[南]
日光といえば、オレは、眠り猫だったときもあるんだよ。
[糸井]
あ、眠り猫にもなったんだ! それはすごい。あの、『本人の人々』で?
[南]
いや、『歴史上の本人』。
[糸井]
あー、『歴史上の本人』か。
『本人の人々』は、オレ、30冊は買ってるよ。
で、元気のない人にどんどんあげてた。
[南]
ははははは。
[糸井]
しかし、眠り猫になるのは‥‥たいへんだろ?
[南]
最初はね、左甚五郎になるはずだったんだ。
[糸井]
あ、なるほどね。
[南]
ところが、左甚五郎には、なりようがないんだ。
わかんねーから。
[糸井]
そうか、写真も肖像画も残ってないんだ。
[南]
うん。で、まぁ、
「じゃあいいや、眠り猫になっちゃえ」
ってことで、こう、ぬいぐるみを。全身の。
うちの嫁がつくってね。
[糸井]
猫の着ぐるみを(笑)。
ここんちの嫁はすぐつくっちゃうからね。
[南]
うん。で、その着ぐるみを着てね、日光のあちこちで、こっくりこっくり眠ってみたりして。
[糸井]
眠り猫だから。
[南]
うん。眠り猫だから。
[糸井]
こんな雨の日だったらたいへんだったね。
[南]
雨は降らなかったけど、雪がちょっと残ってたね。
もっとずっと寒いころだったんだろうね。
[糸井]
冬だったんだ。
[南]
うん。
でも、猫だから、暖かかったよ。
[糸井]
あー、なるほどね(笑)。
猫でよかったね。
[南]
猫でよかったよ。
左甚五郎だったら寒くてしょうがないよ。
[糸井]
そういうのは、怒られたりしないの?
[南]
東照宮の人たちに? いや、怒られなかったね。
ただ、外国人の観光客に囲まれちゃってさ。
[糸井]
催し物かなんかだと思われたんだ。
[南]
そうなんだよ。
横に並んで写真撮ったりしててさ。
[糸井]
ま、日光がディズニーランドだとすると、眠り猫はミッキーマウスに当たるわけだからね。
しかたないね、それは。
[南]
参拝券を奥さんが買いに行って、こっちで待ってるとね、あの紅白の格好をした巫女さんがね、
「ダメじゃない、ちゃんとあっちにいなきゃ」
って、中を指さすんだ。
冗談のわかる巫女さんなの。
[糸井]
いいねぇ(笑)。
[南]
うん。いい巫女さんだった。
(大丈夫。もっともっと、つづきます)
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