第3回 ビールに飛び込む人たち。



[糸井]
とにかく、アサヒビールの人たちは新橋で、毎日ビール飲んでたんです(笑)。
「うまいな。な?」って言いながらガンガン飲むんですよね。
きっと仕事で飲んでるんだろうけど、あれは本当にうまいと思ってたと思う。

[斎藤]
ビール会社の人間はみんなそうです。
本当にみんな自分の会社のビールがうまいと思ってます。

ともかく、いるやつはみんなビールが好き。
大好きです。
宴会すると、大瓶をひとり20本飲みますから。
少なくとも10本は飲みます、10本は。
だから、人数×10本はビールを用意しないとだめなんですよ。
10人の宴会だと100本要るんです。

[糸井]
はははは。
戦国時代にいるみたいなもんですもんね。

[斎藤]
ええ。わけわかんなくなってます。
ともかく頼んだ100本は空けなきゃいけないんで、空けます。
2次会行くと、またビールです。
3次会もビール。
店から出て「喉が渇いた」って自動販売機でビール買うんですよ。

[糸井]
ははははは。



[斎藤]
「缶のスーパードライ、 やっぱり炭酸効いててスカッとするよね」

[糸井]
本気ですよね?

[斎藤]
本気で言ってます。

[糸井]
そこまでいくと、いいなぁと思う。
ぼくはいま、仕事の公私混同はいいんだよ、ってよく社員にも言ったりするんだけど、ビール会社でああやってビール飲んでた人たちは、超公私混同ですよね?

[斎藤]
そのとおりですね。

[糸井]
人生がビールの中に飛び込んでますよね。
逆に言うと、そのくらいしないとだめだったのかもしれないです。
それで攻めてこられたキリンのほうも、坊ちゃん坊ちゃんしてたはずなのに、がんばったもんね。

[斎藤]
黙ってても売れた時代を経験してる人たちだったでしょうから、追うほうが楽だったかもしれないです。

[糸井]
おしりに火は点いていたでしょうけど、対抗したほうがいいのか、しないほうがいいのか、ジャッジからして、難しい。
それが手伝ってておもしろかったです。

[斎藤]
アサヒビールはすごく居心地のいい会社でした。
みんな、ものすごく酒を飲むのに酒の席で嫌な思いをしたことが1回もありません。
みんなジェントルマンなんです。
ぼくはそんなに酒が強くないんですが
「お前、わしの酒が飲めんのか」
なんて言われたことは1回もないです。
酔っ払ってくると、
「ああ、斎藤君、 ウーロン茶かなんか飲んだら?」
とか言ってくれました。
しかも「お酌をするな」って言われるんです。
みんな、自分のペースで完全にグラスを空けてから飲みたいので。


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