[糸井]
今日の永ちゃんの話で、一貫して言えるのは、
「自分の頭で考える」ということですよね。

[矢沢]
そういうことです。

[糸井]
それで結果的に失敗しても、身になるわけだし。

[矢沢]
「自分の頭で考えろ」なんてね、ものすごく簡単なことのようだけど、やってるようで、意外とやってないんじゃないの?

[糸井]
自分だけで決めればいいんだよね。
自分で決めてない仲間がまわりにいるからって安心したりせずに。



[矢沢]
と思う。
自分の頭で考えればいい。
じゃ、矢沢さんの考えたこと、聞かせてくださいって言われたら、すぐ言える。
「オレは金持ちになりかたかったの」

[糸井]
ずっと、はっきり言ってたもんね。

[矢沢]
オレは、もう、金持ちになりたかった。
なんで? ポルシェ乗りたいもん。
世界に別荘建てたいもん。ビル建てたかったもん。
夕方の4時の、ドライマティーニ飲みたかったもん。



[糸井]
ふふふふ。

[矢沢]
いや、ほんとに美味いんだ、これ、試して。
ホテルのバー、夕方4時半くらい。
まだ明るいんだよね。
ホテルのバーだと開いてるのいくらでもあるから、ドライマティーニ、ビーフィーターでつくってって言って、クッていくわけよ‥‥‥‥飛ぶよ?

[糸井]
(笑)

[矢沢]
クッと飲んで、ドーンと行って、それ飲んでね、オレがんばろうと思っちゃうんだ。
仕事またがんばろうって思うんだよ。

[糸井]
儀式だね。

[矢沢]
儀式、儀式。
赤坂に自分のビル建てたときも行ったな。
最初にオープンハウスやって、いろんな人呼んで、中、全部見てもらって、料理も準備して、飲んでもらって、食べてもらって、本来ならいっしょに飲むべきだったけど、俺はさっさと、自分でタクシー乗ってホテルに行って、バーで飲んでたのよ。ひとりで。
やっぱり、ちょっと、くるもんがあったのよ。
オーストラリアの問題、かたつけて、ほかにもいろんな問題、かたつけて、赤坂にスタジオちゃんとできたな。
借金はまだ残ってるけど‥‥
「借金いいねー、借金も人生よ」って、ほんと思ったもん、オレ。
またここから借金返そう、みたいな感じ。

[糸井]
ドライマティーニを飲みながら。

[矢沢]
2杯いったら、ぶっ飛ぶから。

[糸井]
(笑)

[矢沢]
だからね、ぼくは昔から、えらくなりたかった。
役職とか肩書きじゃなくて、自分の思ってる意味で、えらくなりたかった。
モノ、欲しかった。
飲みたい酒、飲みたい。
食べたいもの、食べたい。
行きたい場所、行く。
しかもファーストクラスで。
それで、つかりたい温泉につかる。わかる?

[糸井]
指図はされたくない。

[矢沢]
指図はされたくない。
全部、自分の金でやってる。
税金? おさめてる。
‥‥けっきょくぼくはね、ずっとそういう生き方に憧れてたんだ。

[糸井]
うん。

[矢沢]
いまの俺が言うと、自慢に聞こえるかもしれない。
「成功したから自慢しちゃって、イヤなやつだな」
って思うかもしれないけど、誤解しないでほしい。
俺は、食えなかったころから、金がない、二十歳くらいのころから、ずーっと、同じこと言ってた。
矢沢のこと知ってるやつは、みんな言うよ。
「おまえ二十歳からぜんぜん変わんないね」って。
言ってること一貫して変わってないもん。
あのころから言ってたんだもん。
金持ちになりたいって。

[糸井]
全部、そのときそのときに、自分で考えたんだね。

[矢沢]
自分で決めたんだよ。
さっきも言ったように、いろんな価値観があっていい。
いろんな生き方や、いろんなスタンスがあっていい。
いろいろたいへんなことはあるだろうけど、自分で決めたんなら、自分の力で乗り越えて。
まぁ、泣き言くらい言ってもいいよ。
愚痴のふたつみっつ、言いたいときは、嫁さんがいたら嫁さんに聞いてもらえばいいじゃん。
でまた、ふたりで、力合わせて乗り越えていくと。
ただ、後悔して、後悔して、自分を恨んで、恨んで、つまんない人生にはするなよって言ってるわけ。

[糸井]
うん。
(続きます!)


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