[糸井]
日曜日の朝にさ。

[南]
うん。



[糸井]
電車に乗るとさぁ、いろんな趣味の人が乗ってるわけだよ。

[南]
ああ、ね。

[糸井]
つまり、その人の格好とか、持ってるものなんかを見ると、その人が、これから、なにしに行くのかが、だいたいわかっちゃう。
あ、釣りだな、とかさ。
草野球ですか、とかさ。
テニスしに行くんですね、だとかさ。

[南]
うん、日曜日の朝だからね。予定がね。

[糸井]
そう。やるぞ、と思った人が、そういう格好をして、乗り込んできてるわけ。
日曜日の朝の電車には。

[南]
ゴルフとかね。

[糸井]
乗馬とかね。

[南]
乗馬?

[糸井]
見るからに、乗馬だな、と。

[南]
わかっちゃうんだ。

[糸井]
わかっちゃう。

[南]
へぇ。

[糸井]
で、思いついたことがあって。

[南]
うん。

[糸井]
見るからに、どじょうすくいに行く人っていうのがいたらどうだろうかと。

[南]
ははははははは。
日曜の朝の電車に。



[糸井]
日曜の朝の電車に(笑)。

[南]
今日はやるぞ、と。

[糸井]
すくうぞ、と。
こう、ほっぺたに赤いのつけて。

[南]
ははははは。
家出るときから、そういう格好だ。

[糸井]
うん。
日曜だからね。集まりとか、あるんだ。
同好の士どうしで。
大会とかも、あるかもしれない。

[南]
たいへんだね。

[糸井]
で、日曜の朝に、現地へ向かってると。
といっても、まんま、どじょうすくいの格好してるわけじゃないよ?

[南]
そりゃそうだ。
テニスの人だって、乗馬の人だって、そのまんまの格好じゃないからね。

[糸井]
そうそう。
だから、まぁ、こう、電車の反対側の座席から見て、
「あ、どじょうすくいだな」という程度。

[南]
五円玉はつけてないね、鼻に。

[糸井]
つけてない、つけてない(笑)。

[南]
つけてたら変だもんな(笑)。



[糸井]
うん、それじゃ変わり者だよ。
彼らは、その、常識ある、どじょうすくいファンだからさ。

[南]
鼻に五円玉はつけてない。
けど‥‥ポケットには入ってるね?

[糸井]
入ってるねぇ(笑)。

[南]
ちょっと、出して、ヒモを締め直してみたりしてね。

[糸井]
そうそう(笑)。
あと、手持ち無沙汰なときに、手ぬぐいをこう、パッと広げてみたり。
ちょっとかぶってみたり。

[南]
ははははは。
ざるは、風呂敷に包んで脇に置いてね。

[糸井]
「マイざる」ね。

[南]
マイざる、マイざる(笑)。
そんでもって、ときどき、風呂敷から出して、ちょっとこう‥‥(軽く、すくう仕草)。

[糸井]
「すぶり」を(笑)。

[南]
すぶり、すぶり(笑)。
すぶりというか、すすくい(素すくい)を。

[糸井]
で、それを向かいから見て、
「お、どじょうすくいだね」と。

[南]
はははははは。



[糸井]
このウソはねぇ、長持ちするなぁ、オレの心のなかで。

[南]
ははははは。

[糸井]
いたら、笑うかなぁ。
やっぱり、笑うんだろうなぁ。

[南]
笑うだろう。



(おまたせしました。ずっとつづきますよ)


次へ
目次へ    
友だちに教える
感想を送る
書籍版「黄昏」
ほぼ日のTOPへ