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[糸井]
田口さんが書かれたものを読んでると、ほかの選手は田口さんのように
「試合の展開を考える」というタイプじゃないみたいですね。
まあ、年齢のせいもあるんでしょうけど、どっちかというと、ワイルドで、身体能力の高い、やんちゃな選手が多いというか。

[田口]
そうですね。
基本的に、全員がものすごく個性的ですね。
若い選手も多いし、いたずら好きですし。
もう子どもがそのまま大きくなりましたっていう表現がピッタリ当てはまるような人たちばっかりで。

[糸井]
試合前に集中してデータをチェックする、という雰囲気ではなくて。

[田口]
ひどいときは、クラブハウスでヘリコプターのラジコン飛ばしてますから(笑)。



[糸井]
あはははははは。

[田口]
ゲームなんかも大好きですからね、試合前に携帯ゲーム機でレースゲームやって
「誰や、オレにぶつかったのは!」
ってやってますよ。
めちゃめちゃ体格のいいやつらが(笑)。

[糸井]
「そんなことやるヒマがあったら練習しろ!」
というようなことも‥‥。

[田口]
やっぱり、ありますね。
とくに、日本人からすると。
ただ、やっぱり全員の個性というものがありますからね。
まあ、そこは、自分のペースを守って。

[糸井]
田口選手のチームメイトでもあったイチロー選手なんかは、わりと、
「そんなことやるヒマがあったら」的なコメントもちらちら出したりしてますよね。

[田口]
彼は言いますね。
ま、彼ぐらいの立場だったら、言ってもまったく問題ないかな。



[糸井]
あと、イチローさんは、数年前から
「チームのことを厳しく言う人」だというふうに自分で自分をキャラクターづけしましたよね。

[田口]
ああ、そうですね。
「ちょっと怖い人」みたいな感じのキャラクターをつくってますね。
まぁ、でも、ぼくに言わせると、あいつはそんな人間じゃないですよ(笑)。

[糸井]
ああ(笑)。
じつは、ぼくもそう思ってるんです。
ああいうタイプのキャラクターは、ある程度、決めて演じないと無理でしょう。

[田口]
ねえ。あいつもうまくつくりましたよねえ。
本当はすごくおもしろいやつなんですけどね。

[糸井]
うん。ぼくも何度かお会いする機会があって、なんとなく、わかるんですよ。
人に見せてないところでは、おもしろい人なんだろうなっていう。
ひょっとしたら、チームメイトたちも彼があえてあの役をやっているのをわかっているのかもしれませんけど。

[田口]
そうかもしれないですね。

[糸井]
田口さんは、そういう役づくりはせず。



[田口]
まったくやってないですね!

[糸井]
はははははは。
でも、クラブハウスでラジコンする選手を弁護するわけじゃないですけど、そういう、完全に気をゆるめる状態をつくるのって長いシーズンを乗り切るうえでは必要なことなのかもしれませんね。

[田口]
いや、たぶんそうだと思うんです。
だから、遊んでたりもするんですけど、オンとオフを切り替えるのがメチャクチャ早いんですよ。

[糸井]
ああ、なるほどね。
そのあたりは日本人選手にはちょっとまねできないですね。

[田口]
難しいですねぇ。

[糸井]
田口さんには、そのオフの時間というのはあるんですか。
野球のことを完全に忘れてゆるむような時間は。

[田口]
ぼくですか。ぼくは‥‥うーん。
完全にゆるむ時間は、あんまりないですね。

[糸井]
それもおもしろいなぁ(笑)。

[田口]
あんなふうにできないんですよね。

[糸井]
そういう人なんですね。

[田口]
たぶん(笑)。

[糸井]
で、いざ試合がはじまるとどうなんですか?
グラウンドに立ったときの緊張感というのは、日本でもアメリカでも同じ?

[田口]
うーん‥‥正直言って、違いますね。

[糸井]
どう違うんですか。

[田口]
うーん‥‥どう表現したらいいでしょう。
選手の入り込み方の違い、でしょうか。

[糸井]
試合に対する入り込み方?

[田口]
というよりは、野球に対しての入り込み方ですね。

[糸井]
それは、アメリカのほうが、強く入り込んでいるわけですか。

[田口]
そうだと思います。
「本当に野球を好きでやってる」
というような雰囲気があるんですね。

[糸井]
日本の野球には、それがないんですか?

[田口]
ないというわけじゃないんですけど‥‥。
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