[糸井]
オレはタクシーの人にものをおごってもらったことがあってさ。
[南]
え、なにを?
[糸井]
ラーメンとか。
[南]
すごいねぇ。
タクシーの運転手さんにラーメンをおごってもらったの?
[糸井]
うん。乗ってたら
「あんちゃん腹減ってない?」って訊かれて、
「ああー、そういえば」って言ったら、
「ラーメン食おうと思うんだけど、 つきあう?」って。
で、いっしょに食べたら、おごりだった。
[南]
いいなぁ(笑)。
ヒマそうに見えたんだろうね。
[糸井]
っていうか貧乏そうに見えたんじゃないかな。
[南]
はははは。
[糸井]
それは千駄ヶ谷でのこと。
もう1回はね‥‥。
[南]
えー、2回もあるの?
[糸井]
うん。ええとね、福岡の空港から飯塚までタクシーに乗ったんだ。
飯塚って、けっこう遠いんだよ。
[南]
うん。
[糸井]
で、タクシーつかまえて、たしか、永ちゃん(矢沢永吉さん)のコンサートがあったのかな。取材だったんだよ。
それで、飯塚に向かってたら、タクシーの運転手が
「うどん食いますか?」って。
[南]
すごいねぇ(笑)。
[糸井]
しかも、遠回りになるぶんは、料金要らないからって言って、いっしょにタクシー降りて、うどん食って、そんで飯塚まで行った。そのうどんがおごり。
[南]
へぇぇ。
[糸井]
うらやましいだろ。あと1回はね‥‥。
[南]
まだあるの!
[糸井]
いや、じつは、つぎの話はタクシーの話の中に混ぜちゃうけど、ほんとは、タクシーじゃないんだ。
[南]
どういうことなんだ。
[糸井]
「タクシーに3回おごられた」
って言った方がおもしろいから、タクシーシリーズに入れちゃってるんだけど、これは、じつは、タクシーじゃない。
[南]
あ、そう。
[糸井]
そもそも、話の内容で、タクシーじゃないってバレちゃうんだけど。
[南]
それでも、
「タクシーに3回おごられた」って言いたいわけだな。
[糸井]
言いたいねぇ。
[南]
そのほうが、ウケがいいんだね。
[糸井]
いや、ウケるも、ウケないも、このシリーズを話すのははじめてなんだ。
[南]
なんだ、なんだ(笑)。
[糸井]
こんな話を3連発で聞いてくれる人なんていないよ。
[南]
ははははは。
いいよ。聞くよ、3回目を。
[糸井]
3回目は銀座だ。
銀座の電通。古いほうの電通。
その近くに、磯辺焼きを売ってる屋台がある。
[南]
ああ、はいはい。
[糸井]
昔、そこを通ったときに、腹が減ってて、食べながら歩こうと思って、1個買った。
[南]
うん。
[糸井]
そしたら、屋台のおやじが、オレの顔をじっと見て‥‥もう1個くれた。
[南]
はははははは。
[糸井]
この話を、タクシーに混ぜて、タクシーシリーズ三部作。
[南]
タクシーじゃないね。
[糸井]
明らかにタクシーじゃない(笑)。
ものの見事にタクシーじゃない。
[南]
「屋台で」って言ってるからね(笑)。
[糸井]
そのへんは、正直だろう?
(つづきますよ、そりゃ)
前へ
次へ
目次へ
友だちに教える
感想を送る
書籍版「黄昏」
ほぼ日のTOPへ