもおなじみで、 皮を煎じて飲むと、頭痛などに効く 「その木はなんだ」 というような問題だったんですよ。 |
糸井 | はい。 |
黒柳 | わたしもいろいろ考えてね、 日本になじみ深くて 木の皮がとれそうで薬になりそうで しかもいまだったらエジプトには 生えない感じなんだったら これは「柳だな」と思って。 |
糸井 | うん。 |
黒柳 | そして、「世界ふしぎ発見!」のスタジオの 解答を書く場所に、 いつものように答えを書き入れました。 木へんを書いて、 カタカナの「タ」って書いて、。 わたしはそういうふうに書くんですよ、 柳という字をね。 |
糸井 | ほう。 |
黒柳 | そうしたら、すごい勢いで AD(アシスタント・ディレクター)の人が 飛んできました。 「すいません、黒柳さん! これ、草野さんが、 なんていう字だか読めないって 言ってますけど」 |
観客 | (笑) |
黒柳 | ええ!? 東大出てる人が「やなぎ」って読めないの? と、わたしは思いましてね。 |
糸井 | ははははは。 |
黒柳 | ADの人に「やなぎですよ」と 小さい声で伝えました。 そしたら、また戻ってきて、 「すいません、徹子さん、ちがってます」 って言うのよ。 |
糸井 | うん、うん。 |
黒柳 | あなたね‥‥フッ(笑)、 わたしの名前、 黒柳っていうのよ? |
観客 | (爆笑) |
黒柳 | 「自分の名前ですから、 まちがうわけもないです」 ADの方がもう困ったような顔をして、 「やっぱり、ちょっとちがってるとみんなが‥‥」 と言うから、 「わたし、あなたの言ってることがわかんないわ」 と言い返しました。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | あのしくみ、ご存じ? 下がすごい電気的になってて ほかの人の解答は見えないようになってるけど、 もしもひどいこと書いた人がいたら、 まぁ、そんなのめったにないけど、 前に板東(英二)さんが、 一回あったんですけど(笑)、 スタッフが、ちがう答えにしてくださいって、 板(ばん)のところに字で 言ってくるんです。 |
観客 | へえぇぇ。 |
黒柳 | わかんない漢字があったり 字をまちがったりしたときにも 教えてくれるんですよ。 そこにスタッフが「柳」という字を 「こっちが正しいですから」と 表示したんです。 |
糸井 | はい。 |
黒柳 | 木に卯と書いて、柳。 「ふーん‥‥」 だけど、わたしはこの歳になるまで、 ずっと「」と書いてきましたから。 両親も黒柳ですし。 |
糸井 | そりゃそうです(笑)。 |
黒柳 | お習字の先生も なんにもおっしゃいませんでした。 で、答えが発表になって、 そのこと言ったら、板東さんが。 |
糸井 | はい。 |
黒柳 | 「や! おかあさん、 その歳になるまで 自分の名前、まちがって書いてたんか」 こうおっしゃったの。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | くやしいと思いました。 そうしたら、番組宛てに ほうぼうから、お手紙をいただきました。 「わたしの住んでいるところは △△地方のヤナギ町と言うんですが、 あの字を書きます」 「わたしの苗字もあの字を使ってます」 |
糸井 | はい、はい。 |
黒柳 | そこで、母に どういうふうに書いてるのか訊きました。 そうしたらやっぱり、母も 「」って書いてるわけ。 それでね、お墓まで 見に行ったんですよ。 |