2007.09.12
製作者は語る!2008年版ヌメ革の、ていねいなつくりの秘密。
2008年の革カバーのラインナップには、
高級バージョンの
「ヌメ革(プレミアムバージョン)」が登場しました。
今回の革カバーの中でも、
とくに人気の「ヌメ革(プレミアムバージョン)」は、
お使いいただくうちに、
その人それぞれのペースにあわせて、
飴色に色が変化していくのが何よりも魅力です。
2008年版の革カバーは、2007年版にひきつづき、
株式会社伊勢丹・外商統括部のチームと
タッグを組んでいます。
今回の「ヌメ革(プレミアムバージョン)」については、
製作する上で、
「じつはこんなところに気を配っているんですよ」とか、
「こんな工夫をしているんですよ」といったことなど、
まだまだお伝えしていないことがたくさんあります。
そこで、本日は、製作チームの代表である、
株式会社伊勢丹・外商統括部の籠浦兵衛(かごうらひょうえ)さんに
お話をお聞きしました!
株式会社伊勢丹・外商統括部
籠浦兵衛さん
「2008年版の革カバーの中で、
とくにみなさまにご注目いただいている
『ヌメ革(プレミアムバージョン)』について、
あらためてくわしくご紹介させていただきたいなと
思っております。
どうぞ、よろしくおねがいします!」
やわらかい雰囲気が出るように、
革の漉(す)き具合を一つ一つ変えています。
[ ―― ]
今回、「ヌメ革(プレミアムバージョン)」を
製作するにあたって、
なにか決めていたことはありますか?
[ 籠浦さん ]
「ほぼ日手帳」は、
高校生の方から、主婦の方や50代以上の男性まで、
職業も年齢も幅広い層のみなさんが
使ってくださっているんですよね。
そう考えると、私どもは、
市販でよく見かけるヌメ革製品のような
ハードな雰囲気のものではなく、
全体にやわらかい雰囲気のカバーに
仕上げたいと思っていました。
[ ―― ]
市販のヌメ革製品と、「ほぼ日手帳」の
「ヌメ革(プレミアムバージョン)」では、
具体的に、どのような点が異なるのですか?
[ 籠浦さん ]
通常、市販でよく見かけるヌメ革製品は、
2枚の革を張り合わせて、
「こば」と呼ばれる縁の部分を磨きあげる製法を
採用しています。
2枚の革を張り合わせて、縁の部分を磨きあげている市販のヌメ革製品
このような製法でつくられた革製品は、
ハードで男性らしい雰囲気になります。
そもそもヌメ革の製品は、
革の持つ厚さや堅さを活かしてつくるのが一般的ですので、
馬の鞍や靴底といった、
型くずれしにくい製品に適しているんです。
でも、「ほぼ日手帳」のように、
ポケットがたくさんついていたり、
カードが入るポケットが何段にも重なっている仕様ですと、
ヌメ革の厚みや堅さを、そのまま活かして製作した場合、
とても分厚くて、重たいカバーになってしまいます。
そこで、「ほぼ日手帳」の革カバーは、各パーツごとに、
丁寧に一枚一枚、革を漉(す)くことで、全体に厚みを薄くして、
手帳本体をやわらかく包み込むような
仕上がりにしています。
[ ―― ]
具体的には、どの程度、
革を漉いているのですか?
[ 籠浦さん ]
ここから先は、さらに細かい話になってしまいますが、
今回、私たちが、イタリアのタンナー(革のなめし業者)さんに
ヌメ革をオーダーしている段階では
約2ミリの厚さの革をオーダーしました。
これは、一般的なヌメ革製品の厚みとほぼ同じです。
そして、約2ミリのヌメ革を、
全体的に1.2ミリから1.3ミリぐらいの厚みになるまで
漉きます。
さらに、端の部分は、「へり返し」とよばれる、
一方のへりを他方のへりの上に覆いかぶせる
縁取りの接着方法を採用にしているので、
へり返したときに、その部分の厚みが出ないように、
へり返しの部分は、0.5〜0.6ミリまで漉いています。
「ほぼ日手帳2008」のヌメ革。
左:漉いたあとのヌメ革 右:漉く前のヌメ革
カードポケットは、
パーツを重ね合わせているのにもかかわらず、
横から見ると、ほぼ一直線になっています。
これは、革の各パーツを漉いているからなんです。
ちなみに、「ほぼ日手帳2008」の革カバーは、
全部でパーツが16個ほどあるのですが、
それぞれのパーツごとに、
漉きの具合を変えているんですよ。
こんなふうに、見えないところにかけている技術が
たくさんあります。
こうやってパーツごとに革の漉き具合を変えていくのは、
日本の職人さんが古くからやっている伝統的な技術です。
「ほぼ日手帳」の革カバーは、
その日本の技術を中国の工場に指導してつくっています。
また、漉く技術だけでなく、
「へり返し」や「きざみ」といった四隅の処理も、
本来ですと、時間も手間もかかるのですが、
高い技術で、一つずつ丁寧につくっています。
へり返しと呼ばれる縁の処理と、
きざみといわれる四隅の処理。
イタリアのタンナーから仕入れた高級革
[ ―― ]
「ヌメ革(プレミアムバージョン)」で
使用している革について、くわしく教えてください。
[ 籠浦さん ]
今回、「ほぼ日手帳」で
ヌメ革を発売することが決まったときに、
社内で、どこのタンナーさんに
オーダーしようかと検討しました。
その結果、市場にある高級品の素材は、
ほとんどがイタリアのヌメ革を使っているので、
やはりイタリアのタンナーさんがよいでしょう、
ということになりました。
その中でも、イタリアを中心に全世界に卸している
「NUTI IVO(ヌティイボ)」というタンナーさんに、
オーダーすることにしました。
ここは、僕も常日ごろから
おねがいしたいと思っていたところで、
植物の渋でなめす「フルタンニン」の革を
得意としているタンナーさんです。
「NUTI IVO(ヌティイボ)」で取り扱っている、
高級ブランドの製品と、同品質の革を
今回の「ヌメ革(プレミアムバージョン)」では
使用しています。
[ ―― ]
「ヌメ革(プレミアムバージョン)」で
使用している革は、
高級ブランドの製品で使用している革と
まったく同じなのですか?
[ 籠浦さん ]
革には、ショルダー(肩)、ベリー(腹)、
バット(おしり)といった部位があります。
その中でも、ショルダーは、大きくてきれいなパーツです。
高級ブランドの革製品は、
ショルダーの部分のみを使用していますが、
「ヌメ革(プレミアムバージョン)」は、
表面で大きく使う部分は、ショルダーの革を使用して、
内側のポケットの部分といった小さいパーツは、
その他のベリーやバットの革を使用しています。
本来、ヌメ革の製品は個体差があるものですが、
今回の「ヌメ革(プレミアムバージョン)」は、
個体差が少ない仕上がりになっていると思います。
[ ―― ]
最後に、「ほぼ日手帳」のユーザーのみなさまに、
一言、おねがいします!
[ 籠浦さん ]
「ヌメ革(プレミアムバージョン)」を使っていただいて、
ご自分なりの使い方をしていくと、
自然に色が飴色に変化していきます。
たとえば、水滴がつくとしみになりますが、
そのしみもふくめて、
ご自分のものとして味わっていただくような気分で
お使いいただけたらと思っています。
ちょうど、手帳の中身も、
最初は真っ白なページがほとんで、
その日ごとに、自分の気持ちを書いたりしているうちに、
自分だけの手帳になっていって、
1年が終わる頃には、
とても思い入れのある1冊になりますよね。
そんなふうに、
この「ヌメ革(プレミアムバージョン)」も、
みなさまそれぞれが使い込んでいくうちに、
愛着がわいていって手放せなくなる、
そんな気持ちを味わっていただけたらいいなと思います。