株式会社ほぼ日のロゴマークができました。

第1回 3つの窓が開いている。

糸井
決まりましたね。
佐藤
決まりました。
糸井
卓さんにどんなにすばらしい
ロゴマークを作っていただいても、
すべてはこれからのぼくらの行動にかかっています。
あたりまえのことですが、実態ありきです。

これから先は、このロゴマークごと、
ぼくらの責任になっていきます。
せっかく作ってくださった、
卓さんが恥ずかしくないようにしないと(笑)。
佐藤
いえいえいえ(笑)。
これをまず、ほぼ日で働くみなさんと糸井さんに
気に入っていただくことが重要です。
そして世に出たとき、
「ああ、なるほど」と多くの人の
腑に落ちないといけない。
ほぼ日
世の中の人の腑に落ちるというのは、
どういうことでしょう。
佐藤
いろいろだと思います。
すぐになじむ場合もある。
最初は違和感を感じたとしても
だんだんしっくりくるようになって、
逆に、最初の引っ掛かりが
「親しみの深さ」になっていくという
ケースもあるでしょう。
糸井
うん、そうですね。
佐藤
糸井さんは、このロゴマーク案を見て、
「3つの窓枠」と表現なさいました。
じつは最初、ぼくは
「扉」をイメージしていたので、
糸井さんに「窓」に
発展させていただいたことになります。

窓という考えを、ぼくは
とてもいいと思いました。

扉をイメージしていたとき、ぼくは、
「ほ」「ぼ」「日」という文字が
3つの板になってぐっと回転扉のようにまわせるなぁ、
そして、それはうまくいくだろうなぁという
イメージがありました。

空間に3つの板が存在し、
そこから斜めの空間が生まれる。
空間ができるというのはつまり、
手前と奥ができるということです。

扉ではなくこれを窓枠とした場合、
同じサイズのガラスが並ぶことになりますから、
糸井さんの言葉を受けて、
窓にあたる部分を
完全に同じ幅にして調整しました。
糸井
昔、ぼくらが通っていた時代の学校は、
校舎の窓が回転窓になっていました。
夏、クーラーのない教室に、
風を入れようと、窓を半分開けたりしましたよね。
授業中に「あ、風が来るな」というのも
よくわかりました。

窓からは、風だけじゃなく、光も入ってきます。
こちらの空気も、どんどん出ていく。
あの感じがいいなぁ、と思ったんです。
佐藤
いいですねぇ。
糸井
「窓」には向こうがあって、こっちがあります。
こっちから向こうへ出ていけるし、
向こうからこっちへも来ることができます。
そういう気持ちよさを
このロゴマークに感じます。
ほぼ日は、そういう窓を持ってる
広場のようになっていけばいいと思っています。
卓さんが「扉」をイメージしていたのに
勝手に「窓」って解釈しちゃったけど‥‥。
佐藤
それはすごくいいことだと思います。
意味というのは、そもそも、
後からつけるものだと
ぼくは思っています。
デザインは、思いついたときにはいつも、
言葉はありません。

「あっ、こういうことができるかもしれないな」
と思いついて、
それを形にしていきながら、
言葉があとからどんどんはりついていきます。
意味というのはいつも「後づけ」なんですね。

自分が発想したものを形にしていきながら、
コンセプトを言葉化して、形をいじって、
また言葉化して、いじる。
くり返していくうちに、
形と言葉がひとつになっていく、
そういうところがあります。

そのやりとりは、自分の中でもやるし、
今回のように、
糸井さんに「開く窓」と
言葉化していただいたことによって、
さらにぼくらが細かく詰めていく、
という場合もあります。
自分の中であれ、誰かとであれ、
そのやりとりは、いずれにしてもあることで、
ごく自然なことです。
糸井
それは、文章の作り方と同じですね。
「何を何として書く」というよりは、
書きたいという何かがあって、
それが通じるか通じないかのところで
筆者は推敲していくわけです。

デザインでも、文章でも、
根っこにあるものは
「こういうようなこと」
という、いわばたとえにしか
すぎないんですよね。

佐藤卓(さとう・たく)

グラフィックデザイナー。
1979年東京藝術大学デザイン科卒業。
1981年に同大学院修了。
株式会社電通を経て、
1984年に佐藤卓デザイン事務所設立。
「明治おいしい牛乳」や
「ロッテ キシリトールガム」などの
商品デザインおよびブランディング、
NHK Eテレで放送中の『デザインあ』の総合指導や
『にほんごであそぼ』のアートディレクション、
ほぼ日手帳のデザインディレクション、
21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務めるなど、
多岐に渡って活動中。

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