[糸井]
チズさんにとって「休むこと」はどういうことなんでしょう。

[佐伯]
もう、いまは休んでしまうと寝たきりになるような気がします。
はたらいていたほうが楽です。

[糸井]
亡くなったご主人がもしいらっしゃったら、そんなチズさんを見て、とめたでしょうね。

[佐伯]
そうでしょうね。
主人は家にいることを喜ぶ人だったので、休みなさい、休みなさいと言ってたんじゃないでしょうか。
ですから、主人がいたら、わたしは現在この仕事をやってなかったと思います。



[糸井]
おもしろいなぁ。
男らしい一生になっちゃいましたね。

[佐伯]
でも、お客さまのほうを向いていて、わたしはいいものをたくさんいただいていると思っています。
お客さまをきれいにさせていただいたとき、その方が鏡にむかって、
「わー、佐伯さん、 わたし、昔こんな顔してた!」
と、涙を流されたことがありました。
そういうとき、ほんとうにこの仕事しててよかったと思うんですよ。
みんなできれいになりましょう、って伝えていきたいです。

[糸井]
まずはやっぱり、粗末にしすぎですよ、ということですね。

[佐伯]
大事にしてほしい。
自分の顔は自分の顔として、大事にかわいく思っていけば、ほんとにいいところが見えてきて、それを長所にすることがいくらでもできます。

[糸井]
自分を大事にする道に乗っかるには、なかなかチャンスがないのかもしれません。

[佐伯]
そうなんですよね。
恋人のことを大好きと思えるくらいに、自分の肌も大好きと思ってくれればいいんです。

[糸井]
チズさんはやっぱりご主人に愛されたのがすごく大事なことだったと思います。
だからご自分を大事にできたんでしょう。

[佐伯]
はい。
どこに行くときにも、連れてってくれましたし。



[糸井]
もしかしていまも、このへんに、います?

[佐伯]
実は、美輪明宏さんがそう言ってくださったんですよ。
わたしは占いはあんまり興味がないんですがそのときはやっぱりいてくれるんだ、って思いました。

[糸井]
ひとりで迷惑かけないようにとか、ひとりでがんばるとか、自由でいるとか、そうおっしゃるわりには、ちっともひとりの感じがしないんですよ。

[佐伯]
(笑)

[糸井]
それはやっぱり、自分が心をゆだねてる場所がおありだからなんでしょうね。
さっきまでは「お客さまがいたからだ」
と思っていましたが、きっとそれだけじゃないですよね。

[佐伯]
実は、家にいても、ひとりでしゃべってます。

[一同]
(笑)

[佐伯]
主人にしゃべってみたり、テレビの中の人にしゃべってみたり。

[糸井]
それは、コツとしては「あり」ですね。
つまり、ペットがいるだけでしゃべりかけたりすることができるのと同じように、自分から生むものがひとつ増えるということですから。

[佐伯]
そうなんです。
だから、お花が咲いているのを見つけたら、ありがとう、かわいく咲いてくれてありがとうって言ってます。

[糸井]
また劇団ひとり(笑)。

[佐伯]
いつも劇団ひとりですよ(笑)。

[糸井]
じゃあ‥‥そろそろ時間ですもんね、終わりにしましょうか。

[一同]
(拍手)

[糸井]
何をそんなに、拍手するの!



[佐伯]
はははは。

[糸井]
いやぁ、ほんとにおもしろかった、ありがとうございました。

(これで、佐伯チズさんと糸井重里の対談は おしまいです。
 明日からは、読者の方からの質問を チズさんに訊いてみた 質問コーナーがはじまります。
 どうぞおたのしみに!)


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