黒柳 | 今日、こんなに 動物の話ばっかりしてもナンなので。 |
糸井 | いや、ぜんぜん大丈夫です(笑)。 |
黒柳 | じゃあ、いま着ている 洋服の話をしますね。 これはアルパカです。 うしろもきれいでしょ。 |
糸井 | アルパカってこんななんですか! これは日本の服ですか。 |
黒柳 | いいえ、ペルーです。 我ながらすごいなと思ったんですが── ずいぶん前のこと、日本橋の 三越デパートの中を通ったんです。 つまり、三越劇場に出演するためにね。 |
糸井 | はい。 |
黒柳 | ちょっと時間に遅れていたので、 ビューッと走っていったんですけど、 この服が1階の売り場に飾ってありました。 そのまま6階の劇場に行って、仕事して、 違う出口から出て、うちへ帰りました。 寝る前になって 「なんだか今日、目のはしっこのところに、 すっごくきれいなものがあった気がする」 |
観客 | (笑) |
黒柳 | 「あれはいったいなんだったんだろう」 |
糸井 | うわぁ。 |
黒柳 | 次の日、三越デパートに電話しましてね。 |
糸井 | はい、はい(笑)。 |
黒柳 | 「昨日、1階の手袋売場か えりまき売場のところに すっごくきれいなものがあったんですけど、 あれはなんですか」 と訊いたら、デパートの方、 「なんでございましょうね」 って。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | そんな訊かれ方じゃ、わからないわよね。 でも、デパートはすごいです。 とうとう追跡して、 この服を扱うペルーの会社の 電話番号を教えてくれたの。 |
糸井 | うん、うん。 |
黒柳 | そこへ電話して、お支払いして、 送っていただきました。 アルパカって、ふつうは こういうイメージじゃないでしょ? |
糸井 | 茶やオフホワイトの カウチンみたいなものはよくありますが‥‥ まぁ、そんな色のアルパカが いるわけじゃないけど(笑)。 |
黒柳 | ‥‥フッ(笑)、こんなアルパカがいたらね、 捕まっちゃいますよ、すぐ。 |
糸井 | そうですよね。 |
黒柳 | こんな格好して、 タッタッタッタッ歩いてたら。 |
糸井 | 色で捕まりますね。 昔の歌舞伎のスターが着てても おかしくない存在感ですよ。 着るにはやっぱりひとつの思いきりが要りますね。 なんというか‥‥緞帳つきの劇場みたいな。 |
黒柳 | ‥‥フッ(笑)、そうです、そうです、 ほとんどそうです。 これは、緞帳ですね。 |
糸井 | 「IBM寄贈」 |
黒柳 | ふふふ、そうそう。 だけど、いつもこんなの 着てるわけじゃないんですよ。 |
糸井 | 黒柳さん、帽子もおもしろいですね。 どこまでが帽子で どこまでが毛なんだか。 |
黒柳 | これは自分の毛を編んで 入れてるんです。 |
糸井 | 黒柳さんって、いつも、 どこまでがどういうふうに 人の毛なんだか、自分の毛なんだか、 わからないんですが。 |
黒柳 | 上手ですからね(笑)。 |
糸井 | ふだんはきっと ロングヘアだということですよね。 |
黒柳 | 「たまねぎ」頭は ロングヘアじゃないとできません。 ちがうスタイルにするときには 中に全部折り込んで、しまっちゃいます。 そして、かつらをかぶります。 |
糸井 | ‥‥ということは、 「たまねぎ」のときは自毛なんですか。 |
黒柳 | あれもかつらだと思ってらっしゃる方が いらっしゃいますけど、 かつらだと、襟足のところなんか、 ああはうまくいきません。 |
糸井 | じゃあ「たまねぎ」じゃないときのほうが、 かつら。 |
黒柳 | そうです。 「たまねぎ」じゃないときのほうが、 かつらのことが多いです。 そのほうが、すぐに仕事に入れるので。 |
糸井 | はぁああ。 あの、おうちにいらっしゃるときは‥‥ |
黒柳 | そりゃあ、もう、 すごいですよ。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | 髪の毛を頭の真ん中でまとめて ゴムでグルグルグルグルと。 |
糸井 | 「まげ」みたいにするんですか。 |
黒柳 | まぁ、動物の、 それこそたてがみみたいになりますから、 それを折り曲げて、 ダブルピンで留めてます。 |
糸井 | 「たまねぎ」というより、 ソフトクリームに近いんですね。 |
黒柳 | あ、うまいうまい! そうよ、ソフトクリーム。 あなた、上手ねぇ。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | ご商売とは言いながらねぇ。 うちにいるときの頭は、そうよ、 ソフトクリームです。 |