[南]
タコは貴族なんですよ。
切ると、青い血が出る。
[糸井]
たしかに、そういう液体が出るね。
あれ、血なんですか?
[南]
うん。青い血。高貴の血ですよ。
オレもはじめて見たときびっくりした。
[糸井]
それはどこで見たの?
[南]
それはね、タコの取材に行ったときに見た。
[糸井]
タコ漁の取材(笑)。
あなたもあなたでお持ちですね。
[南]
いろいろとね(笑)。
去年、いや、一昨年かな。
『dancyu』の取材で。
[糸井]
『dancyu』の取材でタコの血を見たと。
それはなに? 伸坊がタコに襲いかかったわけ?
[南]
『dancyu』の取材で?
[糸井]
あ、そうか。
襲いかかったとしたら、『dancyu』じゃないね。
[南]
そう思う。
それを見たのは、漁のあとなんだけど、すぐにおじさんがさばいてくれることになってね。
こう、タコがまな板の上に乗せられて、いわゆる、まな板の上の、鯉、鯛、鯉‥‥あれ? まな板の上は鯉だよな?
[糸井]
まな板の上は鯉ですよ。
[南]
まな板の上の?
[糸井]
鯉。
[南]
鯉。そう。鯉。
「まな板の上の鯉」状態でね。
ふつう、魚っていうのは、まな板の上に乗ったらあきらめるわけだ。
[糸井]
うん。ふつうはね。
[南]
ところが、さっきの話じゃないけど、タコっていうのは、あきらめない。
[糸井]
そうなんだよ。タコはしぶとい。
[南]
こう、おじさんがタコをしごくとね、まな板の表面に、一所懸命しがみつくんだ。
[糸井]
し、しがみつく?
[南]
そう、もう、こういう感じさ。
[糸井]
へーーー。
[南]
タコって、ふだんは、うにゅうにゅしてるじゃない?
それがね、こうーやってしごくと、もう、こうやって、必死で、まな板にしがみつくんだ。
そうするとね、切るほうとしては、すごく切りやすくなるわけ。
[糸井]
ああ、なるほど、なるほど。
[南]
「これがたすかるんだなー」
なんて言いながら、おじさんが、しごきながら、切ってくれるわけ。
[糸井]
いい話だ。で、血は?
[南]
出たよ。青い血が出てきたの。
そしたらね、さーっと、色が抜けるんだよ。
[糸井]
タコから。
[南]
そう。それまではタコって、茶色っぽい色をしてるんだよ。
それが、青い血が抜けると、さーっと白っぽくなっていく。
[糸井]
へーー。
(続くがいい)
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