[糸井]
高砂親方がね、つまり朝潮がね、パイロットシャツを着てたじゃないですか。
で、あれはいくらだとかそういうことになって
「パイロットのシャツ」というものに意図せず注目が集まってしまった。
あれは、なんていうか、エピソードとしてちょっとよかったですね。

[南]
大ちゃん(笑)。

[糸井]
ま、いろんなこと引っ張り出せる話でしたけど、
「それほど、パイロットというのは 憧れの職業だったんだ」
ということをぼくは言ってみたいですね。

[南]
うん、なるほどね。

[糸井]
パイロットとか、パーサーとかね。
実際、ぼくの身のまわりにも空の職業に憧れてる人は何人もいましたよ。
結婚詐欺師なんかも、よくパイロットに変装しますしね。

[南]
パイロットでもないのにパイロットの格好をして空港内に入ってつかまっちゃう人とかいるよね。

[糸井]
軍人とかパイロットっていうのは、わりと変装されるよね。
それを考えると、スチュワーデスに変装ってのはあんまりないね。
風俗的な商売以外では。

[南]
キャバレー、スッチーとか。

[糸井]
スチュワーデス‥‥あ、違う、スチュワーデスって言っちゃダメらしいよ、いま。
「客室乗務員」とかって言うんだよ。

[南]
あ、そうかそうか。じゃあ、言い直そう。
こないだ客室乗務員がさ!

[糸井]
会話に馴染まないことばだね(笑)。

[南]
なかなかこの。客室乗務員がね‥‥。



[糸井]
あとさ、こう、欲情する対象としては、
「客室乗務員」ということばはそういう話の中にセッティングしづらいね。
つまり、「客室乗務員マニア」ってちょっと変でしょう?

[南]
そうかな。

[糸井]
というか、最近はそういうフェチズムはないのかな。
昔はさ、そういう様式へのフェチっていうのが多かったじゃない?
スチュワ‥‥客室乗務員とかさ。
デパートで働く女の人とかさ。
大会社のOLとかさ。

[南]
そうなのかな。制服っていうのはいまの人も好きなんじゃないですかね。

[糸井]
でも、いまって、「猫耳」とかさ、抽象化してるでしょ?

[南]
なに? 「猫耳」って?

[糸井]
その、なんていうの、『綿の国星』みたいな、猫の耳をこうつけてみたりさ。
あるいはメイドの格好したりとかさ。
なんていうか、もうそれ、観念じゃないですか。

[南]
ああ、そうだね。
だいたいさ、メイドっていうもんがさ。

[糸井]
うん。いないよ、そんなもん。

[南]
いないよ、そんなものは。
見たことないぞ。

[糸井]
ちょっと、いま、オレたち、典型的なじじいの対談をしてないか?

[南]
してる、してる(笑)。
「最近の若い者は、カフェかなんかしらないが‥‥」

[糸井]
「そうだよ、キミ!」

[南]
いいねえ。じじい対談(笑)。



[糸井]
子どもんとき、どうしてあんなものをあんなに熱心に見てたんだろう?

[南]
すっごい見てたよね。

[糸井]
やだなーって思いながらね。

[南]
日曜日だね。
ミユキ野球教室の前かな。

[糸井]
伸坊はあれ、イヤじゃなかった?

[南]
イヤじゃないよ。

[糸井]
あ、俺はね、イヤだなあと思ってた。
ほら、怒るからさ。

[南]
でも、糸井さんのことを怒ってるわけじゃないから。

[糸井]
でも、怒る人って苦手なのよ。

[南]
そうか、苦手なんだ。

[糸井]
で、なんだっけ?

[南]
メイドの話だね。

[糸井]
そう、そう。だからさ、こういう服を着た女の人がいい、なんていうろくでもない話ではあるけどさ、昔は、本当の、現実に即していたわけだよ。
「三菱銀行の銀行員」だとかさ。
「JALの客室乗務員」とかさ。

[南]
べつに、そんなに熱心に語らなくてもいいんじゃないかな。

[糸井]
それが、いつの間にか、マンガで描いたものをほんとうにつくってみたりして、どんどん観念化してるっていうかさ!

[南]
べつに、そんなに熱心に語らなくてもいいんじゃないかな。

[糸井]
いわばその、なんていうのかな、
「フェチのCG化」ですよ!

[南]
え?フェチのCG化!

[糸井]
どうだ、当たってるだろう。

[南]
ははぁ、これは、広まっちゃうね。
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