[糸井]
毎日、カメラを持ち歩いていると、まれに「ああ、この人を撮りたい!」という
「他人」と出会うことがありますよね。

[アニ]
あります(笑)。

[糸井]
でも、やっぱりぼくなんかは度胸がなくて撮れないんですよ。

[うめ]
もったいない。

[糸井]
もう、「気まずい」を通り越してあきらめちゃってるんですよ。

[うめ]
たとえば、どんな人ですか。

[糸井]
一番撮りたいのはヅラなんですけどね。



[アニ]
はははははは。

[うめ]
ああー(笑)。

[糸井]
いい具合にカツラっぽいというか、バレバレな感じのヅラ、っていうのを一度、撮ってみたいんですけどねぇ‥‥。
だけど、撮れないんですよ。

[うめ]
それは撮れないですねぇ。

[アニ]
厳しい。

[糸井]
うん、撮れない。

[うめ]
真っ正面とか絶対無理ですね。



[糸井]
真っ正面から撮りたいですけどね!

[アニ]
あははははは。

[うめ]
後ろとか、ななめなら、なんとか‥‥。

[糸井]
うん。なんだかんだいってぼくも長いあいだ撮ってるのでね、
「柿の木の下を通り過ぎていく つるっぱげの人の後ろ姿」
っていうくらいは撮ったことがあるんです。
これは、うれしかったなぁ。
オレだってやればできるじゃないかと思った。

[アニ]
そんなに達成感が‥‥。

[うめ]
シチュエーションとしてはミラクルですね。

[糸井]
でもねぇ、後ろなんですよ!

[うめ]
ああ、まぁ、そうですねぇ。

[糸井]
ほんとだったら、その人が、こうね、カメラのレンズをじぃっとのぞきこんでくれるくらいがいいんですけど。
でも、正面から
「よろしくお願いしまーす」って撮影したときに、
「なんで撮ってるんですか?」って言われたら、
「ちょっと、頭のあたりを撮りたいんです」
って言うわけには‥‥。

[うめ]
言えないですよね。

[糸井]
言えないですよね。
あとね、すっごく二枚目の人がいて、しばらく追っかけたことがあるんですよ、ぼく。

[うめ]
二枚目?

[糸井]
表参道ってね、ちょっと勘違いしたようなものすごく二枚目な人がいかにも「二枚目です!」というような
「二枚目歩き」をしてるときがあるんですよ。

[アニ]
(笑)

[うめ]
(笑)

[糸井]
つまり、『ちびまるこちゃん』の花輪くんみたいなことになってるわけ。
その服装と、たたずまいといい、ぜひ撮りたいんだけど、こっちも犬連れてたもんだからさ、不自然な感じで追いかけて、景色撮ってるふりして撮ったりして。

[うめ]
でも、その人は、言えば撮らせてくれますよ。絶対。
だって、二枚目なんやもん。

[糸井]
ああ、そうだね。
うーん、そのへんのジャッジが素人だから、できてないんだな。
アニさんは、そういうとき、どうしますか。
「撮っていいですか」って頼むんですか、やっぱり。

[アニ]
やっぱ、撮りたいときは頼みますよ。
勝手に撮って問題なさそうなときは、ちゃんとカメラ構えて撮りますし。



[糸井]
あーーー。
ぼくは、そこを一歩、踏み出すことがいままでできてなかった気がする。

[うめ]
そこですねぇ。

[糸井]
ぼくがリトルモアさんから写真集を出せない理由はそこですね。

(続きます)


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