[南]
こないだ、吉本隆明さんの講演のCDを送ってもらったじゃない。
[糸井]
ああ。
[南]
聞いてたらさぁ、糸井さんの声に似てるね。
[糸井]
それ、ときどき言われるんだけど。
[南]
いや、いままでは、ぜんぜんそういうふうに思ってなかったんだよ。
[糸井]
オレも思ってないし、いまも思ってない。
[南]
でも、似てるんだよ、どこか。
どこだろうな、声の響きみたいなのが似てる。
[糸井]
ああー。
ときどき読者からも言われるんだけど、そうなのかなぁ。
[南]
うん。なんか、どこか、似てる。
[糸井]
違うと思うけど、まぁ、いいや。
[南]
ふつうにしゃべってるときはぜんぜん違うんだけどね。
ときどき、似てるときがある。
[糸井]
あの、軽くしゃべるんだけど、実は腹にためてるみたいな、ぼくも吉本さんも、そういう系統の声の出し方だなっていうのは、思いますよ。
[南]
ああー、系統ね。
[糸井]
うん。あと、「ンぐっ」っていう声がときどき混ざっちゃったり。
[南]
はいはいはいはい。
[糸井]
そういうのはあるかもねぇ。
[南]
あと、あの、「なんていいましょうか」とか、
「なんていいますか」っていうの、すごく言うよね、吉本さんは。
[糸井]
言う。「なんていいますか」。
[南]
ものすごく「なんていいますか」。
[糸井]
ものすごく「なんていいますか」。
[南]
ものすごく言ってるよね。
[糸井]
一生「なんていいますか」だよね。
[南]
「ええーと」と
「なんていいますか」で話してるよ。
[糸井]
うん。いまのいまも、
「なんていいますか」って言ってるよ。
[南]
言ってる、言ってる(笑)。
[糸井]
あの人の人生は
「なんていいますか」でできてる。
[南]
あの、追っかけるようにこだまするように言うでしょ?
あれが、すごくいいなと思う。
[糸井]
「なんていいますか、 なんていいますか、つまり‥‥」。
[南]
そうそうそう。
「なんていいますか、 なんていいますかね、 なんていいますか」。
[糸井]
うん、うん(笑)。
[南]
「なんとかいえ」って言いたくなるほど
「なんていいますかねぇー」って(笑)。
[糸井]
あと、年をとったからっていうわけではなく、若いころからなんだけど、ものすごく「繰り返す」んだよね。
[南]
そうそうそう、文章でもそういう傾向がある。
[糸井]
そうだね。
[南]
だから、たとえば、吉本さんがしゃべったものを誰かが文章にまとめたりするじゃない?
まとめるわけだから、そこは、同じことを繰り返さなくてもいいわけだよ。
でも、なぜか、繰り返してしまうという。
[糸井]
あの人の言ってることをまとめてると繰り返す必要を感じるんだよ。
[南]
はははは。
こんだけ繰り返してるんだから、って思うんだ。
[糸井]
そうそうそう。いや、ほんと。
で、それ、じつは、オレも同じ傾向がある。
[南]
あ、そう。そこも似てるのか。
[糸井]
あの、なんていうか‥‥。
[南]
「なんていうか」(笑)。
[糸井]
なんていうか(笑)、ほんとに言いたいことって、そんなにないんだよ。
で、オレも吉本さんも、きっと、何度も言ってみて、こう、伝わるのを待ってるみたいなところがある。
[南]
あー、はいはい、なるほど。
[糸井]
そうすると、ああなっちゃうんだよね。
[南]
へぇー、おもしろいねぇ。
(なんていいますか、つづきます)
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