糸井 | パンダって、そんなに 恥じらいのある方たちなんですね。 |
黒柳 | 品がいいの。 とにかく不思議な動物です。 こんな、パンダの話ばっかりしてて いいのかしらね。 |
糸井 | もう、パンダは先に 済ませておいたらどうでしょう。 |
黒柳 | そうね、フッ(笑)、そうしましょうか。 |
糸井 | 黒柳さんの中では、やっぱり パンダだけは特別なんですね。 |
黒柳 | パンダについては、 子どものころから研究してたんです。 わたしが子どもだった時代、 パンダの研究をしてる人は 日本にひとりもいなかったと思います。 |
糸井 | 黒柳さんだけ。 |
黒柳 | 伯父が報道カメラマンだったんですが、 日本ニュースとか、そういう元締めをやってて、 彼は当時、ニューヨークにいたんです。 その伯父が日本に帰ってくるときに、 おみやげを買ってきてくれました。 それが、パンダのぬいぐるみ。 |
糸井 | うん。 |
黒柳 | なぜかなれば、その少し前に 生きたパンダがアメリカに行って、 大騒ぎになってたからです。大ブーム! アメリカではね。 日本は知りませんよ、そんなこと。 戦前ですから。 で、足も黒いし、手も黒いし、耳も黒い、 目の周りも黒い。 ぬいぐるみを受け取ったわたしは、 ただの模様だと思ったわけですね。 |
糸井 | 「パンダだ」とは思わなくて。 |
黒柳 | そう。クマの子だと思いました。 わたしはぬいぐるみがすごく好きだったし、 しかも当時はあんまり世の中に ぬいぐるみってものがなかったから、 もう、ずーっと、かわいがったんですよ。 ところがある日、そういう白黒のものが 中国にいることがわかったの。 |
糸井 | うん、うん。 |
黒柳 | いくら調べても、 そこからがよくわからない。 百科事典にも、レッサーパンダしか 載ってなかったんです。 |
糸井 | はい。 |
黒柳 | ちなみにレッサーパンダは、 ヨーロッパでは 「輝ける猫」と言われてましてね。 |
糸井 | レッサーパンダが。 |
黒柳 | みなさんご存じないと思うけど、 あの方たちは、スターだったんですよ。 そののちに、白黒の ジャイアントパンダというのが 出てきちゃったもんだから なんだか影をひそめましたけどね。 だけど、このあいだ、ほら、 立ったもんですから。 |
観客 | (笑) |
糸井 | はい、はい。 |
黒柳 | おほほー、風太くん、立った立った(笑)、 ねぇ、すごくかわいい。 |
糸井 | あれでだいぶ点数をあげましたよね。 |
黒柳 | やっと昔の 「輝ける猫」に次ぐくらいの 盛り上がりを迎えましたね。 |
糸井 | 第二期黄金期。 |
黒柳 | そう。 ところで、ジャイアントパンダの白黒が 最初に世界に出たのは なんたって、皮だったんですって。 |
糸井 | 皮。 |
黒柳 | 皮だけ。 フランスで剥製にしたんです。 |
糸井 | へぇえ。 |
黒柳 | フランスの宣教師が中国に行って、 ある日、パンダの皮を見たんです。 向こうのほうで パンダの皮をしょってる人がいたんだって。 |
糸井 | しょってる人が! |
黒柳 | 四川省の近くでね。 「なんですかそれは?」と問えば、 「色分けグマ」と。 いまから約130年ぐらい前の話ですけど、 そのフランスの宣教師は、 現地の人たちに 「生きたのを欲しい」 と、お願いしたんですって。 その人は動物や植物にくわしい 宣教師だったの。 |
糸井 | うん、うん。 |
黒柳 | だけど、どうしても 生きたのが捕まんなくて、 「撃っちゃって死んじゃってるんですけど」 というのを持ってきたから。 |
糸井 | 「撃っちゃったけど」と。 |
黒柳 | まぁ、しょうがないって、 それを解体してフランスに送って、 剥製にしたんです。 それが、世界で最初です。 |
糸井 | たった130年前。 それは「最近」とも言えますね。 |
黒柳 | そうよねぇ。それで、フランスで 「わぁー」なんて言われたけど、 何しろ剥製だから、 「わぁー」でおしまいになったんです。 でね、次に出てきたのは、アメリカの探検家。 |
糸井 | はい、次はアメリカが。 |
黒柳 | 「よし、生きたのを捕まえてやるぞ」 なんて言って。 |
糸井 | きっとそれは 雪男なみの捜索だったでしょうね。 |
黒柳 | ほとんど伝説ですものね。 |