[糸井]
ちょっと、話が変わってしまうんですけどね。

[上田]
はい。

[糸井]
ぼく、野菜のことを、少しやってるんですね。

[上田]
ええ。

[糸井]
で、野菜についての話し合いみたいなところに呼ばれて行ったことがあるんですけれど、出席してる先生たちがしゃべることって、
「安全性」と
「地産地消」についてばかりだったりしたんです。



[上田]
はい、はい。

[糸井]
たとえば「地産地消」といっても、どんなにがんばって「地産」をしたとしても、地元経済がうまくいってなければ
「地消」することが、難しかったりします。

[上田]
ええ、はい。

[糸井]
だから、地産できるけど地消できない場所でみなさん、野菜を買っていただきたい‥‥とか言っても、それって「理念」に過ぎないじゃないですか。

[上田]
そうですね。

[糸井]
その一方で、徳島に「いろどり」ってビジネスがあるんです。
これは、刺身のツマとかにする「葉っぱ」を都会で売るために、作ってる人がいるんですよ。

[上田]
ほーう。

[糸井]
これって、地産地消の真逆の発想なんですよね。
需要、つまり消費される場所を見つけておいてから「葉っぱ」を売ったんです。

[上田]
うん。

[糸井]
つまり、さっきの野菜の話に戻ると
「安全性」と「地産地消」のことも大切なんだけど、根本的なところで重要なのは
「おいしくない野菜は売れない」ってことなんです。

[上田]
ニーズないもんね。

[糸井]
逆に言えば「地産地消がうまくいかない」といっても、
「おいしい野菜なら売れる」はずなんです。

[上田]
そりゃそうだ。

[糸井]
でも、やっぱり、先生がたの考えかたによっては
「おいしくないものは売れないとか、 問題はそこじゃない」とか、
「安全じゃないものは、食べちゃいけない」とか、そういう発想が先にきてしまう。
たしかにそうなのかもしれないけど、それじゃあ、一歩も進まないと思うんですよ。

[上田]
うん、うん、うん。



[糸井]
だから「地産地消は大切なことだ」って話と、
「おいしくないものは売れない」って話は、同時に考えるべき問題だと、とらえたほうがいい。

[上田]
市場は「おいしいか、おいしくないか」で動いてるわけだからね。

[糸井]
そうそう、そうなんです。

[上田]
セオリーが先にきちゃってるんだね。

[糸井]
そのとおりなんですよ。

[上田]
事実があとまわしで。

[糸井]
「おいしい野菜は、売れる」という「event」が大切なわけで、
「theory」は追いかけるわけですから、それを。

[上田]
そうです、そうです。

[糸井]
安全かもしれないけど不味いトマト‥‥は消費されないんですよ、やっぱり。

[上田]
そうでしょうなぁ。

[糸井]
だから、ここでもやっぱり
「顧客の創造」なんですよね、重要なのは。
いま、先生と話していて、気づいたんですよ。
「ああ、これもドラッカーだった」って。

[上田]
本当に、豊かな種なんだと思うんだな。

[糸井]
だから、いまよりもっとたくさんの人がドラッカーを読むことになったら、いろいろ、スムーズになりそうな気がするんです。

[上田]
うん、そうそう、そうなんですね‥‥。
でもね、ぼくが思ってる以上に、意外と読んでる人、いるみたいなんだよね。
電車のなかで、ドラッカー読んでる人とかたまに見かけるし、ついさっきも、ここへ来る途中で、知らない人に声をかけられたの。
ぼくの講演を、どこかで聴いたらしくて。



[糸井]
そうですか。

[上田]
いまちょうど買ってきたんですって、ぼくの本を持ってた(笑)。

[糸井]
少しでも、ぼくらがそこのところのお手伝いになったらいいなと。

[上田]
それは、ありがとうございます。

[糸井]
まぁでも、理論と理論をぶつけ合うようなことは得意じゃないんで、ぼくらなりの方法でできたらと思うんですけどね。

[上田]
うん、重箱の隅つつき合ったって意味ないから。

[糸井]
ま、ぼくらなりの方法といっても、ウチの社員は「バー・ドラッカー」やろうとかって、わけのわからないことを言ってますが‥‥。

[上田]
あはははは。

[糸井]
ともかく、社長業なんてやるつもりもなかったぼくが
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