[糸井]
横尾さんの、Y字路の絵をぼくは何度も見ていたものですから
「あっ、あの絵ってこの写真じゃないか!」
という気持ちになりました。
つまり、写真の段階ですでに「絵」に似てるんですよ。
写真が絵を含んでると言ったらいいか‥‥



[横尾]
あ、ほんと。そう! ふーん。

[糸井]
これがおかしいやら(笑)。
横尾さん、魔法でも使ってるんじゃないか、という感じがしたんです。

[横尾]
写真をすごくよくわかった人はそういう質問をするよね。

[糸井]
ぼくはわかってないですけど。

[横尾]
たとえばね、カメラマンが、
「どうやって撮ったの」って言うわけ。
カメラマンにそんなこと聞かれたって困るしさぁ。



[糸井]
きっと、カメラマンには
「オレが撮ったらこうなんないな」
という気持ちがあるんでしょう。

[横尾]
カメラマンの場合は、おそらくどういうふうな写真を撮りたい、ということが‥‥

[糸井]
ありますね。

[横尾]
そう。まずイメージがあって、彼にはそのイメージの再現能力があるでしょう?
ここをこうすれば撮れるという技術をわかってるわけでしょう?
ぼくには、どういうふうに撮りたいかがまず、ないわけですよ。
だから、一枚一枚がちがう写真になっちゃう。

[糸井]
いや‥‥だけど、おそらくちょっとでも写真撮ったりしてる人だったらわかると思うんですが、ただの町の、人のいない景色って、ふつうだったらおもしろくないものなんですよ。

[横尾]
建物は、被写体として、形がいいとか、デザインがいいとかっていうようなもんじゃないもんね。

[糸井]
そうですよね。
「Y字路を撮る」というコンセプトはあるので、そこだけはわかるんですけど、じゃあ、誰もがY字路を撮ったらこうなるかといったら‥‥。

[横尾]
なるんじゃないの。

[糸井]
うははははは。
ならないんですよ、だから!



[横尾]
そうかなぁ。

[糸井]
三脚は、使ってますよね。

[横尾]
三脚立てるのは夜だけ。昼は立てない。
あのね、撮ってるのはすごくちいちゃな場所なんですよ。

[糸井]
はい、はい。

[横尾]
車が前からうしろから、つまりY字路だから、三方からしょっちゅう来てるんだからね。
「車が来ない」と思ったら、パッと出かけてって、それでシャッター切って、また戻ってくるんだよ。
いちばん危険な、3点が結ばれた場所に立たないといけないんですよ。
いつ車が来るか知れない。

[糸井]
そうですよね。
写真撮ってる人なんているはずのない場所で、横尾さんが立ってるんですものね。

[横尾]
うん。

[糸井]
カメラはふつうのカメラですか。

[横尾]
うん。

[糸井]
なんていうカメラですか?

[横尾]
‥‥‥‥。

[糸井]
知らない(笑)。



[横尾]
うん。たぶんキャノンか、ペンタックスか。
電話で誰かに聞けばすぐわかるけど。

[糸井]
一眼レフですよね?

[横尾]
一眼レフだね。
二眼レフっていうのはどういうこと?

[糸井]
箱の形した、2個レンズがあるやつです。

[横尾]
あ、それじゃ、ちがうちがう、一眼レフだよ。

[糸井]
一眼レフ。
ひとつのレンズの大きなカメラですよね。
それで‥‥デジタル。

[横尾]
デジタルです。
カメラの上にさ、いろんなマークが描いてあるの。

[糸井]
ダイヤルみたいな、撮影モードのアイコンがついてますね。

[横尾]
で、それの、どれをあわせればどうなるか、ぼくはわからない。

[糸井]
‥‥おそらく、そうだろうと思った。



[横尾]
ここはこういう場所だから女の人の顔が描いてあるこのマークにしようとか、ここは山のシーンが描いてあるダイヤルにしとこうとか‥‥そのときの雰囲気で(笑)。
だから、ものすごくデタラメよね。



[糸井]
その都度、ちがうわけですね。
いちばん多いのは、きっとオートではないでしょうか。
つまり、ダイヤルのなかでカメラの絵が描いてあるところ。

[横尾]
あれはね!
しばらくやると飽きるわけ。

[糸井]
おお‥‥!!

[横尾]
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