第8回 目覚まし時計は使わない。

[池谷]
深い眠りと浅い眠りには、周期があります。
その周期はおおざっぱに90分と言われています。
ですからよく
「1時間半の倍数で目覚めなさい」
といわれるんですが、厳密にいうと、周期は人によってまちまちだし、それに、目覚めに近づくにしたがって周期は短くなるし、体調によっても変わります。
ですから、
「なにしろ7時間半に起きると決まっている」
とばかり、目覚ましをセットして起きるのは、そんなにはいいことじゃないと思います。
僕は、目覚まし時計を使わないで起きるのがいちばんいいと思います。
だって、目覚まし時計をセットしていちばん眠りの深いところで目覚めちゃったらたいへんですよ。

[糸井]
毎日、目覚まし時計のおかげで不快な思いをしてる、という可能性があるってことですね。

[池谷]
そうです、ほんとうに。
僕自身はできる限り、目覚まし時計とは関係なく起きるようにしています。
これを習慣化してしまうと、自然に目が覚めるようになります。
いちばんいけないのは、きっと、
「ときどき長く寝る」ということです。
きょうは日曜日だからゆっくり寝ていようと
「朝寝坊」すること。
あれがすごくよくない。



[糸井]
ああ、なるほど、そうなんですね。

[池谷]
日曜日だからといって9時まで寝たりしないで、いつもどおりちゃんと6時に起きる。
そうしていると、おそらく習慣化して、自然な目覚めができる体になるんだと思います。

[糸井]
かなりショッキングな(笑)発言です。

[池谷]
なぜ日曜日になると長く寝たがるのか、まずその心理が問題です(笑)。

[糸井]
それもきっと自己愛でしょうね。
自分にプレゼントの時間をあげたくなるんです。

[池谷]
確かにそう考えると快感ですが、実際には、やっていることの意味は逆なんですよね。
日曜日に長く寝ても、何のメリットもない。
むしろリズムを崩し、睡眠時間を習慣化できなくなり、目覚まし時計を使って起きなきゃいけない体になっちゃいます。

[糸井]
そうですね。 損してるような気がする。
納得できる‥‥とは思いつつも、どうしてできないんだろう?
まずは、寝るまでの時間をグダグダと無駄遣いしているからでしょうね。
人間というものは、自分を過剰にできるヤツだと思いたがっている。

[池谷]
はい。ポテンシャルを秘め、前途洋々である、と思ってますよね。
自分は、現状よりは、ほんとうはもっとできるヤツだと。

[糸井]
遊ぶにつけ働くにつけ休むにつけ、
「もっと俺はいろいろしたい」というのがあるんじゃないかな?
寝ちゃうと何もできないと思い込んでるから、起きてる。
でも、このFの存在をわかっていればどうなんだろう?
「さあ、さあ、起きてたら損だ」
って、逆に思うことになるんじゃないかな?

[池谷]
そうです。Fの存在を見れば、寝たほうがお得という考えも出てきます。

[糸井]
寝るとFもやってくるし、
「寝た人たち」が問題の正解率が高かったし。



(つづきます)


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