[糸井]
ベニヤ板の話をしてたら『木造モルタルの王国』ってのを思い出したよ。
[南]
ははははは。
それは、糸井さんがつけたタイトルだ。
[糸井]
ガロの20周年記念の本のタイトルね。
『木造モルタルの王国』。
[南]
ははははは。
[糸井]
ガロを出してた青林堂って、昔、材木屋の2階にあったんだよ。
つまり、1階が材木置場で、2階が青林堂。
で、ぼくは、材木屋の横の階段を上って、
「南さん、いますかー」って訪ねて行ったりしてたんだけど、ある日、階段を上るときにふっと気になって見てみたら、2階を支えてる柱がおかしなことになってるんだ。
[南]
あ、糸井さんが発見したんだっけ?
[糸井]
そうだよ。気になって、わざわざ下まで下りてたしかめたんだ。
[南]
ははははは。
[糸井]
その、とっても重要な柱が、浮いてるんだよ。
で、その隙間のところに、かまぼこ板みたいなものが詰めてある。
[一同]
(笑)
[南]
そうそう。
言われて見に行ってみたら、たしかに浮いてる。
で、おかしかったのは、そこは材木屋なんだから、直そうと思ったら、かまぼこ板なんかつかわなくても、材料はあるはずなんだよ。
[糸井]
ふんだんにね!
[一同]
(笑)
[南]
でも、かまぼこ板が詰めてあるんだ。
ほんとうに!
[糸井]
つまり、そのかまぼこ板を外したら、青林堂は崩壊するわけだよ。
[一同]
(笑)
[南]
はっはっはっはっ。
[糸井]
そういう状況であるにもかかわらず、青林堂の人たちは妙に安心しててさ。
それがなぜかっていうと、下にいっぱい材木が置いてあるからなんだよ。
[一同]
(笑)
[南]
はっはっはっはっ。
[糸井]
間違ってるよね、それはね。
[南]
間違ってるねぇ(笑)。
[糸井]
そういうようなね、かまぼこ板で支えられつつも、
「かまぼこ板がどうにかなっても 大丈夫なんじゃないか?」
っていう根拠のない安心感のうえにガロは建ってるんだっていうことを二十代のぼくが発見したんだ。
[南]
ふふふふ。
あれを発見したのも糸井さんだったのか。
[糸井]
そう。遊びに行ってるうちに発見したんだ。
で、のちに、ガロの記念本を出すときに、『木造モルタルの王国』っていうタイトルをつけたわけ。
[南]
いいタイトルだねぇ(笑)。
(次回、ふたりの出会いが明かされる)
前へ
次へ
目次へ
友だちに教える
感想を送る
書籍版「黄昏」
ほぼ日のTOPへ