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[糸井]
ベンチに入ることができる選手が25人だというのは、なんだか不思議ですね。
多いような、少ないような。

[田口]
そうですね。

[糸井]
野球が9人でやるスポーツだということを考えると、25人も必要ないような気もするけど、絶対、必要なんですよね。

[田口]
25人というのは、実際にやってると少ないですね。
ほとんどがピッチャーですから、控えの野手は5人しかいないんです。
そのうち、キャッチャーはスペシャリストでかならずひとりはいなきゃいけませんから、そうなると4人だけになっちゃうんですよ。



[糸井]
そのあたりは実際に1年を戦ってみると痛感するんでしょうね。
でも、お話をうかがっていると、もう、監督の視線になってますよね。
頭の中がディレクターになってるというか。

[田口]
それは、ベンチが長いからです(笑)。



[糸井]
逆にいうと、レギュラーとして試合に出てるだけじゃ、そういう見方にならない。

[田口]
ああ、見えてこないですね。
レギュラーで出てるとレギュラーのことしかわかんないんですよ。
ベンチで、引いた目で見てるから、いろんなことがわかってくる。
じつは、一時期、監督とヘッドコーチの後ろの位置から試合を見てたんです。
その場所に座っていると、監督とコーチの会話も聞こえてきますし、ブルペンも、相手のベンチも見える。
そうすると試合の展開も冷静に考えられるし、自分の出番もわかってくるんで。

[糸井]
それは、きっとものすごく、貴重なトレーニングになってますね。

[田口]
そうですね。

[糸井]
そういうふうに見ていると、たとえば、シーズンを過ごすなかで、優秀な選手がどう腐っていくか、みたいなこともわかるわけですよね。

[田口]
わかりますね。だから、ベンチ見て、
「ああ、もうあいつダメだ」と思うと、やっぱり声かけに行ったりとか、そういうのはありますよね。

[糸井]
ひとことでは言えないことかもしれませんけど、個々の選手の調子とは別に、チームが腐っていったりもするんですか。



[田口]
あると思います。

[糸井]
つまり、実力のある選手を集めても勝てなかったりするのも、そういうことがあるからで。

[田口]
そうですね。
ひとりひとりの方向性がバラバラだったり。
チームとしてまとまりがないというか、ひとりだけまったく違う方向を向いてぜんぜん違うことを考えていたり。

[糸井]
強いチームはそういうバラつきが少ないんですか。
締めるべきところは締めるというか。

[田口]
強いチームって、やっぱり、誰かリーダーがいるんですよ。
特定の人がいなくても、そのときどきで自然と誰かが言い出したり。

[糸井]
ああ、なるほど。
つまり、模範になるようなと選手というか、憧れられるような選手がいるチームのほうが強いんですね。

[田口]
強いと思いますね。
ただ、模範とはいっても、かならずしも野球の成績が影響するわけではないと思います。

[糸井]
2割そこそこの打率だけど尊敬されてる選手みたいな人がいる、というようなことですね。

[田口]
はい。



[糸井]
なるほどねぇ。
これ、お世辞じゃなくて、田口さんをそういう「尊敬すべき選手」として見ていた選手も多いと思うなぁ。

[田口]
うん、なかには、いたと思います。
実際、レギュラーの選手で、
「あいつがいるから勝てるんだ」
と言ってくれた選手もいます。

[糸井]
うれしいですねえ‥‥。
そういうのって、なんか、チームプレイをやっている者の冥利に尽きますね。
そうか、いいなあ‥‥。
それをわかり合えるって、深い関係ですよね。

[田口]
そうですね。
ぼくとしては、そういう関係を保てるように、つねにほかの選手に気を配ってました。

[糸井]
「25番目のピース」として。

[田口]
はい。
それぞれの選手が球場のなかでどう過ごしているかとか、どういうルーティンで試合に臨んでるかとか、そういうことをすべて。
球場外でも、なにを考えているか理解するために、ちょこちょこ食事に誘ったり飲んだりとかしてましたから。

[糸井]
いや、やっぱり、そういう選手がいるチームは強いと思う。



(つづきます)
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