[糸井]
こんな、白く飛んでる写真もありますが‥‥。
[横尾]
なんで飛ぶのかわかんない。
[糸井]
わかんない。
[横尾]
わかんない。
[糸井]
これはたぶん、撮りはじめの1枚でしょ?
カメラが、おっとっとっと、という状態で光量を測りまちがえたんじゃないかな。
[横尾]
その場所の1枚目?
[糸井]
さあ撮るぞ、の1枚目。
2枚目以降は、
「あっ、まちがえちゃった」とカメラがそれなりに色を落ち着かせるんですよ。
[横尾]
ウソだよ。
なに言ってるのか、さっぱりわかんないや。
[糸井]
ほんと、ほんと、ほんとですって。
[横尾]
このあたりのページは、たまたま飛んだのを集めたの。
もっとあればもっと集めるんだけれども、これしかなかった。
白く飛ばしたいと思っても、どうして飛ばしていいかわかんないんだよ。
[糸井]
横尾さんは、飛ばしたいと思ってないですよね。
[横尾]
いや、ある。
[糸井]
うそ!
[横尾]
あるんだけど、どうして飛ばしていいかわかんないの。
まあ、失敗作かもわからないけれども、本の中にこういうのが入ると、変化があっていいんじゃないのかな?
[糸井]
このチラチラするものは、なんですか。
[横尾]
これね、ちっちゃい雨が降ってきたの。
[糸井]
雨に光が当たってるのかな?
この写真の展覧会場の、西村画廊の西村さんは、
「これは霊魂じゃないか」という説を聞かせてくれましたが。
[横尾]
なにを言ってるの!
西村さん、奥さんが亡くなったからって。
[糸井]
語ってらっしゃいましたよ。
「もうひとつ、怖い話が‥‥ 霊魂ではないかという説もあるんですよ」
というように。
[横尾]
「説」って、それは自分の説だよ(笑)。
[糸井]
ははははは。
[横尾]
何度も言うようだけど、同じような写真が撮れないんだよね。
カメラマンは、そうじゃないからひとつの様式やポリシーができるじゃない?
ぼくは、それがない。
同じところで「もう一枚撮っときましょう」とシャッターを押しても、同じになってない。
「いま、撮りました」
「また一秒もしないうちに撮りました」
同じにならない。
[糸井]
なにかがちがうんでしょうね。
[横尾]
それがわかんない。
そうしたらもう、わかんないで行こうっていうよりしょうがない。
[糸井]
わかんないで行こう(笑)。
[横尾]
うん。
ま、食べてください(ロールケーキを)。
[糸井]
ありがとうございます。
展覧会で、ひときわ大きく伸ばした写真があったでしょ。
あの場所を知ってた人がいたんですってね。
その方が、おいら岬の灯台守は、の灯台を‥‥あれ? どんな話だったっけ?
[横尾]
また、西村さんの話でしょう?
[糸井]
そうです。
[横尾]
それはね、こういうこと。
ぼくが撮ったあの大きく伸ばしたY字路を知ってるという人がいて、そこに映ってるお寺にお墓がある人じゃなかったかな。
[糸井]
‥‥‥‥。
[横尾]
‥‥‥‥。
[糸井]
そこまでじゃ、話はおもしろくないんですよね。
もうちょっとおもしろくないといけないんだけどなぁ。
[横尾]
いや、ぼくもね、それ、西村さんから聞いたんだけども、なにがおもしろいのか、よくわかんなかった。
ぼくの理解度が欠けてるのかなって思ってたんだよ。
[糸井]
‥‥‥‥。
[横尾]
‥‥‥‥。
[糸井]
そうだ、横尾さんが描いたおいら岬の灯台守の灯台も知ってる人だった、って話じゃなかったっけ。
[横尾]
ああ、あの、白浜、和歌山のね!
そうそう。
その人が車で走ってて、かつて西村さんのところで展示したY字路の絵と同じ場所が、自分が運転してる目の前にあったと言ってたな。
[糸井]
あぁ、そうだ。
[横尾]
その人は「ここだぁ」と、思った。
その話を西村さんにした。
そしたら西村さんもあんな田舎の、通りすぎた一瞬でよく記憶したなって、感動した。
しかもぼくの描いたのは絵だから、デフォルメもされててわかりづらいよね。
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