[糸井]
日比野くんと会うのは、えーっと、ずいぶん久しぶりじゃない?
[日比野]
そのうち会うのかなぁ、なんて思いながら‥‥なかなか会わないですね。
[糸井]
変装してるわけじゃないよね(笑)?
[日比野]
変装してるわけじゃないです(笑)。
[糸井]
最初に会ったとき、日比野くんは、たしか学生だったよね。
[日比野]
ええ、最初のときはそうでした。
あ、この写真は『おめでとうのいちねんせい』のときの?
[糸井]
出版祝いの食事会かな?
[日比野]
へぇえ!
[糸井]
覚え、ないでしょ。
[日比野]
覚え‥‥ない(笑)。
[糸井]
いま、日比野くんは、『おめでとうのいちねんせい』のような仕事は、やってる?
[日比野]
じつは今度、絵本を出すことになってます。
テキストはもうできあがってて、あとは絵を描くばかりなんだけども、秋ぐらいに打ち合わせしたときにはよゆうで「年内にできるなぁ」なんて思ってたんですが、なんだかんだなんだかんだで、いまだに‥‥できないです。
[糸井]
締切って、あると悲しいし、ないとしないし。
[日比野]
そうなのね。
[糸井]
不思議なもんだよね。
だけど、日比野くんは締切のない仕事もいっぱいしてるでしょ。
展覧会だってそうだし。
[日比野]
あー、そうだ、糸井さん、水戸のとき
(「HIBINO EXPO 2005 日比野克彦の一人万博」展)は、観に来ていただいてありがとうございました。
[糸井]
あの展覧会は、ほんっとに、よかったです。
[日比野]
実はあれが、
「地域と一緒にやる」スタイルをはじめたときだったんですよ。
その後は、岐阜や太宰府、金沢21世紀美術館などであれがずーっと続いていて、そういう意味ではまぁ、あの系統の仕事には締切はないですね(笑)。
水戸でやり残したことを次の美術館に持っていって、次の美術館で思いついたことをまた次の美術館でやる。
もう、ずーーーーっと終わらない感じ。
[糸井]
生きものなんだね。
[日比野]
そう、生きものですね。
最近では、展覧会の最終日に次の展覧会につなげるようなお祭りをやるんです。
[糸井]
わざと?
[日比野]
ええ、わざと。
『楽日初日』というタイトルにして搬出もイベントにしちゃうぐらいです。
[糸井]
はぁあ、なるほど。
水戸の展覧会も、たのしそうだったもんなぁ。
だけど、2005年? そんなに前だったっけ?
[日比野]
そうです。
[糸井]
いまごろこんなことを言ったってしょうがないけど、とにかくびっくりしたよ、あれは。
[日比野]
砂場があったり、箱が積んであったりとかそういうことが?
[糸井]
うん‥‥いや、なによりやっぱりうれしかったのは日比野くんがあそこで、すぐできないことばっかりやってたってことだな。
[日比野]
はははは。
[糸井]
うん、ほんとだよ。
いまの仕事って、なんにせよ、すぐに完成品ができるようになってる。
特に、コンピュータが入ってからの仕事は、
「じゃ、明日ね!」って言ったら、100年かかるようなことでも、ちゃんと「明日」にできてしまいます。
[日比野]
うん、うん。
[糸井]
だけど、日比野克彦という人があそこで見せようとしていた仕事は
「いつ頃から準備してたんだろう」とか、
「この部分は、かなり昔のだなぁ」とか、そういうものばっかりなんです。
見てるそばからニッコニコしてきちゃう。
展示してある作品の、時間の大きさが、ふつうのものとまったくちがうんですよ。
「あ! オレはこういうことを ちょぉっと見逃がしてたなぁ!」
なんて、反省したもん。
[日比野]
ははははは。
[糸井]
メディアを通してではなく、生の作品を観るチャンスというのは、ふだんそんなにあるもんじゃないから、オレは、つくづく思いました。
人って、見えないところで、こんなことを一生懸命やってるんだなぁ、と。
それが、なんだかねぇ、とてもうれしかった。
自然物を見るように日比野くんの作品が、うれしかったんです。
[日比野]
ありがとうございます。
うれしいなぁ。
(つづきます)
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